生活魔法は万能です

浜柔

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308 所狭しと

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 ルキアス達は第五階層に到達した。

「判っちゃいたが、とても落ち着けそうにないな」

 ロマがぼやく。辺り一面の砂浜にはシーサーペントやクラーケンが所狭しと蠢いている。人の目線では壁にしか見えない。

「メイ、さくっとっちゃってくれ」
「少しくらい手伝ってくれてもいいのよ?」
「よせやい。俺がちまちま倒してても、それらひっくるめて纏めて倒す癖に」

 ロマは何かを追い払うように手をぷらぷらさせながら言った。
 これを受けてメイナーダがけらけらと笑う。

「そうよねー」

 その「答えなど判っていた」的な口振りに、「そんならやってやらぁ」と言い放ちたくなったロマだったが、本当に魔物を倒すことになってしまえばもっと面倒になるのが見えているので思い止まった。
 メイナーダが魔物を屠りながら先へ進む。
 シーサーペントやクラーケンはその大きさ自体が普通の探索者には脅威だが、メイナーダに係っては全く脅威を感じさせない。瞬く間に焼き尽くされて魔石のみに変わる。その魔石も時折割れてしまっている程だ。
 そしてそんな火力であれば、魔物を焼いた直後には足を踏み入れただけで焼死してしまう程に地面が熱を持っていそうなものだが、その実全く熱くない。
 後を歩くルキアスはこのことに気付いた。直感的にメイナーダが『冷却』を使っているとも考える。だが、そうであるならもっと『冷却』が一般的になってそうなものだし、『加熱』の裏返しでしかない『冷却』にメイナーダの魔法の火力を抑えきれるとも思えない。だからメイナーダに限れば別の魔法だろうと考え直す。
 つらつら考える時間もあらばこそ、第六階層へと降りる螺旋回廊の入口に辿り着く。メイナーダがそこで立ち止まって寄って来る魔物を屠り、その隙に皆が回廊へと入って行く。

 回廊には魔物は居なかった。第六階層以下の階層からは上がって来ていないと言うことだ。

「これでどうにか落ち着けるな」

 ロマが言う。

「じゃあ、どっかそこら辺で休憩としようや」

 第六階層まで降りて階層に入ってしまえば魔物に襲われる危険がある。回廊の途中なら余程の事が無ければ襲われないのだ。
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