33 / 52
【第二章 ハズレモノ旺盛編】
033「クズはどこまで行ってもクズ」
しおりを挟む——次の日
俺は城からエルクレーン王国総合学園の中庭に向かっていた。
ちなみに、ハクロは今日、城でお留守番だったのだが「せっかくだから、お外ブラブラしてくる~」と言って城を出ていった。⋯⋯ちなみに、ハクロは『姿を消す魔法』を使えるので誰かに見つかるということはない。
さて、そもそもなぜ『救世主を辞退した俺』が学園の中庭にやって来たのは柊木たちに呼ばれたからである。⋯⋯というのも、今朝早くに小山田が俺の部屋にやってきて「あの件で瑛二に謝りたいから、朝、学園の中庭に来て欲しい」と頼まれたからだ。
救世主たちはダンジョンに行く前、必ず一度この中庭に集合し、その日のダンジョンでの活動目的を先生たちから指示をもらって出発する⋯⋯と吾妻と古河が言っていた。なので、恐らくダンジョンへ向かう前に俺との用事を済ませるつもりなのだろう。
もちろん、柊木たちが俺に『謝りたい』なんてこれっぽっちも思っていないことはわかっていたが、俺はあえて「え? 柊木君が謝りたい? わかった、行くよっ!」と、さも謝ってもらえると思わなかったから嬉しいという見事な演出を加味して返事をした。
そんな俺の反応を見ると、小山田は嬉しそうな顔をして、
「お、おう! じゃあ、そういうわけだから、後でな!」
と弾んだ声で返事をすると、軽やかステップで帰っていた。
それを見た俺が「ちょろインかよ!」と心の中でツッコんだのは言うまでもない。そんな『ちょろイン小山田』の態度を見て確信した。
柊木たちは「俺が仕返しを恐れてシャルロットたちに報告しなかったんだな」⋯⋯と。
だとすると、今回俺を呼び出した『本当の理由』はさらなる『脅し』とか『恫喝』とか⋯⋯そんなところか。
あいつら、恐らく「ビビっている俺を、さらにビビらせてチクらせないようにしてやる」とでも、思っているんだろうな。
いや~、実に楽しみだ。⋯⋯これで、あいつらが『どれほどのクズ』かはっきりするな。
ニチャァ。
********************
——エルクレーン王国総合学園/中庭
「よぉ、瑛二」
予定の時間より少し遅れて、柊木、小山田、吉村がやってきた。
ちなみに、俺はいつもの集合時間よりも一時間早くここに呼ばれた。おそらく、柊木たちは他のクラスメートや先生たちに見られたくなかったのだろう。
「⋯⋯柊木」
柊木もいつの間にか『日下部』から『瑛二』へと『名前呼び』していた。⋯⋯もちろん、全くもって嬉しくない。
「あ? 柊木だぁ? てめぇ、何、調子こいてんだ、コラっ!!」
すると、小山田が横から茶々を入れてくる。面倒くさいので俺は無視をする。
「て、てめぇ!? 何、無視してんだ、コラっ!」
小山田が無視した俺に向かって、手を出そうとしてきた。
ガシっ!
すると、柊木が俺を殴ろうとした小山田の腕を掴む。
「やめろ、小山田!⋯⋯少し黙っててくれ」
「た、拓海君っ!?⋯⋯⋯⋯チッ!」
俺は、小山田に対して、1ミリも脅威を感じなかったので、手を出そうが出すまいがどっちでも良かったのだが⋯⋯。それにしても、
「ふ~ん、小山田のその態度を見ると、やっぱ俺に『謝罪する』つもりで呼び出したわけじゃないようだな」
「⋯⋯」
柊木が俺のセリフを聞いて、なぜか黙る。
「?⋯⋯拓海君?」
小山田もそんな柊木のいつもと違う態度に思わず声をかけた。
「瑛二、お前、ダンジョンで何があった?」
「何?」
柊木の表情には、明らかに『焦り』のようなものが見て取れた。
「ステータスを見せろ、瑛二っ!」
おそらく、柊木は『俺の何に不安がっているのかわからない』という状態なのだろう。あいつの身になれば、そりゃ~⋯⋯俺のステータスを見たくなるよな。
「ああ、いいぜ。⋯⋯ステータス!」
ということで、俺は素直にステータスを表示した。
——————————————————
【ステータス】
名前:エイジ・クサカベ(異世界人)
称号:ハズレモノ
レベル:2
HP:28
MP:19
身体能力:21
身体硬度:11
魔法:なし
固有魔法:なし
固有スキル:なし
体術:なし
——————————————————
⋯⋯もちろん『偽装したステータス』だけどな。
「な、なんだよ、相変わらずのクズステータスじゃねーか! さっきまでの生意気な態度でてっきり少しは強くなったのかと思ったが一週間前と全然変わってねーじゃねーか! こんなんで、よく俺たちにタメ口聞いたな、瑛二っ! てめー殺すぞっ!!」
「何っ?! い、一週間前と変わっていない⋯⋯だとっ?!」
「⋯⋯どういう⋯⋯ことだ?」
小山田は、俺の生意気な態度の割にほとんど成長していない低レベルなステータスを見て、一瞬ホッとした後、すぐに威勢よく恫喝し出した。
しかし、小山田とは逆に柊木と吉村の二人は意外そうな表情とリアクションを見せた。それはまるで、予想が外れたように⋯⋯。
ということは、柊木と吉村は俺のこのステータスは『おかしい』と思っているということになる。⋯⋯なぜだ?
