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272 アイスクリーム
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「ちょうどリュミアさんが通り掛かったから来て貰ったよ」
ルキアスはリュミアを連れて皆の許に戻った。
「姉ちゃん?」
「先生! 先生はアイスクリームの作り方をご存じなのですか?」
「ええ。知ってる……わ」
「じゃあ、材料の買い出しからお願いします!」
シャルウィが身を乗り出して頼むように、材料に何を揃えれば良いかも判らない状態なのだ。
「そう……ね。今回が初めてのようだから、練習しやすいように牛乳と砂糖だけで作ってみましょう……か」
材料の種類が少ない方が食材の調達がし易く、手順も単純だ。
そうして五人は牛乳と砂糖を買い求めた後、地下二階の炊事場へと行った。
リュミアが鍋を『収納』から取り出して洗ったら竈へ。探索者の嗜みとして鍋の一つや二つは『収納』に入れている。
鍋を竈に置いたらカップ一〇杯程度の牛乳とカップ一杯の砂糖を投入、混ぜる。
「これを牛乳が焦げ臭くならないように七〇度くらいの温度で量が三分の一くらいになるまで煮詰めるの……ね」
「三分の一!?」
ルキアスは掛かる時間を想像して慄いた。しかし掛かる時間が長くてもルキアスなら魔力切れになる程でもない。それにそうしなければ作れないのならやるしかない。
「……始めるよ」
ルキアスが鍋と牛乳を『加熱』する。『温度計』で確かめながら慎重に温度を上げて行く。
そして七〇度。
「何も起きませんわ」
「沸騰させてないからね」
周囲の気温がそこそこ高いこともあって、湯気さえ殆ど立たない。じっと見ていても何の変化も感じられない。
奇妙な沈黙の時間となった。
しかし手許をじっと見られているのも落ち着かないルキアスだ。
「リュミアさん。アイスクリームって他の材料を使うこともあるんですか?」
「生クリームと卵……ね」」
「それらを使うとどう変わるんでしょう?」
「そう……ね。生クリームを使えば牛乳を煮詰めなくて大丈夫……ね。卵を泡立てて使えば口当たりが滑らかになるわ……ね」
「それならその二つを使った方が早く出来て美味しいんじゃ……?」
「そうだけど……ね。生クリームはかなり高価で、卵は傷んでたら怖いの……ね」
「あ、はい。それなら牛乳と砂糖だけがいいです」
ルキアスは答えを聞いてから質問自体を後悔した。それらの材料を使っていたのでは後で再現できなくなる。懐や体調に危険を及ぼしてはいけない。ザネクやシャルウィがルキアスの言葉に苦笑を漏らしても気にしない。
そして一時間以上が経ち、漸く牛乳が煮詰まった。
「牛乳が煮詰まったら、今度は掻き交ぜながら冷やすの……ね。凍ってもったりしたら完成……ね」
ルキアスが『冷却』するのに合わせ、リュミアが風魔法で撹拌する。風魔法を使うのはアイスクリームには空気を含ませた方が口当たりが軽くなるかららしい。風魔法を使わないなら泡立て器を使う。
程なくしてアイスクリームは完成した。
各自が探索者の嗜みとして『収納』に入れて持ち歩いている皿に取り分ける。何となくお互いに目配せし合った後でアイスクリームを凝視する一同。
そして実食。女性陣から歓声が上がった。
ルキアスはリュミアを連れて皆の許に戻った。
「姉ちゃん?」
「先生! 先生はアイスクリームの作り方をご存じなのですか?」
「ええ。知ってる……わ」
「じゃあ、材料の買い出しからお願いします!」
シャルウィが身を乗り出して頼むように、材料に何を揃えれば良いかも判らない状態なのだ。
「そう……ね。今回が初めてのようだから、練習しやすいように牛乳と砂糖だけで作ってみましょう……か」
材料の種類が少ない方が食材の調達がし易く、手順も単純だ。
そうして五人は牛乳と砂糖を買い求めた後、地下二階の炊事場へと行った。
リュミアが鍋を『収納』から取り出して洗ったら竈へ。探索者の嗜みとして鍋の一つや二つは『収納』に入れている。
鍋を竈に置いたらカップ一〇杯程度の牛乳とカップ一杯の砂糖を投入、混ぜる。
「これを牛乳が焦げ臭くならないように七〇度くらいの温度で量が三分の一くらいになるまで煮詰めるの……ね」
「三分の一!?」
ルキアスは掛かる時間を想像して慄いた。しかし掛かる時間が長くてもルキアスなら魔力切れになる程でもない。それにそうしなければ作れないのならやるしかない。
「……始めるよ」
ルキアスが鍋と牛乳を『加熱』する。『温度計』で確かめながら慎重に温度を上げて行く。
そして七〇度。
「何も起きませんわ」
「沸騰させてないからね」
周囲の気温がそこそこ高いこともあって、湯気さえ殆ど立たない。じっと見ていても何の変化も感じられない。
奇妙な沈黙の時間となった。
しかし手許をじっと見られているのも落ち着かないルキアスだ。
「リュミアさん。アイスクリームって他の材料を使うこともあるんですか?」
「生クリームと卵……ね」」
「それらを使うとどう変わるんでしょう?」
「そう……ね。生クリームを使えば牛乳を煮詰めなくて大丈夫……ね。卵を泡立てて使えば口当たりが滑らかになるわ……ね」
「それならその二つを使った方が早く出来て美味しいんじゃ……?」
「そうだけど……ね。生クリームはかなり高価で、卵は傷んでたら怖いの……ね」
「あ、はい。それなら牛乳と砂糖だけがいいです」
ルキアスは答えを聞いてから質問自体を後悔した。それらの材料を使っていたのでは後で再現できなくなる。懐や体調に危険を及ぼしてはいけない。ザネクやシャルウィがルキアスの言葉に苦笑を漏らしても気にしない。
そして一時間以上が経ち、漸く牛乳が煮詰まった。
「牛乳が煮詰まったら、今度は掻き交ぜながら冷やすの……ね。凍ってもったりしたら完成……ね」
ルキアスが『冷却』するのに合わせ、リュミアが風魔法で撹拌する。風魔法を使うのはアイスクリームには空気を含ませた方が口当たりが軽くなるかららしい。風魔法を使わないなら泡立て器を使う。
程なくしてアイスクリームは完成した。
各自が探索者の嗜みとして『収納』に入れて持ち歩いている皿に取り分ける。何となくお互いに目配せし合った後でアイスクリームを凝視する一同。
そして実食。女性陣から歓声が上がった。
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