生活魔法は万能です

浜柔

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147 試射

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 試射。大きめの木の枝を拾って束ねて的として、一発必中狙いの間合いに置く。
 装弾は装填棒のレバーを一杯に引いてから一杯に押し込んで弾丸を銃身に送り込む。この時レバーと弾倉とが極めて接近するため、手をぶつけたり挟んだりしないように注意しなければならない。
 だったら弾倉を左にすればともなるが、銃を地面などに置く際に左側を下にできなくなるのでいただけない。上側を下にしたのでは持ち上げるのに手首を捻らなければならず、下側を下にしたのでは身を屈めなければならなくなる。いずれもいざと言う時にワンテンポ遅れてしまう。
 押し込んだレバーは少し引いて固定位置に倒す。これで装填棒を蒸気漏れを防ぐ栓とする。
 射撃の後、次弾を装填するには倒したレバーを起こし、一杯に引いてから一杯に押し込むことになる。
 そうしてルキアスは的に向けて数発撃ち込んだ。

(ばらつきが酷くなったような……)

 二発に一発が中っていた感覚だったものが三発に一発の感覚になった。

(弾丸の後の方が重くなったからかな)

 ルキアスは弾丸の重心が後にずれたせいで安定しなくなったと予想した。くびれを無くして溝にした影響だ。スカート部分をもっと薄くできれば良いが、弾丸の製造上の問題で不可能なのだ。
 弾丸は型に『捏ね』て押し込んで作る。この型は再利用が前提だ。毎回型から作っていては一日掛かりで弾丸を製造しても数える程しか作れなくなる。それでは本末転倒だ。また再利用する以上、剥がし易くするためにも形状を単純にせざるを得ない。複雑にしてしまっては型から抜けなくなる懸念がある。型を壊さなければならなくなるようでは前提が覆ってしまう。それ故重くなろうとも、外側に溝を作った分だけスカート部分が厚くなるのが避けられなかった。

(だけど今はこうしかできないからなぁ)

 弾丸は以前の形状の方が発射時に安定するから、それを安定して銃身に送り込めるのが理想だ。しかし実現するには更なる工夫が必要になる。具体的には必要な時だけ弾丸の間にへらを差し込む機構。弾倉に弾を籠める際に試したアレを自動で行う訳だ。ところがそれを実現させるよりも回転式を実現させた方が早いだろう。
 だから今はこのスタイルのまま、射撃距離や射撃姿勢などの別の方面から精度を高める方向を模索する。
 あまり拘ってはいられないのだ。切実な問題としてルキアスはここ二日間収入が無い。最優先の由々しき問題だ。
 そして概ねの感覚を掴んだ後、ルキアスはホーンラビットを少し多めに狩って一日を終えた。
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