「お、おかしい⋯⋯。確かにステータスは一週間前と変わっていないが、今のお前のその口調や態度は、ただイキがっているだけとは思えないっ! もっと、こう⋯⋯⋯⋯確固たる力を持つ余裕のソレに感じる。おい、瑛二! どういうことだ、説明しろ!」
さっきまで冷静を装っていた柊木だったが、痺れを切らしたのか『ネタバラシしろ!』と半ば強引な言い草で要求してきた。⋯⋯にしても、柊木の言葉を聞く限り、どうやら俺に対して『力のような何か』を感じ取っていたようだ。
さて、この場合、普通なら「そんなの教えるわけないだろ!」などと言いたいところだが、俺は柊木のこういう反応を待っていたので、それに便乗する。
「ふーん、それってつまり、柊木は俺から『何か特別な力』を感じ取ったわけね? くっくっく⋯⋯⋯⋯なら話が早い」
「何っ?!」
俺はクツクツと三人を見ながら嘲笑する。
「⋯⋯ビンゴだよ、柊木。お前の言うとおり俺は『特別な力』を手に入れた。だから、ダンジョンから生還できた。このステータスに惑わされないなんて⋯⋯さすがだよ」
「と、特別な力? 惑わされない? そ、それって、どういう⋯⋯」
柊木は俺の言葉に明らかに動揺していた。⋯⋯そりゃ、そうだろう。俺が「特別な力を手に入れてダンジョンを脱出した」とか「このステータスに惑わされないとは⋯⋯」などと『気になるワード』を散りばめたからな。
相手が『どのくらい強いのか』がわからないってのは⋯⋯一番の恐怖だよね?
「おい、瑛二っ!」
次に、さっきまでずっとお黙っていた吉村が声をかけてきた。
「おお、吉村君じゃないっすか! 俺をさんざん騙した挙句、最後は俺を崖に放り投げたサイコパス野郎じゃないっすか。サイコパス先輩、チーッス!」
俺は声をかけてきた吉村に対し、これでもかというほどに煽る。そして、
ズズズズズズズ⋯⋯っ!
「ぐっ?! な、なん⋯⋯だ!? こ、この体の⋯⋯震えは⋯⋯っ!!!!」
同時に、吉村に軽い『威圧』をかけた。すると、俺の『威圧』をまともに受けた吉村の顔が一瞬で真っ青になり、全身から汗を吹き出しながらガタガタと震え出した。
「へ~、『威圧』って出るかな~と思ってやってみたけどちゃんと出るんだな。⋯⋯いいね、これ!」
「うぐぐ⋯⋯ぐぎぎぎぎぎ⋯⋯」
ガクン⋯⋯。
俺の『威圧』を受け続けて、ついに立てなくなったのか吉村は苦しみながら膝をついた。
俺はそんな吉村を上から見下ろす。
「だ、だず⋯⋯け⋯⋯で。ぐる⋯⋯じぃいいぃぃ⋯⋯ぃぃぃ~~~⋯⋯」
吉村が目に涙を浮かべながら俺に懇願する。
「え、瑛二! や、やめろよ、この野郎っ!」
「お、おい、瑛二っ!? やめろ、コラっ!」
すると、小山田と柊木が俺に『威圧』をやめるよう⋯⋯⋯⋯恫喝してきた。
「うん? 何言ってんの? 助けないよ? バカなの、お前ら?」
「「「っ!!!!!!」」」
二人は俺がビビって言うことを聞くと思っていたのか、俺が否定するとひどく驚いたリアクションを見せた。⋯⋯いや、ビビるわけないじゃん! 今の俺からしたらお前らなんて『雑魚』過ぎんだから(笑)。
「なっ?! ざ、ざざざ、雑魚だとぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~!!!!!!」
おっと。⋯⋯『心の声』が漏れてたようだ(テヘペロ)。
すると、柊木が俺の言葉にブチギレたようだ。
「死ねぇぇぇぇぇ~~~!! 瑛二ぃぃぃ~~~~!!!!!!!」
そんな雄叫びを上げながら、柊木が急加速して俺に拳を叩きつけようとしてきた。⋯⋯しかし、
ガシっ!
「ん? 何、柊木君?」
「っ!!!!!! そ、そん⋯⋯な⋯⋯バカ⋯⋯な⋯⋯っ?!」
俺は殴ってきた柊木の右拳をしっかりと掴み、そして、
メキメキメキメキメキメキメキメキメキメキメキメキ⋯⋯!!!!!
「ぐぅあぁぁあぁぁぁあぁぁぁあああぁあぁ~~~~っ!!!!!!!」
俺はその柊木の拳をりんごを握りつぶすようにゆっくりと締め上げる。
え? 手加減?
そりゃもちろん、ちゃんと手加減し⋯⋯⋯⋯あ、あれ? あれれ?
⋯⋯やっべw
36
あなたにおすすめの小説
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる