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浜柔

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598 安全地帯

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 フヨヨンは敢えて口に出して言った。

「そろそろ安全地帯を確保しておかなければね」

 更に一週間が過ぎ、ルキアス達は第五〇階層まで到達していた。魔物の大発生以降、殆どの魔物を素通りし、最短ルートを探し出すのも止めて経路の多少の遠回りも容認して階層を重ねるのを優先させたためだ。
 途中の宿泊には安全地帯と思われる階段を使った。ただこの安全地帯なのは通常状態の場合で、万が一魔物の大発生が起きれば通り道になって確実に巻き込まれる。それにもしかすると人が通るかも知れず、あまり落ち着ける場所ではない。
 だから階層内の安全地帯を確保したい。
 ただ安全地帯を探すとなれば、候補地に数日間滞在することになる。もしそこが安全地帯でなければ別の候補地を探してまた数日間が掛かる。場合によっては月単位で同じ階層で足踏みだ。
 安易に決められることではないので皆と相談なのである。

「頃合いだな」

 タイラクが同意した。メイナーダには拘りが無く、残る三人は全く初めてだったり通り過ぎただけだったりで判断できず、このまま方針が決まった。
 最初に第五〇階層を隈無くマッピングする。戦闘は極力避けて各部屋の状況を確かめ、魔物が居ないか極少数の小部屋を候補としてピックアップする。少人数では大部屋を監視しきれないので今は対象外だ。

「候補は一〇近くありますけど、調べる順番はどうなるんでしょう?」
「最短経路から回廊一本外れた所からかしらね。後から来る人のことを考えれば上り階段に近い方がいいかしら」

 最短経路は魔物の大発生の時の魔物の通り道になるため、この経路に面した部屋では魔物に入り込まれかねない。だからと言って離れ過ぎては使い勝手が悪い。最短経路に近い方が利便性が高いのだから。
 また、階層間を移動した時には警戒が疎かになり易いので、近場に安全地帯が在ればある程度の危険を回避できる。この時考慮するのが上へ向かう流れか下へ向かう流れかだ。下の階層から逃げる時には下り階段に近い方が魔物を引く危険が少ない利点がある。下の階層に挑戦する意思があれば階段を下って来たところだろうから上り階段に近い方が一息入れるのにちょうど良い。
 ともあれ第五〇階層程度では逃げなければならない状況にはそうそうならない筈である。

「もし候補のどこも外れだった場合は?」
「上か下の階で同じ事の繰り返しね」
「ええ……」
「だから本当ならこんな少人数でするものじゃないのよ」

 複数のパーティーが手分けして行うものらしい。
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