309 / 627
309 得策
しおりを挟む
ロマは休憩場所を定めると、調理道具といつの間にか拾っていたらしきシーサーペント肉の塊を取り出した。
「働いたらまた腹が減っちまったからな」
「何も食べずに働いたのはわたしよ?」
「おう。だからメイの分は多めにしとくぜ」
「あら、ありがと」
「どういたしましてだ」
手っ取り早くソテーに仕上げられたシーサーペント肉に皆で舌鼓を打つ。
「美味しい! ふんわりしてるのに歯応えがしっかりあって、噛めば噛むほど味が出るなんて!」
「ほっほっほ。こんな機会でもないとなかなか口にはせんからの」
シャルウィが賞賛し、ダン老人が補足した。
シーサーペント肉は供給にムラがあって口にできる機会が少ない。食べる機会が少なければ食生活のローテーションから外れて尚のこと口にしなくなる、そんな食材だ。
「ですけど、こんなにのんびりしていて良いのでしょうか?」
エリリースには大発生した魔物に対して何かしなければならないのではと居たたまれない気持ちがある。
「今回はじっとしていた方が得策……ね」
「それはどうしてでしょう?」
「大発生した魔物は丸一日経てばどこかに行ってしまうからさ」
エリリースの再度の問いにはリュミアではなくロマが答えた。
「第五階層の魔物まで出てるようじゃ、メイでも倒すのにも丸一日以上掛かっちまうからな」
「一度に倒せる数には限りがあるからねー。第五階層までの魔物なら一度に回廊を通れる数なら上に残ってる人で十分よ」
「だけど魔物が大発生するのって迷惑よね。こんな場所で丸一日足止めなんて」
シャルウィは溜め息混じりにぼやいた。
「人によってはそうでもないぞ。ススカベンジャーには待ち望んでるヤツも多いからな」
「それはまたどうしてでしょう?」
「魔物を倒しても魔石を回収しきれるものじゃないからな。捨て置かれた魔石を拾うのにこれほど都合のいい時は無い。現に俺らだってメイが倒した魔物の魔石のかなりを拾わず仕舞いだろ?」
「おっしゃる通りですわ」
エリリースは一つ頷いた。
「それはそうと、メイはどこまで見て来たんだ?」
「二層の手前までよ。二層もびっしりだったから帰って来たの」
「四層の様子からすりゃ、そうだろうな」
この後はもう取り留めのない話で夜が更けた。
「働いたらまた腹が減っちまったからな」
「何も食べずに働いたのはわたしよ?」
「おう。だからメイの分は多めにしとくぜ」
「あら、ありがと」
「どういたしましてだ」
手っ取り早くソテーに仕上げられたシーサーペント肉に皆で舌鼓を打つ。
「美味しい! ふんわりしてるのに歯応えがしっかりあって、噛めば噛むほど味が出るなんて!」
「ほっほっほ。こんな機会でもないとなかなか口にはせんからの」
シャルウィが賞賛し、ダン老人が補足した。
シーサーペント肉は供給にムラがあって口にできる機会が少ない。食べる機会が少なければ食生活のローテーションから外れて尚のこと口にしなくなる、そんな食材だ。
「ですけど、こんなにのんびりしていて良いのでしょうか?」
エリリースには大発生した魔物に対して何かしなければならないのではと居たたまれない気持ちがある。
「今回はじっとしていた方が得策……ね」
「それはどうしてでしょう?」
「大発生した魔物は丸一日経てばどこかに行ってしまうからさ」
エリリースの再度の問いにはリュミアではなくロマが答えた。
「第五階層の魔物まで出てるようじゃ、メイでも倒すのにも丸一日以上掛かっちまうからな」
「一度に倒せる数には限りがあるからねー。第五階層までの魔物なら一度に回廊を通れる数なら上に残ってる人で十分よ」
「だけど魔物が大発生するのって迷惑よね。こんな場所で丸一日足止めなんて」
シャルウィは溜め息混じりにぼやいた。
「人によってはそうでもないぞ。ススカベンジャーには待ち望んでるヤツも多いからな」
「それはまたどうしてでしょう?」
「魔物を倒しても魔石を回収しきれるものじゃないからな。捨て置かれた魔石を拾うのにこれほど都合のいい時は無い。現に俺らだってメイが倒した魔物の魔石のかなりを拾わず仕舞いだろ?」
「おっしゃる通りですわ」
エリリースは一つ頷いた。
「それはそうと、メイはどこまで見て来たんだ?」
「二層の手前までよ。二層もびっしりだったから帰って来たの」
「四層の様子からすりゃ、そうだろうな」
この後はもう取り留めのない話で夜が更けた。
5
お気に入りに追加
854
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢、前世の記憶を駆使してダイエットする~自立しようと思っているのに気がついたら溺愛されてました~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢エヴァンジェリンは、その直後に前世の記憶を思い出す。
かつてダイエットオタクだった記憶を頼りに伯爵領でダイエット。
ついでに魔法を極めて自立しちゃいます!
師匠の変人魔導師とケンカしたりイチャイチャしたりしながらのスローライフの筈がいろんなゴタゴタに巻き込まれたり。
痩せたからってよりを戻そうとする元婚約者から逃げるために偽装婚約してみたり。
波乱万丈な転生ライフです。
エブリスタにも掲載しています。
きっと幸せな異世界生活
スノウ
ファンタジー
神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。
そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。
時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。
異世界レメイアの女神メティスアメルの導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?
毎日12時頃に投稿します。
─────────────────
いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる