生活魔法は万能です

浜柔

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171 ピンキリ

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 ザネクが選んだ弓は両手を軽く広げたくらいの長さで、クロスボウを除けば小柄な部類になる。取り回しを重視したらしい。

「なかなかいい目をしている。その弓はイチイの木材を心材にしてバネ鋼を貼り合わせたもので、作りのいい品だ」

 他の客の対応を終えたらしく、店主がまたやって来ていた。

「短い割には強力な方だが、初心者にも使えなくはない。お客さんくらい鍛えていれば少し練習したら使えるだろう」

 店主のお墨付きを貰ってザネクはどや顔だ。ちょっとばかしウザい。

「じゃあ、それをくれ」
「一〇万ダールだ。初心者のようだからケースと矢筒と矢を一〇本おまけに付けよう」
「えっ!?」

 驚きの声を上げたのはザネクではなくルキアスだった。

「どした?」
「ぼくが買った銃より高いなって……。買ったのは一番安い銃だけど……」

 弓は銃に比べてシンプルだから、何となく安いものだと思っていたルキアスだ。

「あー、それは弓がピンキリだからだな。安ければ……、これなんかがそうだが、二万ダールだ。ただこのクラスだと手先が器用なら自作でも似たような品が作れる」

 店主は竹のみで出来た弓を指差して言った。

「逆に高いのは一億ダールを超える」
「一億!?」
「そう、一億だ。ドラゴンの骨や皮や腱を使った品で、その弓の一〇〇倍は強い。生半可な使い手だと指一本分も引けない強弓だ。尤も、そのクラスは全て特注品だから店頭には並ばないがな」

 店主はザネクが買おうとしている弓を指差しながら言った。その弓でもかなり強い弓に見えるのに、その一〇〇倍とは如何なるものか。予想できるものでもないが、判ることはある。

「引けないって……。引けなかったら意味が無いんじゃ……?」
「ダンジョンの深層に行くような探索者なら引けるんだ。だから深層では銃より弓の方が圧倒的に強い」
「銃も強くしたらいいんじゃ?」
「銃のような複雑な加工ができる素材じゃないからな。簡単に加工できる素材で作った銃だと、深層で役立つ程の威力で撃ったら一発で壊れてしまう」
「マジですか!?」
「マジだ」

 店主の話を聞いて、ルキアスは少し暗い気持ちになった。何せ銃が主力武器なのだ。浅い階層に留まるなら気にする必要が無いが、一応は深い階層を目指そうと考えてはいる。
 しかし問題に直面するのは順調に行ってもかなり遠い未来だと考えると、気にしたら負けだとも思えた。
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