114 / 157
第三章
114「拡散」
しおりを挟む「探索者世界会議、並びに、その後の『腕試し大会』の動画が流出! さらに、その動画がいくつもコピーされ、現在瞬く間にネットに拡散されていますっ!!」
「「「「「何ぃぃぃ~~~~~~~っ!!!!!」」」」」
会議が終わりそうなタイミングで、突然琴音さんが部屋に入ってくるや否や、今日の出来事の動画が現在進行形でネットに拡散されていると報告してきた。
やっと一段落して解散できる、と油断したタイミングで、そんな『緊急事態』の報告をされたこともあり、皆の表情は驚きと共に疲労感が半端なかった。
「おいおいおい⋯⋯それマズイだろっ?! すぐにその動画は消したんだろうな!!」
「はい! で、ですが、いくつもコピーされ拡散されており、結果削除の数よりも拡散スピードが圧倒的に早いため、削除が間に合っていない状況ですっ!!!!」
「あ、あの、琴音さん⋯⋯」
「あ、ソラ君!」
「ちなみに、その動画って、どんな内容なんですか?」
「えーと⋯⋯」
「いや、直接ここでその動画を確認するのが早いだろう」
「そうだね。じゃ、石川さん⋯⋯準備お願いね」
「はい!」
炎呪の指示により、琴音さんはプロジェクターを出すとノートPCにつなぐと、『Yo!Tube』に上がっている問題の動画を流した。
********************
「ああ⋯⋯こりゃ~、がっつりだな~」
「ええ。モザイクなしの、ね」
と、ランスとメイベルが「はぁ~」と大きなため息と一緒に言葉を吐く。
その動画は、まず『探索者世界会議』でレヴィアス・アークシュルトとソラのいざこざから始まり、その後の王明凛やゲオルグ・シェフチェンコとのやり取りと続き、その後に『腕試し大会』から『朧襲撃』までがっつりと映っていた。
「すげ~、メッチャ見やすく編集されてるな~」
「何、呑気なこと言ってんのよ!」
「い、一体、誰がこんなことを⋯⋯」
さすがにこの場にいる全員がこの動画にかなり動揺していた。無理もない。
基本、『探索者世界会議』の動画は公式でも全内容を配信するので問題ないが、問題はその後の『腕試し大会』の動画だった。
「はぁぁあぁああぁぁ~~~⋯⋯一体誰がこんな真似をっ!!」
ダン!
大きなため息と共にテーブルを叩くのはジョー・ウェイン。
「落ち着け、ジョー」
「ゲオルグ⋯⋯⋯⋯⋯⋯すまねえ」
カッとなるジョーを嗜めるゲオルグ。
そんな、重い空気の中、炎呪がサラッとこの動画流出の目的につながる発見を呟く。
「ところでさ~、『腕試し大会』の動画なんだけど~、あれって何で⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ソラ君中心の動画なんだろうね?」
「「「「「っ!!!!!!!!」」」」」
炎呪の言葉に皆がハッとした表情を浮かべ、すぐにその部分を動画で確認する。
「た、たしかに⋯⋯たしかに、この『腕試し大会』の動画は新屋敷ソラメインだ⋯⋯」
実際、『腕試し大会』の映像はレヴィアス・アークシュルトとの対決や、その後のゲオルグ・シェフチェンコとの対決の動画。そして、その後の朧亥や朧戌といった『朧』の連中との戦い、さらには『転移者』である鏑木と早乙女の出現までも映像に編集されて流れていた。
「編集して流しているな⋯⋯」
「ああ。つまりは『意図的』ということだろう」
「間違いないわね。ということは、狙いは『新屋敷ソラ』君ってことね」
と言うと、皆が俺に視線を向ける。
「え? いや、そんな見られても⋯⋯」
「どうすんだ、炎呪? 賢者?」
ゲオルグが二人に尋ねる。
「まー、とりあえずは様子見でしょ?」
とは炎呪。
「何?」
「だって、動画はもう流れてしまったからね。ぶっちゃけ削除は追いつかないの仕方ない。どうしようもない。だから、これはもう『そういうもの』として考えたほうがいい」
「まーそうだな。幸い、『腕試し大会』の動画に関しては⋯⋯⋯⋯特に『朧の襲撃部分』からは混乱していたこともあって、ソラや朧の連中、それに『転移者』の二人とのやり取りは音声は聞き取れないから問題ない」
「⋯⋯ふむ。確かにそうだな」
「でも、腕試し大会で新屋敷ソラがウチの大将を倒した動画は思いっきり流れているんですけどぉ?」
ゲオルグは炎呪や賢者の話を聞いて「問題ないな」と納得したが、その横から物言いをつけてきたのはイギリス総本部副ギルドマスターのメイベル・ホワイト。
「あのレヴィアスが勝手にやったこととはいえ⋯⋯⋯⋯これじゃあ『総本部』の評判ガタ落ちなんですけどぉ?」
メイベルの眉間には、すでにビキビキと青筋が立てまくりマクリスティである。
「いいじゃない。それこそ、あんたたちの大将であるあのレヴィアスが勝手にやったことなんだから、メイベルたちも一蓮托生でしょ?」
「ぐっ!? ぐぬぬ⋯⋯⋯⋯王明凛~っ!!!!」
王明凛の混じりっけなし100%のど正論をぶつけられたメイベル。しかし、腹が立つも何も言い返せないため、地団駄を踏んでいる。地団駄踏む奴、初めて見た。
「おほほほ。いい気味ね、メイベル~。ま、しばらく総本部は『レヴィアスの件』でいろいろと大騒ぎでしょうね。ご愁傷様~」
「きぃぃぃぃぃぃ~~~っ!!!! レヴィアス・アークシュルト、マジ許すまじっ!!!!」
「「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」」
お、恐ろしい⋯⋯。
この後のレヴィアスの身柄がどうなるのか考えるだけでも恐ろしい。
明凛とメイベル以外の皆がそう思ったのは言うまでもない。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる