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第三章
103「世界最強再び/第四試合『ゲオルグ・シェフチェンコVS新屋敷ソラ』」
しおりを挟む「さて、第四試合は⋯⋯⋯⋯ガサガサゴソゴソ⋯⋯⋯⋯でん! こ、これは! つい先ほど決まった指名試合です!」
第四試合のくじを引いた琴音が興奮気味にアナウンスをした。
「第四試合は、先ほど試合を終えたばかりのゲオルグ・シェフチェンコ選手と、対するは⋯⋯⋯⋯連日メディアを騒がしている元高校生探索者! デビューからわずか4ヶ月ほどでA級ランカーへと三段階特進を果たした新人探索者!⋯⋯⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ選手っ!!」
ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ~~~っ!!!!!
ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ⋯⋯っ!!!!!
ここで、ついにソラの名前が呼ばれた。
ソラは名前を呼ばれて舞台へと上がる。
「キタァァ~~~~~っ!!!!! 新屋敷ソラぁぁ~~~っ!!!!」
「え? 中学生? だいぶ若くないか?」
「ノー! 日本の高校生だ。まーアジア人は年齢よりも若く見えるからな」
「こ、これが、新屋敷ソラ⋯⋯。まだまだ幼過ぎないかっ!?」
「見た目はな? だが、こいつは新人デビューして4ヶ月しか経っていないのに、もうA級なんだぞ?」
「う、嘘だろ? 信じ⋯⋯られ⋯⋯ねぇ~⋯⋯」
会場は、歓声と響めきが混ざり合った異様な状況だったが、ただ、少なくとも観客は『新屋敷ソラ』に興味津々なのは間違いなかった。
「よー、少年。調子はどうだ?」
「ゲオルグさん! 調子はまあいいです」
「そうか、そりゃよかった」
「ていうか、ゲオルグさんは大丈夫なんですか? その⋯⋯」
「ああ⋯⋯試合の『連投』を気にしているのか? それなら大丈夫だ。腕試し大会はあくまで『腕試し』⋯⋯⋯⋯要は『力量くらべ』だからな。ある程度本気だが『殺し合い』ではないからそこまでガチにはやらん。だから問題はないぞ」
と言うと、二カッと笑う。
「ま、ソラは全然本気出していいからな?」
「え? あ、いや、でも⋯⋯」
「心配するな! 私はまだ君には負けんよ」
「⋯⋯そう⋯⋯ですか」
「お? 怒った? ワハハハ⋯⋯まーこのくらい煽ったほうがいいだろう?」
「そうですね。俺もやるからにはそのゲオルグさんの余裕をすぐにでも消せるくらいには本気出しますよ」
「言うね~!⋯⋯⋯⋯⋯⋯やってみろ、小僧」
そして、二人は舞台上で力強い眼差しをお互いに向ける。『相撲』で言うところの『時間いっぱい』な感じだ。
「それでは、第四試合! はじめぇぇぇ~~~っ!!!!」
琴音が第四試合の開始を宣言した直後——、
ドゴゥゥゥゥゥゥっ!!!!
「ぐぬっ!?」
ゲオルグの懐に一瞬で入ったソラが下から突き上げるようなボディーアッパーを放つ。ゲオルグはソラの攻撃に全く反応できずにモロにその攻撃を喰らうと、その威力を吸収しきれなかったのか苦悶の表情を浮かべる。
「ぬぐぅぅ⋯⋯! な、何という⋯⋯速さだ」
ソラの先制攻撃をモロに受けたゲオルグが驚愕の表情を浮かべる。
「なっ?! あ、あの、ゲオルグ・シェフチェンコが反応できなかったですって?!」
観客席で見ていた王明凛がソラの攻撃をまともに受けたゲオルグを見て、席を立ち上がり思わず叫んだ。
「ちょっと落ち着きなさいよ、明凛! 恥ずかしいでしょ!?」
すると、その横に座っているメイベル・ホワイトが明凛を嗜める。
第二試合の二人である。仲良しである。
「まーでも⋯⋯⋯⋯あの新屋敷ソラの攻撃。相当速かったわね」
「わ、私だってそうよ! 今のを見て、私の『見立て』がだいぶ間違っていたことを理解したわ」
そう言って、明凛が歯噛みする。
それを見たメイベル・ホワイトも、
「フン! 右に同じよ」
(なるほど。レヴィアスがワザと負けたのは新屋敷ソラのポテンシャルへの期待⋯⋯⋯⋯なのかもね)
********************
「どうっすか先輩? まだ余裕はありますか?」
ソラは「さっきの煽りのお返しだ」と言わんばかりにゲオルグを煽る。
「な、なるほど⋯⋯。すまなかった、ソラ。ど、どうやら⋯⋯私の見当違いだったよ。き、君には、こちらももう少し⋯⋯⋯⋯『ギア』を上げる必要がある⋯⋯よう⋯⋯だ⋯⋯ね」
「っ?!」
ドン⋯⋯ビリビリビリビリビリビリビリ⋯⋯っ!!!!
そう言って、ゲオルグは自分の最初の言葉を謝罪するような言葉を放つと凄まじい威圧を放った。
「お、おいおいおい⋯⋯。本気出さないんじゃなかったのかよ、おっさん?」
「ふむ⋯⋯。君にはちょっとそれでは無理そうなのでね? 礼儀として本気を出させてもらうよ」
「⋯⋯⋯⋯」
「な~に⋯⋯⋯⋯⋯⋯殺すつもりはないから安心してくれ」
ニィィ。
そう言って、ゲオルグが獰猛な笑みを浮かべた。
「はぁぁぁぁ~~~。まったく、世界最強も第2位も化け物揃いかよ」
そうして、一度大きくため息を吐いたソラが一言そう告げると⋯⋯⋯⋯構えた。
「! お、おい⋯⋯お前⋯⋯武術ができるのか?」
「ん? どういうことだ?」
「い、いや、その構え⋯⋯⋯⋯まるで私が使っている武術と同じ構えのように見えるのだが⋯⋯?」
「ヘ~、キグウダナ~」
ソラの棒読みの理由⋯⋯それはもちろん『恩寵:自動最適化』によるもの。つまり、ソラは先ほどの第三試合でゲオルグとジョーの殴り合いを見て、『ゲオルグの武術』を『自動最適化』によって吸収していたのだった。
「! も、もしかして⋯⋯それは⋯⋯お前の能力⋯⋯なのか?」
「ソンナコトナイデスヨ」
そう言って、ソラが目を逸らす。
「フ⋯⋯フフフ⋯⋯」
「?」
「良い! 良いぞ、新屋敷ソラ!!」
ドン⋯⋯!
愉悦な表情を浮かべながら、ゲオルグ・シェフチェンコがソラへと襲いかかった。
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