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597 奥底まで
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魔物の大発生から一週間が経ち、ルキアス達のダンジョン探索は一歩進んで泊まり掛けの攻略へと舵を切っていた。ルキアスの銃が完成したからか、フヨヨンが積極的に提案してのことだ。
タイラクが移住希望者を迎えに行く件は無くなった。西側に歩哨が立たなくなったことで行き来に制限が無くなったのだ。その代わりに西側の影響が東側にも出るようになった。
地上は今、クリュー西側とラナファーベの二つの町の町長の摘発に絡んで騒々しい。犯罪は治安当局の管轄で、町長不在は行政当局の問題だから探索者の与り知らぬ所で事態も推移するのだが、それでも多くの探索者が浮ついていて落ち着かない。西側の問題でありながら東側までがそわそわしている。
これならダンジョンの方が気楽だからと、フヨヨン以外の面々も探索に前向きになっていた。
だが前向きになれば避けられない問題もある。
「さて、ルキアス君、ザネク君、それにシャルウィ君は底まで行く気はあるかね?」
三人は中層レベルの実力に達しているが、深層レベルにはまだまだ遠い。ダンジョン最奥まで行くには更なるレベルアップか、フヨヨン達深層組の庇護が必要となる。
「ボクは早い内に底まで行くつもりだから付いて来ても構わないよ。但し何かの都合で死んでも恨まないでくれたまえよ」
いくらフヨヨンでも誰かを完璧に護衛しながら見知らぬダンジョンの最奥に行くのは難しいらしい。
ルキアス、ザネク、シャルウィは顔を見合わせた。三人共が困惑を顔に浮かべる。実力以上の階層に行くのには慎重な三人だから、近日中の最奥到達など頭の片隅にも無かったのだ。次の階層に行くか行かないかの判断も都度考えながらだった。
「少し考えさせて貰えますか?」
「勿論だとも。底まで行くのには何回か地上に戻らなければならないと思うからね。その時に続けるかどうか決めてくれたまえよ」
地上に戻るのは主に食料や消耗品の補充のためだ。
「判りました」
ルキアスは予想外に早く来たダンジョン最奥を考える時に躊躇いを隠せない。
「老婆心ながらルキアス君は行った方が後悔が無いと思うよ。ルキアス君が言い出しっぺでここに来たんだからね」
「……」
ルキアスは少なからず衝撃を受けた。フヨヨンの言う通りのように思われたのだ。
そして唐突に決心した。
「行きます。奥底まで」
「「ルキアス!?」」
ザネクとシャルウィがびっくりして止めようとする気配を発するが、ルキアスの決心は揺るがない。
「『考えさせて』と言った傍からルキアス君は即答しちゃってるけど、時間はまだあるからゆっくり考えてくれたまえよ」
フヨヨンはルキアスが衝動的に行動して後悔する懸念が拭えないらしかった。
タイラクが移住希望者を迎えに行く件は無くなった。西側に歩哨が立たなくなったことで行き来に制限が無くなったのだ。その代わりに西側の影響が東側にも出るようになった。
地上は今、クリュー西側とラナファーベの二つの町の町長の摘発に絡んで騒々しい。犯罪は治安当局の管轄で、町長不在は行政当局の問題だから探索者の与り知らぬ所で事態も推移するのだが、それでも多くの探索者が浮ついていて落ち着かない。西側の問題でありながら東側までがそわそわしている。
これならダンジョンの方が気楽だからと、フヨヨン以外の面々も探索に前向きになっていた。
だが前向きになれば避けられない問題もある。
「さて、ルキアス君、ザネク君、それにシャルウィ君は底まで行く気はあるかね?」
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「勿論だとも。底まで行くのには何回か地上に戻らなければならないと思うからね。その時に続けるかどうか決めてくれたまえよ」
地上に戻るのは主に食料や消耗品の補充のためだ。
「判りました」
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「老婆心ながらルキアス君は行った方が後悔が無いと思うよ。ルキアス君が言い出しっぺでここに来たんだからね」
「……」
ルキアスは少なからず衝撃を受けた。フヨヨンの言う通りのように思われたのだ。
そして唐突に決心した。
「行きます。奥底まで」
「「ルキアス!?」」
ザネクとシャルウィがびっくりして止めようとする気配を発するが、ルキアスの決心は揺るがない。
「『考えさせて』と言った傍からルキアス君は即答しちゃってるけど、時間はまだあるからゆっくり考えてくれたまえよ」
フヨヨンはルキアスが衝動的に行動して後悔する懸念が拭えないらしかった。
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