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第0章 これが始まりの物語
3.親切?…な人
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「う~ん…なんだよ~。うるさい!」
普段寝起きには聞くことが無い様な、金属が何かにぶつかる様な音などがガチャガチャとうるさく、その不快感から目が覚めた。
「お、おはようございます。うるさかったですか? 朝から申し訳ございません…。」
「あっ、いや…。」
ベッドからのそりと起き上がると開けきらない目を擦り、目の前にある光景にため息をついた。
…夢じゃ、なかったのか……と。
声のする方へと目をやると、今日は窓が開けられて室内が明るかったので、トランが少し緊張して僅かに引きつった様な笑顔を俺に向けていたのが見えた。
耳障りな音に思わず起きしなに大きな声を上げてしまったせいで少々怯えさせてしまったらしい。
「おはよう。」
俺は申し訳なさからニコリとぎこちない笑顔で挨拶を交わすと、部屋の向こうから温かいお湯が入って湯気がほわほわとたったホーロー製っぽい洗面器を持ってきてベッド脇の机に置かれた。
「朝のお仕度をどうぞ。顔を拭く布はこんなものしかありませんが…。」
そう言って渡された布は見慣れたタオルとは違い、生成り色をした木綿の手ぬぐいみたいだった。
顔を洗い、靴を履き、その横にある壁のフックに掛けておいたローブを羽織り身支度を整えていると目の前に見えるテーブルには朝ごはんが用意されていた。
ハマチとアジの間の様な味をした魚の燻製とチーズの挟まれたサンドイッチと温かいお茶だった。
夕食の後に昨晩も飲んだこのお茶は、何故か飲むと心を穏やかに落ち着かせてくれた。
「このお茶、美味しいな…。」
お茶の入ったカップの底を見つめながら自然と呟いていた。
「下級品ではありますが、魔力の濃い場所で栽培された魔力異常回復茶ですからね。このお茶を飲むと体の中でバランスを崩した魔力が安定し、不安な気持ちや疲労感も回復してくれると言われていますし…。だいぶ落ち着かれたんじゃないですか?」
パルゥナ・ティー…、ハーブティーの類だろうか……。
「さて、と……役人へ貴方様のことを説明もしなければならないですし、そろそろ村へ行きましょう。」
トランは手早く火の始末を終え、開けていた窓を閉めると外へと出て、戸を開けたまま押さえ、どうぞとばかりに手の平を上に向けて外の方向へ差し出した。
それに促されて俺も一緒に外へと出ると眩しく輝く太陽の様な恒星の照らす空を見上げた。
いったい何故ここに俺は居るのか…。
「どうされましたか?」
「いや……、なんでもないよ。」
空を見上げたまま眉を曇らせている俺を心配してトランが声をかけてきた。
「記憶が無くて不安なのでしょうが教会にいくまでの辛抱です。きっと大丈夫ですよ」
教会に何があるというのだろうか…。
神官だと間違われている様だから身元が分かるであろう教会に連れていかれるだけなのかな。
でもここが俺の知らない場所だとすると身分不明となってトラブルになりそうな気がするが…。
そんな風にブツブツと考えながらトランの後ろについて歩いていると、あっという間に村に着いた。
「おはよう、ラーナさん。昨日から来てる役人って今どこに居ます?」
「おはよう、トラン。役人なら今は奥にある村長の家で話をしているところだと思うけど…その後ろに居る方は神官様じゃないかい?」
村に着いてすぐの所にある井戸のそばで、洗濯をしていたラーナと呼ばれる女性とトランが親し気に話し始めた。
「そうなんだ。昨日家に帰ったら中で寝ていたんだ!ビックリしたよ。どうやら記憶喪失みたいなんだよね。」
「そうか、それで役人を…。」
「そういうことだからさ、早く役人の所に行ってくるよ。」
「あぁ、行ってらっしゃい。」
ラーナはにこやかに俺たちを見送った。
村に入ってから2~3分の間に、表に出ていた村人をラーナと呼ばれた女性以外に数人見つけた。
だがニコリと挨拶をしようとしたが、真っ黒いなりをした俺に気が付くと皆ビクッとなってどこかへと消えてしまった。
奥まで歩き、一軒の大きめの石造りの家の前に着くとトランはコンコンとノックをした。
「おはようございます、村長、お役人様。急ぎでお知らせしなければならない事がございます。」
中から入れという声が聞こえてきたのでドアを開け、中へと入るとトランが一礼をしたので俺もそれに倣った。
「お役人様。昨日の夕方、記憶喪失らしき神官様が突然私の小屋においでになっていたのでお連れしました。夜道は危ないと思い、お連れするのが翌朝と遅くなって申し訳ございません。」
お役人様と呼ばれた少々豪華な身なりをした青年は振り返って、俺の事を足先から頭の天辺までジーっと何かを探すように舐め回すように見てきた。
「ふむ、スパイではないようだな…。」と顔を俯けたままボソリと言うと、パッと顔を上げて和やかにわざとらしいぐらいの笑顔で話しかけてきた。
「これはこれは神官様。記憶喪失とはさぞやお困りでしょう。わたくしが馬車で教会へとお送りします。そこのトランとやらも神官様は私が責任をもって教会へとお連れするので安心しろ。」
役人はトランの肩をポンッと軽く叩くと「褒美だ」といって金貨を2枚渡した。
記憶喪失の神官を役人の許へと連れて行くとお金が貰えるのか…。
それで俺の事を記憶喪失だと思ってからトランは嬉しそうだったのかとそこで分かった。
