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150 周囲の警戒
しおりを挟む現在僕は、ロイ兄さんたちが剣術の練習場を、お茶を啜り、ふかふかの椅子に腰掛けながら眺めている。
確かに遠くても良いと言ったが、流石に少し遠すぎるんじゃ無いだろうか。
「ねぇ、僕もう少し近くで見たいな、ここからじゃロイ兄さん、よく見えないよ……?」
そう言うと、隣に座っていたローレンツ兄さんが即座に眉をひそめた。
「……ダメだ。もしノエルの身に何かあったらどうするんだ?」
この距離を譲らないことは変わりないらしい。僕は口を尖らせたが、すぐに別の提案を思いつく。
「じゃあね、ロイ兄さんのかっこいいところ見せて!そしたらここでちゃんと座ってる!」
ローレンツ兄さんは少し呆れた顔をしたものの、僕の提案を飲む代わりに軽く頭を撫でた。
「それぐらい容易いよ。」
そう言うと、僕の額にキスを落とし、ぎゅっと抱きしめてから軽く回転しつつ立ち上がる。そして練習場へ向かって歩き出した。
「……おぇえ……マジでなんで俺はロイのこんな所見なきゃなんないの……甘すぎて砂糖吐けそう。」
ジラルデさんが腹を押さえながら大袈裟に身をよじると、ローレンツ兄さんがその後頭部を軽く小突いた。
「いって!なにすんだよ!」
「うるさい。さっさと練習に行け。」
「はいはい。」
そう返事をし、手をひらひらと振りながら、ジラルデとローレンツは練習場へと向かって行った。
そんなわけで、僕は椅子に深く座り直し、お茶を飲みながらロイ兄さんたちの練習を眺めている。さっきから何度もロイ兄さんと目が合っている気がするけど……気のせいだよね?だってこの距離だもん。
あ、ロイ兄さんが誰かに頭を叩かれた。
なんだか、いつもと違うロイ兄さんの姿が見られてちょっと嬉しくて、思わず笑ってしまった。
でも、剣を握ると急に真剣な顔になる。やっぱり兄さんたちはすごくかっこいい。僕もいつかはロイ兄さんみたいに筋肉をつけて、剣を扱えるようになるのかな?
そんなことを考えていると、不意に左から聞き慣れない声がした。
「見慣れないお客さんだね。良ければ名前を教えてくれるかな?」
振り向くと、そこには柔らかい笑みを浮かべた一人の青年が立っていた。年はルー兄さんやロイ兄さんとそう変わらないか、少し下くらいだろうか?
「えっと、僕はノ……」
名乗ろうとした瞬間、練習場から大きな声が響いた。
「おいハンス!お前、何度言ったら遅刻せずに来れるんだよ。そろそろ本気で退学の相談に行くか?」
声の主はローレンツ兄さんだった。彼に怒鳴られると、ハンスと呼ばれた少年は、僕に向けていた視線を外し、苦笑いしながらそちらに向かって歩き始めた。
「ごめんなさーい。どうしても行かないでってアンネが……」
「アンネ?先週はロゼだかローズだか言ってなかったか、この野郎……」
「その子たちとはもう終わったよ。」
「……やってられない。」
ローレンツ兄さんは呆れたように額を押さえた。ローレンツ兄さんは僕に目を向けると、先程青年に向けたのとは打って変わって明るい声で言った。
「ノエル、向こうでこいつ以外と昼食を取ろう。今日はサンドイッチがあるよ。」
「サンドイッチ!僕、大好きだよ!」
「へぇ……ノエルって言うのか……」
ハンスさんがまた話しかけようとしたところで、ローレンツ兄さんが「黙れ。」と鋭く遮った。
僕はなんとなく「えっと……ハンスさん?一緒にお昼ご飯、食べないの?」とロイ兄さんに尋ねた。
「ノエルくん、誘ってくれるの?ありがとう。」
そう言って、ハンスさんがノエルの手の甲に軽くキスを落とした。その瞬間、ローレンツ兄さんの顔が一気に険しくなった。
「……お前、後で腕立て、腹筋、500回ずつ、ランニングな。」
「職権乱用ですよ!?マジ勘弁してください!」
ハンスさんは苦笑いしながら反論していたけど、ローレンツは取り合わない。その代わり、呆れ顔のまま僕を片腕でひょいと抱き上げると、昼食が用意された場所へ向かって歩き出した。
「あの…ロイ兄さん、ハンスさんはいいの……?」
「ノエルは優しいな。でも、あんなのは放っておいて問題ないよ。」
ローレンツ兄さんの声はいつも通り冷静だったけど、どこか釘を刺すような響きがあった。僕は項垂れるハンスさんのほうをロイ兄さんの肩越しに見つめた。
