生活魔法は万能です

浜柔

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158 見張り番

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 夜のしじまにぽつんと小さな灯りが一つ。ルキアスとザネクは極力光量を抑えた『ランプ』を頼りに番をする。
 ルキアスはそれに加えて細長い『鏡』をできる限り遠くに張り巡らせている。一〇歩分くらいの距離だろうか。もっと遠くに張りたくても、今はこれが限界だ。

「出口が一つしか無いのはダンジョンの欠陥だな」
「まさか出られなくなるなんて思わなかったよね」
「まったくだ。いつまで続くか判らないのも落ち着かないもんな」
「ずっとだったらどうなるんだろう?」

 もしもダンジョンタワーの防衛装置が働いて誰も入って来れない状態になったらと考えると空恐ろしくなるルキアスだ。

「そん時ゃそん時で、ずっとこのままだろうな」
「だけど食べ物とか……」
「……オークでも狩るしかねぇな」
「でもどうやって……。大群を相手にはできないし……」
「何頭か釣り出せばいいだろ」
「危なくない?」

 釣り出すと簡単に言っても望んだ数だけをとはならない。大群で反応されればてんやわんやだ。

「あ、リュミア先生に魔法で二、三頭倒しても貰って、それを拾って来ればいいんじゃない?」
「あの大群の中に魔法をぶち込むのか?」
「そうなるね」
「で、あの大群の中に拾いに行くと?」
「あ!」

 ルキアスが赤面しつつバツが悪そうに口を窄めると、ザネクが愉快そうに肩を震わせた。
 ふとルキアスは気付く。少し声が大きかったと。それでエリリースとリュミアの様子を窺うのだが、二人は木にもたれて寝息を立てたままだった。起こしてしまってはいないかと気になったのだが、ホッと一安心だ。
 だから少し声を潜めてザネクに問い掛ける。

「あんまり声出さない方がいいよね?」
「あー、物音に気付けないって意味ならそうだが、眠れるかなら少しくらい人の声がした方が安心できるってもんだぞ」
「そうなの?」
「起きたら周りに誰も居ませんでしたじゃ、怖ろしいだろ?」
「なるほど」

 と、この時『鏡』の一枚が割れた。

「何か来た!」

 『鏡』までの距離が近いため、何が来たかを確かめる暇を惜しんでルキアスは蒸気タンクの『加熱』を始める。水は事前に入れているので、蒸気さえ出来上がれば銃身に弾丸を籠めて引き金を引くだけだ。そして『ランプ』を何かが来た方へと飛ばす。
 ザネクも剣を抜いて構えた。
 相手は慎重な足取りで近付いて来る。
 そして木々の陰からその姿が現れた途端、相手が慌てた。

「待て、待て! ルキアス、俺だ!」
「え? ロマさん!?」

 ルキアスはびっくりしつつも銃を下ろした。

「あー、びっくりした」

 ロマは胸を撫で下ろすように押さえつつ暗がりから出て来るのだった。
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