生活魔法は万能です

浜柔

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262 骨の加工

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 やって来たのは炊事場だ。夕食には早い時間だから空いている。
 ルキアスはオークの骨から部材にするには小さいものを選び、まずは『捏ね』てみた。
 ピキッと音を立てて骨が割れた。

(やっぱり割れるのか……)

 骨に粘り気は無いので予想されたことだ。それでも一応確認した。
 ただこれはあくまでルキアスの予想通りだっただけだ。もしも誰か赤の他人が見ていれば目を剥いて驚いたに違いない。何せ指で撫でるだけで骨が割れるのだ。とてつもない剛力の指か。それとも特殊な天職か。そんな想像をしてしまうだろう。
 ルキアスの『捏ね』は地味に、そして着実に進歩していた。
 また別の小片を取り出し、試すのは『均し』。『均し』は蒸気銃は勿論、銃弾の仕上げで多用した。銃弾は基本的に型抜きでの成形だが、鉄を型に押し込む都合で多少の欠けやバリが入る。それを『均し』て仕上げるのだ。
 その『均し』を骨に使うと、サラサラと粉が舞った。粘り気の無い素材の場合は表面の凸部を削るのみになるようだ。いずれにしても表面はツルツルになる。

(待てよ? ツルツルになった後も『均し』続けたら?)

 鉄の表面を『均し』てもツルツルになる以上の変化は無い。鉄の量に変化が無いからだろう。それならば減る場合は? 削れてしまう骨の場合はどんな結果になるか、試してみなければ判らない。
 早速ツルツルになったばかりの骨を更に『均し』てみる。今度もサラサラと粉が舞った。
 そのまま一箇所に集中して『均し』て行くと、目に見える凹みとなった。

(削れた!)

 骨を加工するなら如何に削るかも課題であった。それが特に道具を用意するまでもなく可能なのは大きい。さすがに細かい部分は何らかの道具を用意しなければならないが、そうする必要のあるパーツは極少数だろう。むしろ迂闊に『均し』て材料を台無しにしてしまう方を気を付けなければなるまい。

(加工は『均し』中心だね)

 ノコギリで大まかに切って『均し』て成形する。予想以上に加工手順が固まってルキアスも少し心が沸き立った。
 しかし更なる加工を試す前に、そろそろ夕食の時間。炊事場に来る人も増えたので、周囲に合わせる意味も兼ねて夕食の仕度をする。材料は馬鈴薯。採れ立てが謳い文句なのを買っていたのだ。洗ってフライパンに置いたら丸のままをじっくりと焼く。
 慌てる必要は無い。骨が上手く使えそうなことへのちょっとしたお祝いでもあるのだから。
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