上 下
102 / 157
第三章

102「パワー&パワー/第三試合『ゲオルグ・シェフチェンコVSジョー・ウェイン』」

しおりを挟む


「さあ、どんどん行くよー! 続いて第三試合は⋯⋯⋯⋯ガサゴソ、ガサゴソ⋯⋯⋯⋯で、出たーーーっ!! 次もいきなりのやばい好カード! 世界ランキング3位! アメリカ本部ギルドマスター! 誰もが知ってる爽やか筋肉お化け! ジョー・ウェインーーーっ!!!!」

 ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!!!!

「キターーーーーー!! ジョー・ウェイン、キタタタターーーっ!!!!」
「相変わらず、すげえ筋肉だな。おいっ!」
「アメリカの星! USA! USA!」
「ヘイ、ジョー! 今回こそ世界最強を奪い取ってくれぇぇ~~~っ!!!!」

「⋯⋯対するは! 世界ランキング1位! 現『世界最強』! ロシア本部ギルドマスター! こちらもジョー・ウェインと双璧をなす筋肉お化け!⋯⋯⋯⋯『皇帝カイザー』ゲオルグ・シェフチェンコーーーっ!!!!」

 ドワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!!!!

「出たっ!! 因縁の対決!! ジョー・ウェインVSゲオルグ・シェフチェンコ!!」
「今年もこのカードがやってきたぞぉぉーーーっ!!!!」
皇帝カイザー! 皇帝カイザー! 皇帝カイザー!」
「やっちゃってください、ゲオルグの旦那ぁぁ~~っ!!!!」

 先ほどの女性探索者シーカー頂上対決も大いに盛り上がったが、この二人の対決はレヴィアス・アークシュルトを欠くものの、ほとんど『全探索者シーカー頂上決戦』のようなものなので、観客のボルテージはさらに高まっていた。

「ゲオルグ。今年の私は⋯⋯⋯⋯いつもとは違いますよ?」
「フフフ、ジョー。⋯⋯⋯⋯それ、去年も聞いたわ!」
「それでは、第三試合! はじめぇぇぇ~~~っ!!!!!」


 ドン!


 第三試合は、第一、第二試合とは打って変わって⋯⋯⋯⋯⋯⋯いきなり動いた。


「「どおおおおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~っ!!!!!」」


 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ⋯⋯っ!!!!


 いきなり、防御なしの殴りっ放しのぶつかりあい⋯⋯⋯⋯まさに肉弾戦と化した。

「(ごくり)こ、これが、世界第1位と第3位の戦い⋯⋯」
「す、すげぇぇ、迫力⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」

 胡桃沢、唐沢そしてソラも⋯⋯⋯⋯舞台の殴り合いに呆気に取られていた。

「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~っ!!!!」
「おおおおおおおおおおお~~~っ!!!!」

 ガシィィ!!

 今度は二人が互いの両手を掴み、相手の両腕をねじ伏せようと力自慢を始めた。

「よっしゃーーー!! いけぇぇーーシェフチェンコぉぉーーーっ!!!!」
「負けるなぁぁーー!! ジョーぉぉぉ!!!!」

 もはや、そこには魔法やスキルといった華やかなものは何一つなかった。

 拳と拳のぶつかりあい。

 飛び散る汗。

 熱狂する男性探索者シーカーとは裏腹に、女性探索者シーカー陣の悲鳴が聞こえる。

「きっも!」
「え? なんで? 何で殴り合い? バカなの? ねぇ、バカなの?」
「これだから、脳筋どもは⋯⋯」
「お願いだから、もう少しシュッとした戦い方をしてほしいのですが⋯⋯」
「動物園か、ここはっ!?」

 容赦ないな、君たち⋯⋯。

 世界最強と世界3位の試合なのだがねぇ⋯⋯。

 ちなみに、そんな女性探索者シーカー陣たちのお目当ては『レヴィアス・アークシュルト』だったのだが、第一試合でまさかの新人ルーキー『新屋敷ソラ』に一撃で倒されたことで機嫌も悪かったため、例年以上に言葉が辛辣だった。

 さて、そんなこぼれ話をしているうちに舞台のほうでは

「ぐっ⋯⋯うぐ⋯⋯」
「ふふふ⋯⋯どうした、ジョー? この程度かね?」

 力比べでゲオルグがジョーの腕を少しずつねじ伏せ始めていた。

「ぬ、ぬぅぅ~⋯⋯や、やはり、まだパワー不足でしたか。仕方ありません!」
「っ!?」

 そう言うと、ジョーがその場でピョンとジャンプをすると、

「おらぁぁぁっ!!」

 ドゴン!

 そのまま、ゲオルグの胸にドロップキックのようなものをお見舞いした。

「うぐっ?!」

 不意の攻撃ではあったため、ゲオルグが多少顔を歪めるが、特に大きなダメージではなかった。

 ゲオルグの手から外れたジョーが少し後ろへと下がる。

 バババババ⋯⋯!

 すると、突然、ジョーが『印』のようなものを刻んだ。そして、

「ちっ! 試合の制限時間は5分だからな。早速使うか⋯⋯」
「使わせてもらうよ、ゲオルグ!『倍加術マルチプリング』⋯⋯⋯⋯3倍っ!!」

 ドン! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ⋯⋯っ!!!!

