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第一章 開店準備
五話 訳あり品召喚スキル?
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あれから薄暗いダンジョン内で、どれぐらいの時間が経過しただろう。
私は不安に押しつぶされそうになりながらも、やる事がないのでパッドからもらったバッジを手の平に乗せてしげしげと眺めていた。
見れば見る程、カルちゃんに似ているそのイラストを眺めてほほ笑む。
カルちゃんは今頃どうしているだろうか。ご主人様に会えただろうか。危険なモンスターに出会って怪我をしていないだろうか。
考えていると悪い方向に思考が進んでしまうので、ぶんぶんと首を振って目を閉じる。
その時だ、カチャッ、カチャっ、と爪が地面に擦れる音が聞こえてくる。私はその場で身構える。
心臓がドキドキと鼓動を早める。
でも、その姿を確認して安堵の息を吐く。
カルちゃんがトボトボと元気のないおぼつかない足取りで戻ってきたのだ。
「……カルちゃん」
元気のないしゅんとした落ち込んだ表情のカルちゃんに、ためらいながらも声をかける。
「……いなかったワン。ご主人様がどこにもいないワンよ……。捨てられちゃったんだワン、ボク、ボクは……クゥゥンッ」
カルちゃんが切なそうに鳴く。私は居た堪れなくなってカルちゃんを抱きしめる。
黒目がちな目からポロポロと涙の粒が零れ落ちる。
クゥンッ、キュゥーッ、とカルちゃんが繰り返し小さく鳴く。
私はカルちゃんを抱きしめながら頭を優しく撫でる。
「よしよし、泣かないで。頑張ったねカルちゃん」
そうカルちゃんを撫でると悲しそうに、クゥンクゥンと鳴く。
私は本当に切なくてもらい泣きしてしまう。涙が滲んで視界がぼやけたけど、カルちゃんに心配をかけないようにぐっと堪える。
(泣いている場合じゃない。しっかりしなきゃ!)
そう自分に言い聞かせて涙を拭う。
――訳アリ品召喚のスキルを取得しました。
「え?」
洞窟内に響く機械音声の様な声に、驚いて思わず声が出る。
鳴いていたカルちゃんが、その様子を不思議そうに見てくる。
「……リコおねえしゃん、どうしたんだワン」
「今、声が聞こえたの。スキルを取得しただか、なんだかって」
「それはきっと、リコおねえしゃんのスキルが発動出来る準備が整ったんだワンよ!」
子犬の様にクーン、クーン鳴いていたカルちゃんの瞳に光が灯る。
それは私が初めて出会った時のカルちゃんの瞳だ。好奇心旺盛で人懐っこい表情にほっとする。
――右手を前に突き出し『訳アリ品召喚!』と大きな声で叫んで下さい。
「えぇぇー! そんな恥ずかしい事言えません」
――では訳アリ品召喚スキルを没収しますがよろしいですか?
「そんな……それも困ります」
――では右手を前に突き出し『訳アリ品召喚!』と大きな声で叫んで下さい。
私と機械音声のやり取りを不思議な顔で眺めていたカルちゃんと目が合う。
(何か、カルちゃんを元気づける事が出来るかもしれない)
私は意を決して右手を前に突き出す。
もうどうにでもなれだわ。
「訳アリ品召喚!」
私の手の平から眩い光が溢れ出す。眩しくて目を細める。
「ちょっ、な、何これ!?」
「リコおねえしゃんのスキルが発動したワンよ!」
驚く私を他所に、カルちゃんが嬉しそうな声を出す。
クラッカーを鳴らした時の様な乾いた空気音が鳴ると、手を差し出した空間に突如プレゼントボックスが現れる。
「!?」
私は驚いて目を見開いて固まる。プレゼントボックスが無情にも落下していくが、地面に届く寸前でカルちゃんが口に銜えてキャッチする。
カルちゃんはウインクして、おめでとうと言わんばかりの表情で尻尾をフリフリ、プレゼントボックスを地面に置いた。
「リコおねえしゃん、しゅごいワン! プレゼントボックスの召喚なんてしゅごいワン!」
