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363 ちょっと待って
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ザネクが鑑定を受ける番。鑑定師はザネクを讃えるように言う。
「素晴らしい! 君には『連撃』と『切断』と言う天職があるね! 『連撃』は一度の攻撃で何度もダメージを与えられる天職で、『切断』はあらゆる物が切断できるようになる天職さ!」
しかしこの時鑑定師の視線がザネクの剣帯に注がれているのをルキアスは目撃した。ザネクは地下街では剣こそ『収納』に入れているが、剣帯は何かの時のために着けたままにしている。これを見ればザネクが剣使いだと容易に知れるだろう。
その上で鑑定師は剣使いが好みそうな天職を持ち出して来た。無関係とは思えないルキアスだ。
(ぼくには『光魔法』だった……)
『光魔法』は回復や解毒と言った魔法も使える天職だ。誰にとっても有用と言える。もしも鑑定が虚偽だったとしたら、見た目だけではどんな武器を使っているか判らない相手に提示するには都合が良いはずだ。
ただ、虚偽と言う証拠も無いのだ。
「……ほ、本当か!?」
ルキアスが対処に迷っているとザネクが前のめりで尋ね返した。些か間があったのは言われた望外の話を受け取るのに少し時間を要したのだろう。鑑定師の胡散臭さに気付いた様子は無い。
「勿論だとも。契約するかい?」
「お、おう!」
(え!?)
「そうかい、そうかい、私のサポートを受けられる君は幸運だよ。ただね、天職が二つだから一回二万ダール。一〇回分先払いなら一八万ダールなんだ」
「そうなのか! それなら一〇回を頼むぜ!」
「ザネク、ちょっと待って!」
ルキアスは慌ててザネクの肩を引いた。
「あんだよ? ルキアス。いいところなのに……」
「最初から一〇回は多すぎるよ。試しに一回だけ契約してみて、頑張れそうなら一〇回を契約したらいいんじゃない?」
ここで確証も無いのに鑑定師を詐欺師呼ばわりもできない。しかし仮に確証があってもできないだろう。その場合は裏から強面の某かが出て来かねない。
それが無くともザネクに契約を止めさせようとしても納得して貰えないだろう。
だからルキアスは鑑定師が詐欺師だった場合の被害を最小限に食い止めるべく提案した。
「そうか? うーん、まあ、ルキアスが言うならなぁ。やっぱり試しに一回だけで頼むぜ」
「そうかい。じゃあ、これがサポート一回分の契約書だよ。二万ダールと引き替えだ」
鑑定師は一瞬だけルキアスを睨んだ。ルキアスからは舌打ちを我慢するかのように見えた。
ザネクが二万ダールを支払って契約書を貰う。サポートを受けるのは予約制で三日後と話が纏まった。
「ようし! これで剣使いとして飛躍できるぜ!」
「あ、うん……」
鑑定師の店を出たところでザネクは気勢を上げた。
ルキアスは微妙な気分だ。鑑定師に感じた事をザネクに正直に話すか躊躇われる。
だが翌日には躊躇う必要が消えた。
地下街に警官が多数立ち入って何かを調べているのが気になって人に尋ねると、逐電した詐欺師の店を警官が調べていると言う。
指差された先に在るのは昨日訪れた鑑定師の店だった。
「素晴らしい! 君には『連撃』と『切断』と言う天職があるね! 『連撃』は一度の攻撃で何度もダメージを与えられる天職で、『切断』はあらゆる物が切断できるようになる天職さ!」
しかしこの時鑑定師の視線がザネクの剣帯に注がれているのをルキアスは目撃した。ザネクは地下街では剣こそ『収納』に入れているが、剣帯は何かの時のために着けたままにしている。これを見ればザネクが剣使いだと容易に知れるだろう。
その上で鑑定師は剣使いが好みそうな天職を持ち出して来た。無関係とは思えないルキアスだ。
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『光魔法』は回復や解毒と言った魔法も使える天職だ。誰にとっても有用と言える。もしも鑑定が虚偽だったとしたら、見た目だけではどんな武器を使っているか判らない相手に提示するには都合が良いはずだ。
ただ、虚偽と言う証拠も無いのだ。
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ルキアスが対処に迷っているとザネクが前のめりで尋ね返した。些か間があったのは言われた望外の話を受け取るのに少し時間を要したのだろう。鑑定師の胡散臭さに気付いた様子は無い。
「勿論だとも。契約するかい?」
「お、おう!」
(え!?)
「そうかい、そうかい、私のサポートを受けられる君は幸運だよ。ただね、天職が二つだから一回二万ダール。一〇回分先払いなら一八万ダールなんだ」
「そうなのか! それなら一〇回を頼むぜ!」
「ザネク、ちょっと待って!」
ルキアスは慌ててザネクの肩を引いた。
「あんだよ? ルキアス。いいところなのに……」
「最初から一〇回は多すぎるよ。試しに一回だけ契約してみて、頑張れそうなら一〇回を契約したらいいんじゃない?」
ここで確証も無いのに鑑定師を詐欺師呼ばわりもできない。しかし仮に確証があってもできないだろう。その場合は裏から強面の某かが出て来かねない。
それが無くともザネクに契約を止めさせようとしても納得して貰えないだろう。
だからルキアスは鑑定師が詐欺師だった場合の被害を最小限に食い止めるべく提案した。
「そうか? うーん、まあ、ルキアスが言うならなぁ。やっぱり試しに一回だけで頼むぜ」
「そうかい。じゃあ、これがサポート一回分の契約書だよ。二万ダールと引き替えだ」
鑑定師は一瞬だけルキアスを睨んだ。ルキアスからは舌打ちを我慢するかのように見えた。
ザネクが二万ダールを支払って契約書を貰う。サポートを受けるのは予約制で三日後と話が纏まった。
「ようし! これで剣使いとして飛躍できるぜ!」
「あ、うん……」
鑑定師の店を出たところでザネクは気勢を上げた。
ルキアスは微妙な気分だ。鑑定師に感じた事をザネクに正直に話すか躊躇われる。
だが翌日には躊躇う必要が消えた。
地下街に警官が多数立ち入って何かを調べているのが気になって人に尋ねると、逐電した詐欺師の店を警官が調べていると言う。
指差された先に在るのは昨日訪れた鑑定師の店だった。
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