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反逆者
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恵というのが、その男の姓であった。その姓の通り様々なものに恵まれた男だった。
恵介達、人望がありまた優秀と評判。やや柔和であるが見目好い容姿に恵まれそして生まれもよかった。
その名の通りすべてに恵まれた男。
そのままでいれば、一人の貴族として幸福な一生を終えられたであろうその男は生まれた時だけが悪かった。
皇帝は愚劣、怯懦、無能と呼ばれ、そのどれもが間違っていないと誰もが断言するような人間だった。
そして、その愚皇帝を傀儡にし、重臣という名の豺狼が、国の政をほしいままにしていた。
当然国は荒れた。その国を救うためという大義名分のもと恵介達は立ち上がった。
まずは王宮から派遣されてきた徴税師を斬り捨てた。
今までさんざん搾取されてきた。それを恵の一族で何とかやりくりしてきたのだが、それにも限界があった。しかし、それをもってしてもさらに税を徴収しようとする。
もはや領民すべてが飢えて死にかねない事態となりそうだった。
国が荒れる前、恵の一族は統治者としてそこそこ優秀な部類であったため彼の領民はこぞって、彼の判断に快哉の声を上げた。
次になすべきことは王都に攻め入り、愚皇帝の首を上げる。そう宣言した。
そして、私兵を集め、また領民からも、義勇兵として立ち上がる者達がいた。
それらを並べ、いざ旅立とうとするとき、神官職の集団が、介達の前に現れた。
そして、小さな玉を絹の布の上に乗せて差し出した。
「何事だ?」
今神官たちが現れる理由が理解できない。
恵の家が長年喜捨してきた神殿はこう予言した。
「汝は、天下を獲るものと戦うであろう」
「天下を獲るもの?」
問い返すと相手はただうなずいた。
「天下に上る者が、貴方に立ちふさがる。出会えば戦うしかない。そして、どちらかの死でしか勝負は終わらない」
「勝てば、私は天下を獲れるのか?」
「それはわからない、だが、敗北は死を意味する」
「必ずや勝とう」
その言葉を受けた彼は高々とこぶしを天に突き上げた。
「そして、その先にある天下をこの手でつかみ取ろう」
そして、彼に従う者たちの歓声で、あたりは包まれた。
彼ならば、必ずや、その試練を乗り越え、この国の転嫁をつかむに違いないとその場にいた全員が信じた。
同じように王都を目指すものは多かった。
そうした者達を戦って滅ぼすこともあれば、自らの軍勢に収めることもあった。
そうして徐々に彼の軍団は巨大化していく。
そんな時、噂が耳に届いた。
皇弟が、軍勢を率いて王都を目指していくという。
「どうやら、予言は当たりそうだな」
傍らの部下にそう言った。
「皇弟ですか」
まさしく天下を獲るべきものであり、倒さねばならない相手だ。
「だが、だれであろうと負けはしない」
恵介達はそう言って不敵に笑った。
一人の男が、一つの慰霊碑の前に佇んでいた。
周囲は売り買いする者達でごった返している。活気のある市場、その中でその慰霊碑は浮いていた。
『 凶賊恵介達に殺められし犠牲者の躯ここに冥る。かの凶賊地獄に落ちる。持って瞑すべき 』
石碑の裏にはそう記されている。それを男は黙ってみていた。
恵介達、人望がありまた優秀と評判。やや柔和であるが見目好い容姿に恵まれそして生まれもよかった。
その名の通りすべてに恵まれた男。
そのままでいれば、一人の貴族として幸福な一生を終えられたであろうその男は生まれた時だけが悪かった。
皇帝は愚劣、怯懦、無能と呼ばれ、そのどれもが間違っていないと誰もが断言するような人間だった。
そして、その愚皇帝を傀儡にし、重臣という名の豺狼が、国の政をほしいままにしていた。
当然国は荒れた。その国を救うためという大義名分のもと恵介達は立ち上がった。
まずは王宮から派遣されてきた徴税師を斬り捨てた。
今までさんざん搾取されてきた。それを恵の一族で何とかやりくりしてきたのだが、それにも限界があった。しかし、それをもってしてもさらに税を徴収しようとする。
もはや領民すべてが飢えて死にかねない事態となりそうだった。
国が荒れる前、恵の一族は統治者としてそこそこ優秀な部類であったため彼の領民はこぞって、彼の判断に快哉の声を上げた。
次になすべきことは王都に攻め入り、愚皇帝の首を上げる。そう宣言した。
そして、私兵を集め、また領民からも、義勇兵として立ち上がる者達がいた。
それらを並べ、いざ旅立とうとするとき、神官職の集団が、介達の前に現れた。
そして、小さな玉を絹の布の上に乗せて差し出した。
「何事だ?」
今神官たちが現れる理由が理解できない。
恵の家が長年喜捨してきた神殿はこう予言した。
「汝は、天下を獲るものと戦うであろう」
「天下を獲るもの?」
問い返すと相手はただうなずいた。
「天下に上る者が、貴方に立ちふさがる。出会えば戦うしかない。そして、どちらかの死でしか勝負は終わらない」
「勝てば、私は天下を獲れるのか?」
「それはわからない、だが、敗北は死を意味する」
「必ずや勝とう」
その言葉を受けた彼は高々とこぶしを天に突き上げた。
「そして、その先にある天下をこの手でつかみ取ろう」
そして、彼に従う者たちの歓声で、あたりは包まれた。
彼ならば、必ずや、その試練を乗り越え、この国の転嫁をつかむに違いないとその場にいた全員が信じた。
同じように王都を目指すものは多かった。
そうした者達を戦って滅ぼすこともあれば、自らの軍勢に収めることもあった。
そうして徐々に彼の軍団は巨大化していく。
そんな時、噂が耳に届いた。
皇弟が、軍勢を率いて王都を目指していくという。
「どうやら、予言は当たりそうだな」
傍らの部下にそう言った。
「皇弟ですか」
まさしく天下を獲るべきものであり、倒さねばならない相手だ。
「だが、だれであろうと負けはしない」
恵介達はそう言って不敵に笑った。
一人の男が、一つの慰霊碑の前に佇んでいた。
周囲は売り買いする者達でごった返している。活気のある市場、その中でその慰霊碑は浮いていた。
『 凶賊恵介達に殺められし犠牲者の躯ここに冥る。かの凶賊地獄に落ちる。持って瞑すべき 』
石碑の裏にはそう記されている。それを男は黙ってみていた。
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