「ありがとうございます。」
トランは役人にお礼を言うと俺にペコリと一礼し、踊る様な足取りで帰っていったのが見えた。
普段寝起きには聞くことが無い様な、金属が何かにぶつかる様な音などがガチャガチャとうるさく、その不快感から目が覚めた。
「お、おはようございます。うるさかったですか? 朝から申し訳ございません…。」
「あっ、いや…。」
ベッドからのそりと起き上がると開けきらない目を擦り、目の前にある光景にため息をついた。
…夢じゃ、なかったのか……と。
声のする方へと目をやると、今日は窓が開けられて室内が明るかったので、トランが少し緊張して僅かに引きつった様な笑顔を俺に向けていたのが見えた。
耳障りな音に思わず起きしなに大きな声を上げてしまったせいで少々怯えさせてしまったらしい。
「おはよう。」
俺は申し訳なさからニコリとぎこちない笑顔で挨拶を交わすと、部屋の向こうから温かいお湯が入って湯気がほわほわとたったホーロー製っぽい洗面器を持ってきてベッド脇の机に置かれた。
「朝のお仕度をどうぞ。顔を拭く布はこんなものしかありませんが…。」
そう言って渡された布は見慣れたタオルとは違い、生成り色をした木綿の手ぬぐいみたいだった。
顔を洗い、靴を履き、その横にある壁のフックに掛けておいたローブを羽織り身支度を整えていると目の前に見えるテーブルには朝ごはんが用意されていた。
ハマチとアジの間の様な味をした魚の燻製とチーズの挟まれたサンドイッチと温かいお茶だった。
夕食の後に昨晩も飲んだこのお茶は、何故か飲むと心を穏やかに落ち着かせてくれた。
「このお茶、美味しいな…。」
お茶の入ったカップの底を見つめながら自然と呟いていた。
「下級品ではありますが、魔力の濃い場所で栽培された魔力異常回復茶ですからね。このお茶を飲むと体の中でバランスを崩した魔力が安定し、不安な気持ちや疲労感も回復してくれると言われていますし…。だいぶ落ち着かれたんじゃないですか?」
パルゥナ・ティー…、ハーブティーの類だろうか……。
「さて、と……役人へ貴方様のことを説明もしなければならないですし、そろそろ村へ行きましょう。」
トランは手早く火の始末を終え、開けていた窓を閉めると外へと出て、戸を開けたまま押さえ、どうぞとばかりに手の平を上に向けて外の方向へ差し出した。
それに促されて俺も一緒に外へと出ると眩しく輝く太陽の様な恒星の照らす空を見上げた。
いったい何故ここに俺は居るのか…。
「どうされましたか?」
「いや……、なんでもないよ。」
空を見上げたまま眉を曇らせている俺を心配してトランが声をかけてきた。
「記憶が無くて不安なのでしょうが教会にいくまでの辛抱です。きっと大丈夫ですよ」
教会に何があるというのだろうか…。
神官だと間違われている様だから身元が分かるであろう教会に連れていかれるだけなのかな。
でもここが俺の知らない場所だとすると身分不明となってトラブルになりそうな気がするが…。
そんな風にブツブツと考えながらトランの後ろについて歩いていると、あっという間に村に着いた。
「おはよう、ラーナさん。昨日から来てる役人って今どこに居ます?」
「おはよう、トラン。役人なら今は奥にある村長の家で話をしているところだと思うけど…その後ろに居る方は神官様じゃないかい?」
村に着いてすぐの所にある井戸のそばで、洗濯をしていたラーナと呼ばれる女性とトランが親し気に話し始めた。
「そうなんだ。昨日家に帰ったら中で寝ていたんだ!ビックリしたよ。どうやら記憶喪失みたいなんだよね。」
「そうか、それで役人を…。」
「そういうことだからさ、早く役人の所に行ってくるよ。」
「あぁ、行ってらっしゃい。」
ラーナはにこやかに俺たちを見送った。
村に入ってから2~3分の間に、表に出ていた村人をラーナと呼ばれた女性以外に数人見つけた。
だがニコリと挨拶をしようとしたが、真っ黒いなりをした俺に気が付くと皆ビクッとなってどこかへと消えてしまった。
奥まで歩き、一軒の大きめの石造りの家の前に着くとトランはコンコンとノックをした。
「おはようございます、村長、お役人様。急ぎでお知らせしなければならない事がございます。」
中から入れという声が聞こえてきたのでドアを開け、中へと入るとトランが一礼をしたので俺もそれに倣った。
「お役人様。昨日の夕方、記憶喪失らしき神官様が突然私の小屋においでになっていたのでお連れしました。夜道は危ないと思い、お連れするのが翌朝と遅くなって申し訳ございません。」
お役人様と呼ばれた少々豪華な身なりをした青年は振り返って、俺の事を足先から頭の天辺までジーっと何かを探すように舐め回すように見てきた。
「ふむ、スパイではないようだな…。」と顔を俯けたままボソリと言うと、パッと顔を上げて和やかにわざとらしいぐらいの笑顔で話しかけてきた。
「これはこれは神官様。記憶喪失とはさぞやお困りでしょう。わたくしが馬車で教会へとお送りします。そこのトランとやらも神官様は私が責任をもって教会へとお連れするので安心しろ。」
役人はトランの肩をポンッと軽く叩くと「褒美だ」といって金貨を2枚渡した。
記憶喪失の神官を役人の許へと連れて行くとお金が貰えるのか…。
それで俺の事を記憶喪失だと思ってからトランは嬉しそうだったのかとそこで分かった。
「ありがとうございます。」
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