普通を貴方へ

涼雅

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花束

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「いらっしゃいませ…あ、舞桜」

本当に来てくれたんだ、と微笑む雅空さん

「勿論ですよ。

 これから実家に帰るんです

 だから、花束を作ってもらいたくて」

花に囲まれながらそう言うと、じゃあ、と彼は質問を発した

「じゃあ、どんな花束がいいか教えて?」

どんな花束…。

特に想像もしていなかったからポンと言葉が出てこない

うーん…と唸ると、雅空さんが花を一輪持って近づいてくる

「例えば、青色が中心、とか。黄色系統、とか。大きく見えるようにとか、小さい感じがいいとか。

 あとは、好きなお花、とか。」

ちなみに俺は、このかすみ草が1番好き。

そう言いながら手にしている花をこちらに向けてくれる

小さい白い花が華奢な枝の先に咲いている、可憐な花だ

「…これに合う花束にしてください」

気が付けばそう口走っていた

雅空さんの好きな花で構成された花束。

それが見てみたくなった

かすみ草を持つ彼の手に軽く手を重ねると、少し驚いたあと、ふわりと笑ってくれた

「うん、わかった。かすみ草が中心の花束ね

 …白いから、何色にも合わせやすいよ」

僕の手からするりと抜け出して、色とりどりの花が生けてあるショーケースのドアを開ける

いくつか取り出すと、軽くまとめながら見せてくれた

「かすみ草と、青系のお花で、どうかな…?」

「…素敵です」

少し憂い気で目を伏せながら問いかける雅空さんに、真っ直ぐな感想が飛び出る

「よかった。じゃあ作っちゃうね」

よかったらお店の他のお花でも見て待ってて。

そう言い残して作業台へと向かっていった

言われた通りに花を物色する

思えば、こんなにまじまじと花を見るのは久しぶりだ

誰かに花束を贈るのもはじめてだ。

雅空さんがハサミを使う音を聞きながら、はじめての感覚に少しくすぐったくなる。

なんか、この花雅空さんに似てるかも

淡い青色で凛としつつも可憐な雰囲気が似てる

あ、これは兄にそっくり

赤い大輪の花は行動的で破天荒な兄を想像させる

母はこれだ

小さいながらも元気な黄色が芯のある母と重なった。

そうこうしてる間に作業台からハサミの音がしなくなった

しばらくして花束を抱えた雅空さんが現れる

完成予想として軽くまとめて見せてくれたものから、完璧な花束となったそれはとても綺麗だ

はっと目を引く黄色。

完成予想の時にはなかった黄色の花が入っていた

その花は先程僕が母に似ていると思っていたものだった

雅空さんは眉を下げて、いつもより低いトーンで、らしくないことを呟いた

「気に入ってもらえれば、いいんだけど」

あぁ、なんでそんなに自信が無いんだ

思わず、花束を抱える雅空さんの手を握る

「素敵です」

この気持ちが伝わるように、目を見つめて

ぎゅっと手に力を込めると嬉しそうに笑みを浮かべた

「そっか…良かった」

いま、この花束の良さを伝えたいけれど、もう電車の時間が迫っていることに気がつく

お金を払ってから雅空さんにもう1度

「素敵です」

そう伝えて店を後にした
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