生活魔法は万能です

１４１ 戦術変更

　ルキアスがリュミアに出された課題はクリアとなった。ルキアスとザネクから話を聞き、ルキアスが夜間に一二羽、帰りしなに三羽の合計一五羽倒したホーンラビットを見せられ、更にメイナーダやロマの口添えもあるとなればリュミアも認めざるを得なかった。
　だがルキアスは次の階層に進むのを後回しにしている。先に銃の発射間隔を短縮しなければこの先命取りになりかねない。だからその実現に取り組もうと考えている。
　尤も、生活費も稼がなければならないのでダンジョンに通った余りの時間でになってしまうのが玉に瑕である。
　そんな訳で朝からはダンジョンへと一人、ホーンラビットを狩りに向かう。ザネクは休養だ。
　早速ホーンラビットを見付けた。

（ここは『傘』を信頼して……）

　これまでに数多く盾代わりに使っていたせいか、ルキアスの『傘』は奇妙なまでの耐久性を備えるようになった。ホーンラビットの突撃を正面から受けられる程だ。

（『傘』って案外、盾系の魔法なのかも知れないし）

　雨粒を防ぐだけなら盾のような強度を必要としない。それならばと弱くても誰にでも使えるようにアレンジされたのが『傘』ではないかと考える。
　これはあくまで想像だ。しかし各生活魔法の発祥に思いを寄せたら強ち的外れでもないように感じられるルキアスだった。
　ともあれ攻撃を防ぐ方法があるなら逃げに徹する必要が無いので戦術を変えられる。
　今まではホーンラビットに逃げられないように身を隠しながら近付き、一撃で倒すか逃げるかの選択だった。それを今日からはもっと遠間から狙ってホーンラビットの注意を引き付け、『傘』で足止めする間に次弾を準備、近間で仕留める。
　そして銃の射程ギリギリの辺りで狙いを定め、引き金を引く。
　外れた。それも結構派手にだ。
　しかしそれでもホーンラビットには狙われたのが判るのか、ルキアスに角を向けて走り出す。
　ルキアスは息つく間も無く蒸気タンクに少なめに注水して『加熱』を始め、弾丸を籠める。

「『傘』！」

　『傘』の間合いのギリギリにホーンラビットが避けられないタイミングで『傘』を差す。ゴンと言う音と共にホーンラビットの足が止まる。『傘』は健在だ。
　そしてこれだけでもう次弾が間に合った。ホーンラビットが『傘』を回り込むのを狙って引き金を引く。
　命中だ。

（向こうから来てくれると楽だ……）

　ホーンラビットから近付いて来るなら神経を磨り減らしながら忍び寄る必要が無い。発見から狩るまでの時間も大いに短縮される。
　昼前に一日の目安にしていた数を狩り終えたルキアスであった。