異世界神話をこの俺が!?――コンプレックスを乗り越えろ――

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)

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第0章 これが始まりの物語

4.便利なアイテム

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 俺をここへと連れてきたトランが帰り、役人は俺に向かって胸に手の平を当ててペコリと一礼すると丁寧に自己紹介をしてきた。

「わたくしはフェンネル領はサントルで租税役人の職に就いておりますアルテロ・デェッラ=クルムと申します。どうぞ“アル”とお呼びください。」

「俺はルカと申します。」

「ではルカ様、これからサントルの街まで行き、祈りを捧げて“記憶”を手に入れた後に領都であるフェンネルまでお連れしたいと思います。記憶喪失の神官様を見つけたら必ず領主様や神殿に報告に行かなければなりません。その為に領主様の許までご一緒して頂く事になりますので…よろしくお願いします。」

「は、はぁ……分かりました。ところでアルさん、『記憶を手に入れる』って、何ですか?」

 ここまで来たし、俺はとりあえず大きな街に行けば何か分かる事もあるかなと思っていたので了承をした。
 だが『記憶を手に入れる』という少し意味の分からない言葉を言われたので、聞いても怪しまれないかなと少しビクビクしながらも質問してみた。

「首から下げているネックレスに付いた宝石があるでしょう? その石は“聖なる天空”と呼ばれ、誰もが生まれた直後から肌身離さず身に着け、持ち主の記憶を保存し続けていくものなのです。一般的には身分証として使うぐらいなものです。しかし巨大な力を持つ神官職の方しかすることがありませんが魔力を極度に消費し、枯渇した後に起こる記憶喪失を治す為に行われる祈りの儀式に使われる物でもあるのです。」

 記憶喪失だと思われているという事もあってか、そう言ってアルテロは自分の首に下げたネックレスを指し示して丁寧に教えてくれた。
 言われた通り、確かめてみると俺の首にも同じラピスラズリの様な、深い青い色の中に小さな白い星がたくさんある石の付いたネックレスがぶら下がっていた。
 これはパソコンとかで使うSDやCD-ROM等の外部記憶装置みたいなものなのだろうか…。
 便利な物があるものだなと、青い石を摘まみ上げてしげしげと見つめていると、キラキラと石の中にある小さな星たちが光り、その中から今にも消えそうな小さな声が聞こえてきた。

「…早く……教会、へ………。」

 その声に驚き、石に意識を吸い取られたような感覚を覚えて一瞬体が固まったかと思った後にパッと我に返り、「いや、まさか…な……」と思い首を横にブンブンと振っていると村長が俺の方に近寄ってきて話しかけてきた。

「神官様、何かございましたか? 具合でも悪くなったのですか?」

 村長も役人も俺の顔を見て首を傾げていたので焦って笑顔で答えた。

「大丈夫! 大丈夫です!!」

「それならいいのですが…。神官様方の様に訓練をなされている方でも、極度の魔力の枯渇による記憶喪失による不安症状にかられ、稀にですが……狂って自ら命を絶ってしまう方がいらっしゃるといわれていますので…心配です………。」

 村長にそう言われ、俺もそういう危なそうな状態に見えるほどなのかと気になった。
 それでトランも、ここに居る村長も役人も、俺が傍目にはボーっといている様な状態になっているとやたらと心配そうに俺の顔を窺ってきていたのか……。

「村長、ルカ様はどうやら体の具合も大丈夫な様なので、このまますぐにサントルの教会へ行く為にこれで失礼する。調査は済んだので、税の徴収額についてはおって後でまた使いをやって知らせる。」

「かしこまりました。」

 村長はアルテロの話に深々とおじぎをして答えた。
 2人での話が済むとアルテロは俺の横を通り過ぎ、ドアを開けて外に居るらしい従者に大声で指示を出していた。

「予定よりも少し早いがもうサントルの街へと帰る。急いで戻らねばならん。馬車の準備をしておけ!」

 少し遠くで「は、はい~い!」という返事が聞こえてきた。
 アルテロは俺の方へと向き直ると3秒程ジッと目を見た後にニコリと笑顔になり、その次に村長の方を向いた。

「村長! 出る前に魔力異常回復茶パルゥナ・ティーを持って来い。ルカ様の事がやはり少々心配だから1杯飲んだ後に出る事にする。」

「はい! 只今、持ってまいります。」

 村長は返事をするとお茶を淹れに台所らしき方へと消えていった。

「ルカ様、お茶を一杯飲んでから出るとしましょう。気休めにしかならないかもしれませんが…教会までの時間を考えると長い間、記憶喪失という魔力のバランスが欠いたままの状態でいるのは危ないと思われますので…。ここを出る前に魔力異常回復茶パルゥナ・ティーを飲んで少しでも落ち着かせておきましょう。」

 それから数分後、トレイにティーポットとカップを2つ載せて村長が戻ってきた。
 そしてさっきまで村長とアルテロが話をしていた机にトレイを置き、カップの中にお茶を注ぐと「どうぞ。お茶が入りましたよ。」と声をかけてきた。
 アルテロと俺は呼ばれた方へと行き、カップを手に取ると注がれたお茶をゴクッゴクッと飲んだ。

「う~ん……。やはり下級品は魔力があまり含まれていない分、いまいちだな。まぁ、平民の家にこれ以上の物があるとは期待してはいなかったが…。無いよりはマシか。」

 そうしてお茶を飲み終わる頃にこの家のドアがノックされ、外からまたアルテロの従者らしき人の声が聞こえてきた。

「失礼します、クルム様。馬車の準備が整いました。もういつでも出発できます。」

「そうか。分かった、今行く。」

 アルテロが従者に返事をしてすぐ、俺はアルテロと共に村長の家をあとにした。
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