カルちゃんが興奮気味に飛び跳ねる。
私は未だに何が起こったのか良く解らず、茫然とその場に立ち尽くしていた。
私は不安に押しつぶされそうになりながらも、やる事がないのでパッドからもらったバッジを手の平に乗せてしげしげと眺めていた。
見れば見る程、カルちゃんに似ているそのイラストを眺めてほほ笑む。
カルちゃんは今頃どうしているだろうか。ご主人様に会えただろうか。危険なモンスターに出会って怪我をしていないだろうか。
考えていると悪い方向に思考が進んでしまうので、ぶんぶんと首を振って目を閉じる。
その時だ、カチャッ、カチャっ、と爪が地面に擦れる音が聞こえてくる。私はその場で身構える。
心臓がドキドキと鼓動を早める。
でも、その姿を確認して安堵の息を吐く。
カルちゃんがトボトボと元気のないおぼつかない足取りで戻ってきたのだ。
「……カルちゃん」
元気のないしゅんとした落ち込んだ表情のカルちゃんに、ためらいながらも声をかける。
「……いなかったワン。ご主人様がどこにもいないワンよ……。捨てられちゃったんだワン、ボク、ボクは……クゥゥンッ」
カルちゃんが切なそうに鳴く。私は居た堪れなくなってカルちゃんを抱きしめる。
黒目がちな目からポロポロと涙の粒が零れ落ちる。
クゥンッ、キュゥーッ、とカルちゃんが繰り返し小さく鳴く。
私はカルちゃんを抱きしめながら頭を優しく撫でる。
「よしよし、泣かないで。頑張ったねカルちゃん」
そうカルちゃんを撫でると悲しそうに、クゥンクゥンと鳴く。
私は本当に切なくてもらい泣きしてしまう。涙が滲んで視界がぼやけたけど、カルちゃんに心配をかけないようにぐっと堪える。
(泣いている場合じゃない。しっかりしなきゃ!)
そう自分に言い聞かせて涙を拭う。
――訳アリ品召喚のスキルを取得しました。
「え?」
洞窟内に響く機械音声の様な声に、驚いて思わず声が出る。
鳴いていたカルちゃんが、その様子を不思議そうに見てくる。
「……リコおねえしゃん、どうしたんだワン」
「今、声が聞こえたの。スキルを取得しただか、なんだかって」
「それはきっと、リコおねえしゃんのスキルが発動出来る準備が整ったんだワンよ!」
子犬の様にクーン、クーン鳴いていたカルちゃんの瞳に光が灯る。
それは私が初めて出会った時のカルちゃんの瞳だ。好奇心旺盛で人懐っこい表情にほっとする。
――右手を前に突き出し『訳アリ品召喚!』と大きな声で叫んで下さい。
「えぇぇー! そんな恥ずかしい事言えません」
――では訳アリ品召喚スキルを没収しますがよろしいですか?
「そんな……それも困ります」
――では右手を前に突き出し『訳アリ品召喚!』と大きな声で叫んで下さい。
私と機械音声のやり取りを不思議な顔で眺めていたカルちゃんと目が合う。
(何か、カルちゃんを元気づける事が出来るかもしれない)
私は意を決して右手を前に突き出す。
もうどうにでもなれだわ。
「訳アリ品召喚!」
私の手の平から眩い光が溢れ出す。眩しくて目を細める。
「ちょっ、な、何これ!?」
「リコおねえしゃんのスキルが発動したワンよ!」
驚く私を他所に、カルちゃんが嬉しそうな声を出す。
クラッカーを鳴らした時の様な乾いた空気音が鳴ると、手を差し出した空間に突如プレゼントボックスが現れる。
「!?」
私は驚いて目を見開いて固まる。プレゼントボックスが無情にも落下していくが、地面に届く寸前でカルちゃんが口に銜えてキャッチする。
カルちゃんはウインクして、おめでとうと言わんばかりの表情で尻尾をフリフリ、プレゼントボックスを地面に置いた。
「リコおねえしゃん、しゅごいワン! プレゼントボックスの召喚なんてしゅごいワン!」
カルちゃんが興奮気味に飛び跳ねる。
私は未だに何が起こったのか良く解らず、茫然とその場に立ち尽くしていた。
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