「ふぃぃぃぃ~~~~~⋯⋯」

 ジョーが、スキル『倍加術マルチプリング』を発動した瞬間——ジョーの体から青白い魔力がほとばしったあと、魔力の残滓がユラユラとジョーの体から湯気のように立ち昇っている。

「それじゃ、ゲオルグ⋯⋯⋯⋯⋯⋯第2ラウンドといこうか?」
「望むところだ」

 両者、再びぶつかり合う。

 ドドン⋯⋯!

 ガシィィィィィィィィィ~~~っ!!!!!

「っ?!」

 再びぶつかり合った二人は、両手を出してまた力比べを始める。しかし、さっきとは打って変わってすぐにジョーがゲオルグの腕をねじ伏せていく。

「ぬ、ぬぬぅぅ⋯⋯!」
「へ⋯⋯へへ⋯⋯。流石のゲオルグも『倍加術マルチプリング3倍』には力負け⋯⋯する⋯⋯ようだ⋯⋯な⋯⋯!」
「ふ、ふん⋯⋯。し、しかし、だいぶ顔色が悪い⋯⋯ようだが⋯⋯?『倍加術マルチプリング3倍』とも⋯⋯なる⋯⋯と、体の負担は⋯⋯それ相応じゃ⋯⋯ないか?」
「くっ!? よ、余計な⋯⋯お世話だ⋯⋯!!」

 力で押されているゲオルグではあったが、顔色が悪いのはむしろジョーのほうだった。

 ジョーの顔色が見る見る青色に染まり、尋常じゃない汗がこぼれ落ちている。

「さ、さすがに⋯⋯『倍加術マルチプリング3倍』は⋯⋯分が悪いな⋯⋯⋯⋯⋯⋯はぁっ!!」
「っ!?」

 ゲオルグがさっきのジョーと同じようにその場で飛んでドロップキックをお見舞いしようとしたが、ジョーはいち早く反応し、ゲオルグのキックを躱した。

「さて⋯⋯と。『倍加術マルチプリング』展開中のジョーであれば、力比べや殴り合いはもはや不要だな」
「ふん!『倍加術マルチプリング』は身体能力の倍加だけだけじゃ⋯⋯⋯⋯ないぜ!」

 そう言うと、ジョーは両腕をゲオルグに向けて突き出した。

「くらえっ!⋯⋯⋯⋯『豪爆破弾エクスプロッシブ・バレット』っ!!」

 ジョーの突き出した両手から『直径50センチほどの魔力弾』が無数に射出しゲオルグを襲う。

 ゲオルグは超スピードでの身のこなしでジョーの魔力弾を避けていく。その避けられた魔力弾が地面に当たったその瞬間——、


 ドォォォォォォォォォォォォォンンっ!!!!!

 ドォォォォォォォォォォォォォンンっ!!!!!

 ドォォォォォォォォォォォォォンンっ!!!!!

 次々と爆発していき、周囲に破片が飛び散る。

「キャァァーーーっ!!!!」
「うわぁぁぁっ!?」

 一応、舞台と観客側の間には物理・魔法による衝撃を吸収・遮断する『魔法障壁』が展開されているので破片が観客席に飛ぶことはないが、しかし、その『魔法障壁』にコンクリートの破片が飛び散るごとにガンガンガン⋯⋯と衝突音が鳴るので、守られているとはいえ不安や恐怖を感じてしまう。

 そして、その観客のリアクションこそ、それだけ、このジョーの放つ『魔力弾』の威力が高いと言うことを意味していた。



 舞台はモウモウと爆発後の煙に包まれていた。

「ふぅ~⋯⋯⋯⋯さ~て、ゲオルグにダメージは与えられたかな?」

 煙が徐々に晴れてくる。そして、

「あ~~~⋯⋯⋯⋯⋯⋯ですよねぇ」

 煙が晴れ、魔力弾でボロボロになった舞台には、無傷どころか衣服さえ汚れていないゲオルグ・シェフチェンコが立っていた。

「そりゃ⋯⋯ま~な」

 そんなピンピンしているゲオルグを見て、

「相変わらずのバケモンで何よりだよ⋯⋯!」

 と、呆れのような、嬉しさのような、複雑な感情の籠った笑みを浮かべた。

「タイムアップにより両者引き分け! 試合終了っ!!」



『第二試合 ゲオルグ・シェフチェンコVSジョー・ウェイン/タイムアウト引き分け』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

なんか黄金とかいう馬鹿みたいなスキルを得たのでダラダラ欲望のままに金稼いで人生を楽しもうと思う

ちょす氏
ファンタジー
 今の時代においてもっとも平凡な大学生の一人の俺。 卒業を間近に控え、周りの学生たちは冒険者としてのキャリアを選ぶ中、俺の夢はただひとつ、「悠々自適な生活」を送ること。 金も欲しいし、時間も欲しい。 程々に働いて程々に寝る……そんな生活だ。 しかし、それも容易ではなかった。100年前の事件によって。 そのせいで現代の世界は冒険者が主役の時代となっていた。 ある日、半ば興味本位で冒険者登録をしてみた俺は、予想外のスキル「黄金」を手に入れる。 「はぁ?」 俺が望んだのは平和な日常を送るためだが!? 悠々自適な生活とは程遠い、忙しない日々を送ることになる。

処理中です...