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仕事は一人だけ。
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仕方がない、さっさと終わらせよう。
佐藤はまず院長室に向かった。
「ああ、本当に面倒くさい」
すべてを終わらせたら三日ぐらい寝て過ごしたい。
病院内は大混乱に陥っていた。右往左往する看護士、それを見てどうしていいかわからず狼狽える患者、そして我先に逃亡を図る職員たち。
あれらは放っておいていいだろう。
「助けて」
怯えた顔で自分に向かってくる看護士が見えた。なかなかの美人でひっ詰めた髪が崩れそうになっている。
残念ながら佐藤は人の顔を覚えるのが得意だ。たとえに多様な看護師の制服でも一度見た顔なら見分けがつく。自分は覚えにくい顔をしているのに理不尽な特技だ。
「ああ、先ほどはお世話になりました」
突っ込んでくる身体を軽くかわして足を引っかけた。
無様に転がるその体を無表情に見下ろして、肩甲骨のあたりを踏みつけた。
「すいませんが、貴女の飼い主はどこです?」
苦痛の呻きと訳が分からないという顔で見上げてくるが佐藤は構わず聞く。
「先ほどはお世話になりました、物置に放り込んでくださいましたよね」
そう指摘すると悔しそうな顔をした。
「それで、飼い主はどこです、大丈夫ですよ私の目標はあなたの飼い主だけです、他は殺さないように言われてますから」
そう言ってにっこりと笑う。
「どうします」
佐藤はつま先にじりじりと力を込めた。看護師はあきらめたようにその方向を指さした。
「それはどうもありがとう」
そう言って佐藤は足を下ろしつつ後頭部に踵を打ち込んだ。
相手が気絶したのを確認して佐藤は指さした方向に向かう。
その方向は院長室から少しだけずれていた。
足早に進んでいくと、今度はあからさまな攻撃が加えられる。
やれやれと軽く沈める。思った以上に練度が低い。
「もう面倒くさくなったんですよ」
そして、傍らのロッカーを押し開けた。ロッカーから隠し通路に続いていた。
ロッカーはかなり細く作られているので一定以上体格のいい人間ではおそらく詰まってしまう。
「結構急ごしらえですね、最近リフォームしたようなのでその時改造したんでしょうか」
わざと出入り口を細く作ってあるのは追っ手を通さないためなのかもしれないが、出口はない。
佐藤はこの建物の外観を確認した限りでは一時的に身を隠すための隠し部屋以外の何物でもない。
「なんだかな、この作戦レトロなことばっかりで」
ロッカーの前にさっき沈めた相手を押し付けた。彼は体格が大きいので入れないが、何かどんと当たる音がした。
「まあ、これは俺が殺したわけじゃないよなあ」
佐藤は笑った。
佐藤はまず院長室に向かった。
「ああ、本当に面倒くさい」
すべてを終わらせたら三日ぐらい寝て過ごしたい。
病院内は大混乱に陥っていた。右往左往する看護士、それを見てどうしていいかわからず狼狽える患者、そして我先に逃亡を図る職員たち。
あれらは放っておいていいだろう。
「助けて」
怯えた顔で自分に向かってくる看護士が見えた。なかなかの美人でひっ詰めた髪が崩れそうになっている。
残念ながら佐藤は人の顔を覚えるのが得意だ。たとえに多様な看護師の制服でも一度見た顔なら見分けがつく。自分は覚えにくい顔をしているのに理不尽な特技だ。
「ああ、先ほどはお世話になりました」
突っ込んでくる身体を軽くかわして足を引っかけた。
無様に転がるその体を無表情に見下ろして、肩甲骨のあたりを踏みつけた。
「すいませんが、貴女の飼い主はどこです?」
苦痛の呻きと訳が分からないという顔で見上げてくるが佐藤は構わず聞く。
「先ほどはお世話になりました、物置に放り込んでくださいましたよね」
そう指摘すると悔しそうな顔をした。
「それで、飼い主はどこです、大丈夫ですよ私の目標はあなたの飼い主だけです、他は殺さないように言われてますから」
そう言ってにっこりと笑う。
「どうします」
佐藤はつま先にじりじりと力を込めた。看護師はあきらめたようにその方向を指さした。
「それはどうもありがとう」
そう言って佐藤は足を下ろしつつ後頭部に踵を打ち込んだ。
相手が気絶したのを確認して佐藤は指さした方向に向かう。
その方向は院長室から少しだけずれていた。
足早に進んでいくと、今度はあからさまな攻撃が加えられる。
やれやれと軽く沈める。思った以上に練度が低い。
「もう面倒くさくなったんですよ」
そして、傍らのロッカーを押し開けた。ロッカーから隠し通路に続いていた。
ロッカーはかなり細く作られているので一定以上体格のいい人間ではおそらく詰まってしまう。
「結構急ごしらえですね、最近リフォームしたようなのでその時改造したんでしょうか」
わざと出入り口を細く作ってあるのは追っ手を通さないためなのかもしれないが、出口はない。
佐藤はこの建物の外観を確認した限りでは一時的に身を隠すための隠し部屋以外の何物でもない。
「なんだかな、この作戦レトロなことばっかりで」
ロッカーの前にさっき沈めた相手を押し付けた。彼は体格が大きいので入れないが、何かどんと当たる音がした。
「まあ、これは俺が殺したわけじゃないよなあ」
佐藤は笑った。
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