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384~389 魔力
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【384.一線】
オリエが夕食にと居間に着いた時、魔法使いと男三人が全裸で組んず解れつ絡み合っていた。魔法使いを見た男達が理性を無くした結果だ。
オリエはそんな魔法使いを思わず凝視した。そしてこたつに座りながら魔王に尋ねる。
魔法使い達から色々汁が飛び散っているが、魔王が張った結界に阻まれて一定範囲を越えることはないので安心だ。
「あれ大丈夫なの? 魔力が……」
オリエが驚いたのは彼女の行為ではなく、発する魔力にであった。突然すぎる魔力の増大にびっくりだったのだ。それに、発する魔力が大きすぎれば、それだけで災害を生みかねない。
「一線を越えてしまっているが、まだ大丈夫だ。お前ほどでもないからな」
「え……」
あまり大丈夫には聞こえなかった。そしてオリエ自身がもっと大丈夫ではなさそうに言われたのがもっと衝撃的だった。
案外自分のことには気付かないものである。
「まあ、まだお前も大丈夫だ」
早く地上の未練を無くした方がいいがな、と魔王は言った。
【385.魔人】
「あの……、今の魔力云々と言うのは……?」
ヒーラーは仲間達の狂乱に頭を抱えながらも、魔王とオリエの会話はしっかり聞いていた。
「魔力が強すぎれば地上に住めなくなる」
魔王がダンジョンを創って住むようになったのもこれが理由だ。ちょっとした精神の揺らぎで地上に災害をもたらすようになってしまい、この世界を壊さないためにもダンジョンに籠もる必要があった。
魔法使いがそれに一歩近付いた理由は肉体改変にある。これによって身体の隅々まで魔王の魔力が染み渡った。半ば魔物になってしまっているのだ。早晩完全に魔物となるだろう。
しかしそれは単に早まっただけとも言える。ダンジョンの最奥は魔王から溢れた魔力に満ちていて、ここに住むだけで徐々に魔物への道を歩むことになる。シェフがそうなったようにだ。
因みに魔物となった後にも人の姿を保っていれば特に魔人と呼ばれる。魔王も魔人である。
「大事件ではありませんか!」
「そうなってもダンジョンを創るか、このダンジョンに住めばいい」
ヒーラーの驚愕を余所に、魔王はあっさりしたものだった。
【386.準備?】
ヒーラーと魔王の話を聞いていたオリエが切なげな顔をする。
「魔王が箱庭を貸してくれたのは、あたし達が死ぬまでダンジョンの中で暮らせるようにだったんだね」
「え?」
「え?」
「いや、箱庭は思い付きのゲームだぞ」
「え? でもあたしに言ってた領地経営って、本当はダンジョンのことを言ってたんじゃないの?」
「あれは遊びに付き合って貰うための方便だ」
「え……、ええーっ!?」
オリエは一頻り喫驚の声を上げると、がっくりと項垂れた。
「全く楽しみが見出せないなら止めてもいいぞ」
「ううん。折角だからもうちょっとやってみるよ」
【387.イタリア料理】
「とにかく飯にしよう」
魔王は言った。
「今日はイタリア料理ダ」
スパゲティナポリタン、照り焼きチキンピザ、タケノコとマイタケのアクアコッタ、プロセスチーズ。
「イタリア?」
魔王は突っ込んだ。
「痛リア料理ダ」
シェフはどこから出したのか、「痛」と書いたプラカードを掲示してカタカタ笑う。
「アイタタタ。ナンテコッタ」
魔王とシェフは笑い声を上げた。
「魔王? 何がおかしかったの?」
オリエとヒーラーが心底不思議そうに魔王とシェフを見る。
冗談が滑るのはもの悲しい。魔王とシェフの背景がどよんと曇った。
魔王の演出は念が入っている。
【388.勝負の行方】
魔王達の話が終わる頃、魔法使いと男3人の戦いは魔法使いの勝利で終結していた。
床に臥す男達を尻目に何故か勝ち誇る魔法使いに向け、魔王は手をパタパタと横に振る。
それから魔王は魔法使い達の周りに張った結界の中を丸洗い。突然の渦巻く水に翻弄された魔法使いが目を回すが、これで少しは頭も冷えることだろう。
渦に巻かれて目を回した女魔法使いが横たわる一方、男達は頭を振りつつ起き上がってもそもそと服を身に着ける。
「何時間くらい経った?」
「30分も経ってなさそうだ」
食卓にオリエが来ていてもまだ食前だ。
「マジか。何発抜かれたかわからんのにか」
「腎虚になるかと思ったぞ」
魔法使いの色欲は底なしだ。これは魔法使いが異常なレベルの陵辱を受けても耐えられる肉体を指向したため、普通の範囲での情交なら食事と睡眠以外の全ての時間を費やすこともできる肉体となった。
「これじゃ、身体保たねぇな……」
本心では魔法使いを他の誰にも触らせたくないハンターは深く溜め息を吐いた。
【389.スイッチ】
「酷い目に遭ったわ」
魔法使いが手を額に当てつつ起き上がる。そしてこたつに座る皆を前に、頬を赤らめて胸と股間を手で隠した。
「ちょっと恥ずかしいわね」
今更ながらに全裸の自分に異常性を見出したのだ。
しかしそうして羞恥に身を捩る姿の方が男は情欲をそそられるものである。誰かが生唾を飲み込んだ。
魔法使いの眉がピクンと跳ねた。生唾を飲み込む音で何かのスイッチが入ったかのように淫猥な笑みを浮かべ、手を後に回して隠していた部分を強調するように立つ。
「だけど、これからはずっとこの格好なんだから隠してもしょうがないわよね」
