生活魔法は万能です

浜柔

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151 鳴子

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 ルキアスは考える。ザネクが実践している警戒方法は今の自分には少々難しい。それにそのザネクだって先日のオークは至近にも拘わらず見逃してしまっている。目視と言う能動的な警戒には限界も有るのだ。
 だったら受動的に察知したら良い。発想だけなら簡単だ。しかし問題はこれをどう実現するか。

(そう言えば父さんが畑に鳴子を付けてたな……)

 とは言え鳴子をぶら下げては歩けない。何かで代用しなければ。

(『傘』かな……。あ、だめだ)

 真っ先に思い付くのは何かと頼りにしている『傘』だ。しかしこれは失敗したばかり。少しやり方を変えて自分の周囲をすっぽり覆う形も考えられるが、歩く時に周囲の物にぶつかって邪魔になるのは背中に差す方法と大差ない。その上全身を覆ってしまっては自身の行動も『傘』に阻まれてしまう。『傘』を貫いて銃を撃っても威力は無いに等しいだろう。
 それもこれも『傘』が頑丈になったせいではある。しかし歩く時に邪魔にならないようにと弱く『傘』を差すのは考えものだ。盾代わりに使いたい時にうっかり弱く差しましたじゃ致命傷になりかねない。
 だから別の何か。数を出せて障害物に当たれば消えるような魔法が良い。
 ……選択肢は多くない。

(『鏡』か『ランプ』か……。『鏡』かな)

 ルキアスは『鏡』を選択した。『ランプ』には身体から離して使った経験の乏しさから不安が有るが、『鏡』はザネクとの探索でいつも使っていて慣れている。
 横に細長く、それこそ目に見えないほどに細くした『鏡』を八枚、膝の高さで自分の周り八方に配置する。数が多いほど高い精度を期待できるが、数が多くなれば制御が難しくなる。この程度の数が妥当だろう。そしてこれらは草に当たっただけでも壊れ、ルキアスはそれを知覚可能だ。ゴブリンやコボルトが当たって壊れても同様に知覚できる。鳴子代わりとして十分だろう。
 しかしそうそう上手くも行かない。

(まただ……)

 『鏡』が壊れたので目を向ければ草にぶつかっただけ。これが幾度となく繰り返される。『鏡』を配置し直すのも楽じゃない。

(草にぶつけないようにしなくちゃ)

 ルキアスは草木や石に当たらないように『鏡』をくねらせ、時に上に上げてやり過ごしてからまた戻す。
 その度にうんうん唸るようにもするものだから、ルキアスの前で歩くザネクが肩を震わせもするのだった。
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