確かに遠くても良いと言ったが、流石に少し遠すぎるんじゃ無いだろうか。
「ねぇ、僕もう少し近くで見たいな、ここからじゃロイ兄さん、よく見えないよ……?」
そう言うと、隣に座っていたローレンツ兄さんが即座に眉をひそめた。
「……ダメだ。もしノエルの身に何かあったらどうするんだ?」
この距離を譲らないことは変わりないらしい。僕は口を尖らせたが、すぐに別の提案を思いつく。
「じゃあね、ロイ兄さんのかっこいいところ見せて!そしたらここでちゃんと座ってる!」
ローレンツ兄さんは少し呆れた顔をしたものの、僕の提案を飲む代わりに軽く頭を撫でた。
「それぐらい容易いよ。」
そう言うと、僕の額にキスを落とし、ぎゅっと抱きしめてから軽く回転しつつ立ち上がる。そして練習場へ向かって歩き出した。
「……おぇえ……マジでなんで俺はロイのこんな所見なきゃなんないの……甘すぎて砂糖吐けそう。」
ジラルデさんが腹を押さえながら大袈裟に身をよじると、ローレンツ兄さんがその後頭部を軽く小突いた。
「いって!なにすんだよ!」
「うるさい。さっさと練習に行け。」
「はいはい。」
そう返事をし、手をひらひらと振りながら、ジラルデとローレンツは練習場へと向かって行った。
そんなわけで、僕は椅子に深く座り直し、お茶を飲みながらロイ兄さんたちの練習を眺めている。さっきから何度もロイ兄さんと目が合っている気がするけど……気のせいだよね?だってこの距離だもん。
あ、ロイ兄さんが誰かに頭を叩かれた。
なんだか、いつもと違うロイ兄さんの姿が見られてちょっと嬉しくて、思わず笑ってしまった。
でも、剣を握ると急に真剣な顔になる。やっぱり兄さんたちはすごくかっこいい。僕もいつかはロイ兄さんみたいに筋肉をつけて、剣を扱えるようになるのかな?
そんなことを考えていると、不意に左から聞き慣れない声がした。
「見慣れないお客さんだね。良ければ名前を教えてくれるかな?」
振り向くと、そこには柔らかい笑みを浮かべた一人の青年が立っていた。年はルー兄さんやロイ兄さんとそう変わらないか、少し下くらいだろうか?
「えっと、僕はノ……」
名乗ろうとした瞬間、練習場から大きな声が響いた。
「おいハンス!お前、何度言ったら遅刻せずに来れるんだよ。そろそろ本気で退学の相談に行くか?」
声の主はローレンツ兄さんだった。彼に怒鳴られると、ハンスと呼ばれた少年は、僕に向けていた視線を外し、苦笑いしながらそちらに向かって歩き始めた。
「ごめんなさーい。どうしても行かないでってアンネが……」
「アンネ?先週はロゼだかローズだか言ってなかったか、この野郎……」
「その子たちとはもう終わったよ。」
「……やってられない。」
ローレンツ兄さんは呆れたように額を押さえた。ローレンツ兄さんは僕に目を向けると、先程青年に向けたのとは打って変わって明るい声で言った。
「ノエル、向こうでこいつ以外と昼食を取ろう。今日はサンドイッチがあるよ。」
「サンドイッチ!僕、大好きだよ!」
「へぇ……ノエルって言うのか……」
ハンスさんがまた話しかけようとしたところで、ローレンツ兄さんが「黙れ。」と鋭く遮った。
僕はなんとなく「えっと……ハンスさん?一緒にお昼ご飯、食べないの?」とロイ兄さんに尋ねた。
「ノエルくん、誘ってくれるの?ありがとう。」
そう言って、ハンスさんがノエルの手の甲に軽くキスを落とした。その瞬間、ローレンツ兄さんの顔が一気に険しくなった。
「……お前、後で腕立て、腹筋、500回ずつ、ランニングな。」
「職権乱用ですよ!?マジ勘弁してください!」
ハンスさんは苦笑いしながら反論していたけど、ローレンツは取り合わない。その代わり、呆れ顔のまま僕を片腕でひょいと抱き上げると、昼食が用意された場所へ向かって歩き出した。
「あの…ロイ兄さん、ハンスさんはいいの……?」
「ノエルは優しいな。でも、あんなのは放っておいて問題ないよ。」
ローレンツ兄さんの声はいつも通り冷静だったけど、どこか釘を刺すような響きがあった。僕は項垂れるハンスさんのほうをロイ兄さんの肩越しに見つめた。
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