既に搾り取られすぎている男達は必至に視線を逸らした。
オリエが夕食にと居間に着いた時、魔法使いと男三人が全裸で組んず解れつ絡み合っていた。魔法使いを見た男達が理性を無くした結果だ。
オリエはそんな魔法使いを思わず凝視した。そしてこたつに座りながら魔王に尋ねる。
魔法使い達から色々汁が飛び散っているが、魔王が張った結界に阻まれて一定範囲を越えることはないので安心だ。
「あれ大丈夫なの? 魔力が……」
オリエが驚いたのは彼女の行為ではなく、発する魔力にであった。突然すぎる魔力の増大にびっくりだったのだ。それに、発する魔力が大きすぎれば、それだけで災害を生みかねない。
「一線を越えてしまっているが、まだ大丈夫だ。お前ほどでもないからな」
「え……」
あまり大丈夫には聞こえなかった。そしてオリエ自身がもっと大丈夫ではなさそうに言われたのがもっと衝撃的だった。
案外自分のことには気付かないものである。
「まあ、まだお前も大丈夫だ」
早く地上の未練を無くした方がいいがな、と魔王は言った。
【385.魔人】
「あの……、今の魔力云々と言うのは……?」
ヒーラーは仲間達の狂乱に頭を抱えながらも、魔王とオリエの会話はしっかり聞いていた。
「魔力が強すぎれば地上に住めなくなる」
魔王がダンジョンを創って住むようになったのもこれが理由だ。ちょっとした精神の揺らぎで地上に災害をもたらすようになってしまい、この世界を壊さないためにもダンジョンに籠もる必要があった。
魔法使いがそれに一歩近付いた理由は肉体改変にある。これによって身体の隅々まで魔王の魔力が染み渡った。半ば魔物になってしまっているのだ。早晩完全に魔物となるだろう。
しかしそれは単に早まっただけとも言える。ダンジョンの最奥は魔王から溢れた魔力に満ちていて、ここに住むだけで徐々に魔物への道を歩むことになる。シェフがそうなったようにだ。
因みに魔物となった後にも人の姿を保っていれば特に魔人と呼ばれる。魔王も魔人である。
「大事件ではありませんか!」
「そうなってもダンジョンを創るか、このダンジョンに住めばいい」
ヒーラーの驚愕を余所に、魔王はあっさりしたものだった。
【386.準備?】
ヒーラーと魔王の話を聞いていたオリエが切なげな顔をする。
「魔王が箱庭を貸してくれたのは、あたし達が死ぬまでダンジョンの中で暮らせるようにだったんだね」
「え?」
「え?」
「いや、箱庭は思い付きのゲームだぞ」
「え? でもあたしに言ってた領地経営って、本当はダンジョンのことを言ってたんじゃないの?」
「あれは遊びに付き合って貰うための方便だ」
「え……、ええーっ!?」
オリエは一頻り喫驚の声を上げると、がっくりと項垂れた。
「全く楽しみが見出せないなら止めてもいいぞ」
「ううん。折角だからもうちょっとやってみるよ」
【387.イタリア料理】
「とにかく飯にしよう」
魔王は言った。
「今日はイタリア料理ダ」
スパゲティナポリタン、照り焼きチキンピザ、タケノコとマイタケのアクアコッタ、プロセスチーズ。
「イタリア?」
魔王は突っ込んだ。
「痛リア料理ダ」
シェフはどこから出したのか、「痛」と書いたプラカードを掲示してカタカタ笑う。
「アイタタタ。ナンテコッタ」
魔王とシェフは笑い声を上げた。
「魔王? 何がおかしかったの?」
オリエとヒーラーが心底不思議そうに魔王とシェフを見る。
冗談が滑るのはもの悲しい。魔王とシェフの背景がどよんと曇った。
魔王の演出は念が入っている。
【388.勝負の行方】
魔王達の話が終わる頃、魔法使いと男3人の戦いは魔法使いの勝利で終結していた。
床に臥す男達を尻目に何故か勝ち誇る魔法使いに向け、魔王は手をパタパタと横に振る。
それから魔王は魔法使い達の周りに張った結界の中を丸洗い。突然の渦巻く水に翻弄された魔法使いが目を回すが、これで少しは頭も冷えることだろう。
渦に巻かれて目を回した女魔法使いが横たわる一方、男達は頭を振りつつ起き上がってもそもそと服を身に着ける。
「何時間くらい経った?」
「30分も経ってなさそうだ」
食卓にオリエが来ていてもまだ食前だ。
「マジか。何発抜かれたかわからんのにか」
「腎虚になるかと思ったぞ」
魔法使いの色欲は底なしだ。これは魔法使いが異常なレベルの陵辱を受けても耐えられる肉体を指向したため、普通の範囲での情交なら食事と睡眠以外の全ての時間を費やすこともできる肉体となった。
「これじゃ、身体保たねぇな……」
本心では魔法使いを他の誰にも触らせたくないハンターは深く溜め息を吐いた。
【389.スイッチ】
「酷い目に遭ったわ」
魔法使いが手を額に当てつつ起き上がる。そしてこたつに座る皆を前に、頬を赤らめて胸と股間を手で隠した。
「ちょっと恥ずかしいわね」
今更ながらに全裸の自分に異常性を見出したのだ。
しかしそうして羞恥に身を捩る姿の方が男は情欲をそそられるものである。誰かが生唾を飲み込んだ。
魔法使いの眉がピクンと跳ねた。生唾を飲み込む音で何かのスイッチが入ったかのように淫猥な笑みを浮かべ、手を後に回して隠していた部分を強調するように立つ。
「だけど、これからはずっとこの格好なんだから隠してもしょうがないわよね」
既に搾り取られすぎている男達は必至に視線を逸らした。
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