愛され女は、秘されたギフトを惜しまない

月山 歩

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8.誘拐未遂

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 アリスとサーシャは刺繍糸を買って、孤児院に帰ろうと歩いていた。
 店が連なる昼間のこの通りは、女性や子供達も安全に通ることができる道だった。

 しかし、建物の隙間から突然、筋肉隆々のガタイの大きな男が、

「騒ぐんじゃねぇ。」

 と言って、アリスを抱えて走り出した。

 咄嗟のことでなすがままのアリスだったが、ハッと正気にもどり、何とか逃げようと手足を振り回して、暴れだす。

「これ以上暴れたら、あっちの少女を連れて行くことにするぞ。」

 と怒鳴られ、アリスは暴れるのをやめた。
 サーシャが攫われるぐらいなら、私でいい。

 その時、アリスが攫われるのと同時に走り出した黒ずくめの二人組が、一瞬で男に襲いかかり、瞬く間に男を制圧し、アリスを解放した。
 そして、当局に連行しようとアリスに背を向けて、歩き出す。

「ありがとうございました。」

 お礼を言いたくて、二人組に呼びかけるが、二人組はこちらを見ようともせずに、静かに去って行く。

 アリスは自分が攫われそうになったために、置き去りにしてしまったサーシャが心配で、来た道を戻ろうとすると、泣きながらサーシャが歩いて来た。

「アリスさん、大丈夫ですか?」

「助けてくれた人達がいたの、だから大丈夫よ。」

「怖かった。」

 サーシャは泣き続ける。
アリスはサーシャを抱きしめ、

「うん、怖かったね、でも、もう大丈夫。
 帰りましょう。」

 と何とかサーシャをなだめながら、孤児院まで送り、その後、一人男爵邸に帰った。
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