生活魔法は万能です

浜柔

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148 第二階層での目標

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 銃の改造を終えた翌日。ルキアスは一日狩りに勤しんだ。戦術を変えたせいか、命中率の低下は問題にならずにこれまでの数の倍を上回るホーンラビットを狩った。収入の遅れがほぼ取り戻せた恰好だ。
 日が暮れる頃にはもう無料宿泊所に引き上げていたところにザネクが訪ねて来た。

「よう」
「ザネク! もう身体は大丈夫なの?」
「お陰様でな。もう脚も治ったし、体調もばっちりだ」

 脚の傷は手持ちの魔法薬が足りなかっただけだから、ダンジョンから出て直ぐに治せた。しかし発熱の影響は長引いてしまい、完治に数日を要してしまった。
 ただ今日に限ればリュミアの意見を容れた大事を取っての休養だった。ロマが聞いたなら「また過保護にして」と苦笑を漏らすことだろう。
 しかしルキアスはそんな気の回し方をしない。素直に喜ぶだけだ。

「良かった!」
「おう。それで明日からどうするか相談しようと思ってな」
「ちょうど第二階層に行こうと思ってたところだよ」
「お、そいつは良かった。俺は暫くホーンラビットを見たくないからな」

 そう言ってザネクはにやりと笑い、これにはルキアスも苦笑する。

「何となく解るよ。ぼくも狼がちょっと苦手だから」
「だろ?」

 ザネクは声を上げて笑った。




 翌朝。ルキアスとザネクは第二階層に降り立った。

「ルキアス、この階層での目標は有るか?」

 入って何歩も進まない内にザネクがルキアスに尋ねた。
 ハッと目を見開いて、ルキアスの足が止まる。

「特に考えてなかった……」
「目標を立ててないと次の階層に行くタイミングに悩むぞ」
「確かにそうだよね」

 漠然と階層に挑むだけでは半ば惰性でホーンラビットを狩っていた第一階層の再現をするだけだ。ルキアスは腕組み考える。

「別に今決める必要は無いぞ」
「ううん。決めたよ! オークを安定的に倒せるようになるのと、ゴブリンやコボルトの攻撃を受けないことにする」

 第二階層のオークは力が強くても隙だらけなのだから、軽くあしらえるくらいでなければこの先の階層での戦いが不安だ。ゴブリンやコボルトについても、これら程度の隠密性を看破できないようだと隠密性や攻撃力のより高い魔物に対して不安が残る。転ばぬ先の杖でこれらはクリアしておくべきだろう。そしてクリアした時にはぐずぐずせずに次の階層に挑む。
 ルキアスがそんな説明をすると、ザネクは「いいんじゃないか?」と頷いた。
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