「そうだ、結婚しよう!」悪役令嬢は断罪を回避した。

ミズメ

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05 熱

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「ロズニーヌ、他には?」

「条件でございますか……? 義務的でも、私だけを見てくださる方がいいです。浮気をされたら、即刻離縁します」

「ふむ、その点も問題はない」

「子供も欲しいので、幼子にも優しい方がいいです……あ、でも場合によっては白い結婚でもオッケーなので、そのあたりは条件をお互いに擦り合わせつつ!」

「ゲホゲホッ!!!!」

「大丈夫ですか!? ルーナ、エヴァン様にお茶をお持ちして!」

「はい、ただいま!」

 急に咳き込んでしまったエヴァン様に、侍女が急いでお茶を用意する。
 私はそのスペースを作るために、広げていた釣書を急いで片付けることにした。

 わしゃっとまとめて積み重ねて、元の木箱に戻す。あっという間に完了だ。

「エヴァン様、こちらにお掛けになってください。喉を潤しましょう」

「あ、ああ……すまない」

 エヴァン様を長椅子に案内して座っていただいた後、私も向かいの椅子に座った。

 エヴァン様は長椅子に腰を下ろしたものの、どこか落ち着かない様子だった。
 背筋は伸びているのに、手元で拳をぎゅっと握ったり開いたりしている。

「……エヴァン様?」

 私が首を傾げると、エヴァン様は大きく息を吐き、真剣な眼差しでこちらを見つめた。

「単刀直入に言う。ロズニーヌ。俺と結婚してくれないか」

「……え?」

 突如として飛び出した言葉に、思考が一瞬停止する。

「け、結婚……?」

「そうだ。俺は君と夫婦になりたい」

「えっと、それって……どういう意味でしょうか?」

「そのままの意味だ。俺は君を妻にしたい」

 まっすぐな言葉に、頭の中が混乱する。

 エヴァン様と私が結婚……?
 確かにこうしてお話しするのは楽しいし、筋肉は目の保養だし、彼が女性を侍らせているという話を聞いたことはない。

 なんなら、女性の話がなさすぎて、ワンチャンうちのお兄様とあれなんじゃないかって噂も腐茶会で話題だったような……?

「だ、だって……エヴァン様って、結婚を考えていなかったのでは?」

「……っ!」

 エヴァン様はわずかに歯を食いしばり、顔をしかめた。
 そう。エヴァン様が令嬢にアプローチされてもすぐにお断りするという話は私も知っていた。
 婚約者もいらっしゃらないし、生涯独身だと言っていたという説もあった。

 だからこそ、ロマンス好きの夫人たちの話のタネになっているんだけど。


「考えていなかったわけではない。だが、君は王太子の婚約者候補筆頭だったし、俺がどうこう言える立場ではなかった」

「え?」

「だから、ずっと諦めていたんだ。それなのに、君が突然、婚約者候補を辞退して釣書を集めていると聞いて……」

 エヴァン様はそこで言葉を切り、手をぐっと握る。

「君に相応しいのは、王族や公爵家の令息だと思っていた。だが、いざ君が縁談を募っていると聞いて、居ても立ってもいられなくなった。……このまま何もせずにいたら、君が他の誰かと結婚してしまうと思うと――耐えられなかった」

「……っ!」

 胸の奥がきゅっと締めつけられる。
 エヴァン様の眼差しは真剣だ。兄の友人としての朗らかな表情ではなく、そこには確かに熱がある。

「だから俺はこうしてここに来た。ロズニーヌ、誰でもいいというのであれば、俺を選んでほしい」

 エヴァン様の瞳は真剣で、一切の迷いがなかった。

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