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9.レイモンドの守り

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 邸に戻り、かすり傷の手当てを受けているとレイモンドが慌ててやって来る。

「大丈夫かい?
 攫われそうになったって聞いたけど。」

「情報が早いわね。
 大丈夫よ、親切な人達が助けてくれたの。」

「良かったね。」

「うん、あの人達誰だったんだろう?
 お礼言ったんだけど、目も合わせずに行ってしまって。

 犯人を捕える方が大事だし、一緒にいた子が心配だったから、ちゃんとお礼できてなくて、悪いけど、その方々を探すことはできないかしら。」

 きちんと改めてお礼がしたい。
 レイモンドなら、つてとかで、犯人を捕まえてくれた人を探し出してくれるだろう。

 レイモンドは一瞬言い淀んだが、話し出す。

「実は彼らは僕の私兵なんだ。
 この前騎士になりたいロイいただろう?
 騎士学校の試験はまだ先だから、彼に指導していたんだ。

 僕には影がいて、秘密裏に警護しているんだよ。
 それで、稽古の一環としてロイに、アリスの影の訓練をさせていたんだよ。
 アリスには内緒で。

 僕の影が一緒について、警護指導してる。

 本来なら警護対象者に知られることは許されていない。
 けど、アリスなら知られたとしてもロイのためなら許すだろうと思ってね。」

「ロイはそんなことをしていたの?
 もちろん、ロイが私の影として稽古していても全然問題ないわ。」

「そう言うと思ったよ。
 護衛としての騎士も大切だけど、実際には、周りをいつも取り囲んでいると対象者のストレスになるから、実は影の方が多いんだ。

 だから、ロイには騎士だけじゃなく、影の訓練もしてもらおうと思って。
 このまま稽古を積んでほしいと思っている。
 いいかい?」

「もちろんよ。
 レイのおかげでロイの夢の実現がもう始まっているのね。
 ありがとう。」

「ところで、アリスは攫われそうになったこと、精神的に大丈夫?」

「うん、確かに怖かったわ。
 でも、一緒にいた子の方でなくて、本当に良かったと思っているの。

 その子を守りたいって思ったら、力が溢れて来て。

 ほら、サーシャには私よりいっぱい未来があるから。」

「うん、大丈夫なら安心したよ。
 この後も、ロイの指導があるからアリスの護衛続けるよ。
 だから、アリスは心配しないで。

 そのかわり、本来なら見ることのない影のロイが周りをウロチョロしていても、見ないふりをしてやってくれ。
 まだ、見習いだから。」

「ふふ、ありがとう。」

 そう話すと二人は見つめ合って笑った。
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