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139 明け
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「『傘』!」
ルキアスは投機的にテントの反対側へ『傘』を張った。
ルキアスがホーンラビット五羽を同時に注意を引き付けるのは不可能だ。攻撃が単発である以上、一羽ずつしか引けず、引く前のホーンラビットからテントが攻撃されるのは避けられない。これで下手に全部引こうとすると、攻撃を避けるのに気を取られてテントの守りが疎かになってしまうだろう。
だからテントを守りつつ一羽ずつ仕留めようと考えた。守るなら、見えない反対側が優先される。
こんな方針が立てられるのもホーンラビットとの戦いの最中に『傘』が急激に頑丈になったためだ。壊されても足止めにはなる。助走を挫いてしまえばいきなりテントを貫かれたりはしない。
ルキアスはテントを襲う素振りのホーンラビットの中からテントが射線に入らない一羽へ向けて引き金を引く。
命中。ここに来て集中力の高まったルキアスは狙いを外さなかった。
しかし喜ぶ暇を惜しんで次弾を準備する。『傘』や銃撃に阻まれなかったホーンラビットはテントに突き刺さっているのだ。喜んでなどいられない。
「『傘』!」
一旦テントから離れて助走し直したホーンラビットに合わせ、ルキアスは『傘』を張る。これでひとまずを凌いだら、また見えないテントの向こう側へと投機的に『傘』を張る。
「『傘』!」
そして見えているホーンラビットへ向けて引き金を引く。
外した。ホーンラビットが向きを変える。
だがルキアスは慌てない。距離を見極めながら次弾を準備する。銃は近い方が中てやすいのだ。『傘』で他のホーンラビットを牽制しながら逃げ回り、準備が整い次第引き付けて、引き金を引く。
命中。直ぐにまた次弾を準備する。
この間にもテント布には穴が幾つも増えているが、どうにかホーンラビットの内部への侵入は阻めている。
ルキアスは更に集中力を高めた。
「はっくしょい!」
ザネクは自分のくしゃみで目を覚ました。周りを見れば、自分が寝かされているのは穴だらけの布に囲まれた狭い場所。穴からは青空が覗いている。
ここがテントの中だと当たりを付けると、怪しい記憶を辿って自分が気を失ったのを思い出す。「ルキアスに面倒掛けちまったなぁ」と独りごち、テントから這い出てみれば直ぐ近くでルキアスが船を漕いでいる。
「ルキアス。おい、ルキアス」
肩を揺すって呼び掛ければ、程なくしてルキアスは目を覚ました。
「わっ! しまった! ホーンラビットは!?」
ルキアスは弾けるように体勢を整え、銃を構える。
ザネクも周囲を見回すが、これと言った異変は見当たらない。
「居ないみたいだぞ」
「え? あ! ザネク! 気が付いたんだ! 良かった! もう大丈夫なの?」
ルキアスは今更ザネクに気付いたらしい。それに少々テンションが高い。徹夜明けのテンションだと何となく見て取れる。
「お陰様でな。歩くくらいならへっちゃらだ。それとさ、憶えてないんだが、昨日はありがとうな」
「何でもないよ! このくらい!」
そう言ってルキアスは照れた。お礼を言うのは多いが言われるのは少ないので慣れていない。そんなルキアスが微笑ましくなって、ザネクは「何照れてんだよ」と笑う。
「まあ話は帰った後にして早く帰ろうぜ? まだちょっとしんどくてな」
「そうだね! ぼくも疲れたよ!」
ルキアスはテントを手早く片付け、ザネクと共に出発した。
ルキアスは投機的にテントの反対側へ『傘』を張った。
ルキアスがホーンラビット五羽を同時に注意を引き付けるのは不可能だ。攻撃が単発である以上、一羽ずつしか引けず、引く前のホーンラビットからテントが攻撃されるのは避けられない。これで下手に全部引こうとすると、攻撃を避けるのに気を取られてテントの守りが疎かになってしまうだろう。
だからテントを守りつつ一羽ずつ仕留めようと考えた。守るなら、見えない反対側が優先される。
こんな方針が立てられるのもホーンラビットとの戦いの最中に『傘』が急激に頑丈になったためだ。壊されても足止めにはなる。助走を挫いてしまえばいきなりテントを貫かれたりはしない。
ルキアスはテントを襲う素振りのホーンラビットの中からテントが射線に入らない一羽へ向けて引き金を引く。
命中。ここに来て集中力の高まったルキアスは狙いを外さなかった。
しかし喜ぶ暇を惜しんで次弾を準備する。『傘』や銃撃に阻まれなかったホーンラビットはテントに突き刺さっているのだ。喜んでなどいられない。
「『傘』!」
一旦テントから離れて助走し直したホーンラビットに合わせ、ルキアスは『傘』を張る。これでひとまずを凌いだら、また見えないテントの向こう側へと投機的に『傘』を張る。
「『傘』!」
そして見えているホーンラビットへ向けて引き金を引く。
外した。ホーンラビットが向きを変える。
だがルキアスは慌てない。距離を見極めながら次弾を準備する。銃は近い方が中てやすいのだ。『傘』で他のホーンラビットを牽制しながら逃げ回り、準備が整い次第引き付けて、引き金を引く。
命中。直ぐにまた次弾を準備する。
この間にもテント布には穴が幾つも増えているが、どうにかホーンラビットの内部への侵入は阻めている。
ルキアスは更に集中力を高めた。
「はっくしょい!」
ザネクは自分のくしゃみで目を覚ました。周りを見れば、自分が寝かされているのは穴だらけの布に囲まれた狭い場所。穴からは青空が覗いている。
ここがテントの中だと当たりを付けると、怪しい記憶を辿って自分が気を失ったのを思い出す。「ルキアスに面倒掛けちまったなぁ」と独りごち、テントから這い出てみれば直ぐ近くでルキアスが船を漕いでいる。
「ルキアス。おい、ルキアス」
肩を揺すって呼び掛ければ、程なくしてルキアスは目を覚ました。
「わっ! しまった! ホーンラビットは!?」
ルキアスは弾けるように体勢を整え、銃を構える。
ザネクも周囲を見回すが、これと言った異変は見当たらない。
「居ないみたいだぞ」
「え? あ! ザネク! 気が付いたんだ! 良かった! もう大丈夫なの?」
ルキアスは今更ザネクに気付いたらしい。それに少々テンションが高い。徹夜明けのテンションだと何となく見て取れる。
「お陰様でな。歩くくらいならへっちゃらだ。それとさ、憶えてないんだが、昨日はありがとうな」
「何でもないよ! このくらい!」
そう言ってルキアスは照れた。お礼を言うのは多いが言われるのは少ないので慣れていない。そんなルキアスが微笑ましくなって、ザネクは「何照れてんだよ」と笑う。
「まあ話は帰った後にして早く帰ろうぜ? まだちょっとしんどくてな」
「そうだね! ぼくも疲れたよ!」
ルキアスはテントを手早く片付け、ザネクと共に出発した。
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