普通を貴方へ

母親

「ただいま」

帰ってくるのが久しぶり過ぎるせいだろうか。

玄関のドアを開ける手が震えた

花束を抱えた状態で声を張れば、すぐにリビングからこちらへやってくる足音が聞こえてくる

「おかえりなさい、えらく久しぶりじゃない？」

母は変わらず元気なようで、笑顔で出迎えてくれた

「うん、そうだね。

　なかなか帰って来れなくてごめん」

いつもと同じような笑顔にちょっと罪悪感。

「あら、その花束どうしたの？」

「あぁ、これ。

　よかったら、どうかなって。

　向こうでできた…」

花束を母に渡しながら言葉に詰まる

向こうでできた、知り合い？

友人？

理由もなく、雅空さんとの関係性に疑問を持った

ただの友人であるはずなのに、何故か友人とは言いきれないような、割と曖昧な関係性…？

「舞桜…？」

不思議そうに首を傾げる母になんでもない様にぱっと笑いかける

「向こうでできた、友人、に作ってもらった花束なんだ。

　その人、かすみ草が好きみたいで、それに合うように作ってもらったんだけど、ほら、この黄色い花

　…お母さんに似てるなって思ってたら、雅空さんがそれに気がついてくれて入れてくれたんだ」

「あら、雅空さんって言うのね

　本当に綺麗だわ…素敵な花束を作る方なのね」

うっとり花束を見とれる母にほっと息をつく

喜んでもらえてよかったのと同時に、雅空さんが作ってくれた花束を褒めてもらえたことが、自分の事のように嬉しかった