生活魔法は万能です

浜柔

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403 舌打ち一つ

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「さて、どうすっかね。後で変に絡まれたくもねぇしな」
「魔物を倒すだけ倒して、人を相手にしないってのはどうかしら?」
「そうすっか」

 タイラクとメイナーダは走りながら軽く相談した。
 一見冷たいようだが一人一人に拘っていては時間を取られてしまい、倒せる魔物も倒せなくなる。すると結果的に助けられる人数も減ってしまう。そうなっては本末転倒だろう。
 また「魔物を倒しただけで助けた訳じゃない」と言い張れる状況にしておけば、後の理不尽な非難の予防になる。
 二人は第一階層と第二階層に別れて魔物の掃討に入った。上の階層ほど探索者のレベルが低くもしも魔物と対峙した時に逃げられる可能性が低い。だから上から順に倒して回るのである。




 ハーベイとヘルドは螺旋回廊を駆け上がりながら横たわっている巨大な魔物の骸を乗り越えなければならなかった。

「えぐい程の片手間感だな」

 回廊を塞ぐほどの巨体の魔物を一撃で倒して進んでいるのが見て取れるのだ。

「深層組の実力は凄まじいな。しかしこれで合点がいった」
「何のだ?」
「深層組に怯える探索者が居ることさ」
「……何かでこんなの向けられでもしたたんだろうな。それはそうと、俺らはどこに行く?」
「一〇階」

 ハーベイは上り掛けた第一〇階層から第九階層へと上がる回廊入口から上の方を見て答えた。横たわる魔物が見える。恐らく骸となっているだろう。それならばタイラクとメイナーダはもっと上の階層に行った筈だ。

「そんで、あんなのと戦ってみるか?」

 ヘルドもまたその魔物の骸を見ながら尋ねた。

「勿論、逃げる」
「だな」

 二人は揃って少し後戻り、第一〇階層へと入った。




「キ……」

 リュミアは悲鳴を上げ掛けたエリリースの口を片手で押さえ、もう一方の手の人差し指を口の前に立てて見せた。そしてエリリースがコクコク頷くのを確認してからエリリースの口を放す。
 四人はそのまま息を潜めて魔物が通り過ぎるのを待った。

(そのまま通り過ぎて)

 ルキアスは願わずにいられなかった。だが願いとは儚いものだ。
 通り過ぎるかのように見えた魔物が鏡に映った自分に興味を示し、首を右へ左へ何度か振った後、『鏡』に向けて突き出した。
 無論、『鏡』は砕ける。魔物は目の前にあった魔物の姿が突然消えたからか、びっくりしたように一瞬動きを止める。だが直ぐにルキアス達に視線を向け、その口を大きく開けた。
 リュミアが叫ぶ。

「ザネク!」

 ザネクはその呼び掛けに応え、舌打ち一つ挟んで唱えた。

「『大盾』!」

 その言葉に合わせ、回廊ほぼ一杯に光の壁が出現して魔物の前に立ち塞がった。
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