生活魔法は万能です

浜柔

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448 最後に

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 翌日の昼のことだった。

「ルキアス! この町を離れるって本当ですの!? また一緒にダンジョン探索ができるようになると信じてましたのに!」

 エリリースが無料宿泊所にまで来てルキアスに詰め寄った。その背後ではリュミアが苦笑を浮かべている。どうやらルキアスの助けにはならなそうだ。
 シャルウィだけでなくエリリースも探索を心待ちにしていたと知って、ルキアスは申し訳ない気持ちで一杯だ。

「ご、ごめん……」

 思い返せばエリリースは志願してパーティーに加わったのだ。その探索への思い入れが如何ばかりかを想像し、頭を下げて謝るばかりのルキアスだ。
 この時ルキアスにはエリリースの思い入れ先に関して多少の勘違いがある。しかしそれで導かれる行動は勘違いの無い場合と変わらないのだから大勢に違いは無い。

「どうしても行ってしまうのですね……」

 ルキアスが頭を下げ続けていると、エリリースの声が急にしょんぼりしたものになった。

「ご、ごめん……」

 ルキアスは思い違いに、エリリースが別れを惜しんでいることに気付いたものの、やはり謝ることしかできなかった。エリリースを連れては行けないのだから。

「……それでは最後にもう一度、一緒に探索してくださいませんか?」
「う、うん。ザネクに相談してみるよ」

 ルキアスが答えながらリュミアに目でお伺いを立てると、リュミアは小さく頷いた。




 翌日。ルキアス、エリリース、ザネク、シャルウィは朝早くからダンジョン探索を開始した。第六階層からほんの小一時間ずつ各階層を探索し、昼頃に第一〇階層の探索を開始する。
 ルキアスは提案した。

「折角だからボス戦の見学をしようよ」

 ボス戦をしようとは言わない。エリリースに何かあってはいけないからだ。もしもボス戦をしようとしても、後から付いて来るリュミアが乱入して一瞬でボスを葬ってしまうことだろう。後でエリリースに叱られようともリュミアは譲らない筈だ。

「よう、ルキアス、一昨日ぶりだな」
「デナンさん。まだやってたんですね……」
「そりゃ、装備が揃うまでやるさ」
「別に揃わなくてももっと下の階層に行けそうなのに」
「まあ、こうなったら意地だよな」
「そうですね……」

 ルキアスは苦笑いであった。

「そう言うルキアスはこんな所で油売ってていいのか? 後の三人は一昨日の会食に来てたよな? この三人がルキアスがパーティーをまた組みたいって言ってた仲間か」
「ちょ、ちょ、ちょーっと待って! そうだけど、面と向かって言われたら恥ずかしいから!」
「あっはっは! 何言ってやんだ。そんなのはちゃんと言ってやらなきゃ仲間にも伝わらねぇぞ」
「……もう」

 ルキアスは真っ赤になって顔を伏せた。だから後でエリリースが顔を輝かせていたのにも気付かず仕舞いだ。
 その後『鏡』を使ってボス戦を見学。ザネクとシャルウィは見たことがあるようで静かに見るだけだったが、エリリースは大いに盛り上がっていた。
 そしてこれが四人の集まった最後の思い出……になるかは誰にも判らない。
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