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第五章
マリアンヌの思うところ
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「私の命、もってあと10年は無理ってエリク神官長に言われたんだ。だから領地に居たいと思ってる」
これはマドレーヌもクロードもフロランも知っていた。祖父も知った上でマリアンヌにある程度厳しくしている。健康なマドレーヌを見ていたら心の奥にあるマドレーヌへの嫉妬がいつ顔を出すかわからないし、孫娘二人をそういう感情で苛まさせたくはないと思っていたのだ。孫娘二人は『母親対策だろうなぁ』と思っている。
「ふーん、みんな聞いてたんだ?」
マドレーヌとクロードは正直に頷く。
「フロラン兄様も?」
クロードが正直にうなずいた。
「……フロラン兄様と仲良くするのはもう無理かな」
マリアンヌはさばさばと一人納得したように頷く。
「仕方ないから折々に手紙でも書いて渡す」
マリアンの手紙はマリアンヌの死後にフロランに渡された。そこにあった一文にフロランは怒りを再燃させる。『この手紙を受け取って会えなかったこと後悔してくれるといいな』という一文だった。フロランは『絶対!後悔なんかしねぇ』と言った。
「マリアンン……」
「マドレーヌにあれこれやらせてたのも、……その話を聞いた八つ当たりもあったと思う。エリク様に母親の事を相談したら正直に命の残りの話をされたの。その時に嫌な事は嫌っていうのはわがままじゃないよって」
マリアンヌはテーブルの上のマドレーヌの手を取った。
「それはマドレーヌにも言える事よ。いつもさらっと流しちゃうのはもうやめて、ちゃんと考えて……好きなことたくさんやってね。秋とか春の気候のいいときには森を一緒に歩きましょ。まだ普通の体調を保ってられるうちは森に季節の果物を摘みに行きたいしね」
マリアンヌは話を聞いてから考えに考えて自分の命の残りを受け入れたのだ。その中で母親を思いやり、過ごしていた。
ロクサーヌの学年の卒業式の日となった。前日からジョアンとメイド長は神殿に連れられて行った。マリアンヌの帰郷はジョアンたちの様子を見てからということになったらしい。
今日はフロランはアルの側近として正装でアルに着き従っている。マドレーヌは制服の騎士服で同じ学年の女子たちの手で長い銀髪を高い位置でポニーテールにしている。これは卒業式の開始の合図で騎士科による行進の時に綺麗に見えるようにという女子の配慮であった。式典の間は騎士科の生徒は遅れてくる来賓の相手や連れてこられた子供の相手など細々とすることがあった。
「足りないものありますか?」
今回はレアとジュストという王族がいるので王族専用の控室があった。マドレーヌは指名されて御用聞きをしている。
「今のところ大丈夫」
レアが言い、マドレーヌは礼をして部屋を出た。ジュストが少しまぶしそうにマドレーヌを見ていた。マドレーヌが出て行ってからジュストが
「婚約早まったかも」
とおどける。レアがさらっと告げる。
「だめよ。アル兄さんが口説いてる人だから」
ジュストは心底驚いた顔でアルを見る。
「兄上。が……?」
「そう」
アルはきまり悪そうにしている。
「その話はおいておいてくれ……」
アルの弱弱しい様子を見てジュストがあからさまに話を変える。
「そういえばネイサンは落第だって?」
「単位とれてないらしいよ。今はアランと一緒にベルティエ公爵家で単位取れるように叩き込まれているそうよ」
「……アラン・アルノーといて大丈夫か、ネイサン」
「勉強の時しか接触なしらしいよ。……なんだかんだってネイサンの最初の友達だから公爵様が甘いと思ってる」
レアがジュストに正直な感想を告げる。
「あの方も甥の不憫さを嘆いてたから」
ジュストが母親から聞いた話を思い出してレアに言った。
「そういえばミシェル妃はいらっしゃるの?」
「来るって。アルノー夫人から贈られたショールを見せびらかす機会だからって」
「ああ、お店出す前にミシェル妃個人のために作ったやつね」
「そう。ドレス自体は以前のものなんだけど、それのリメイクをお願いしたらショールがついいてきたってわけ」
外からノックが聞こえる。
「お時間です。会場に向かってください」
これから学内のホールで陛下からの挨拶がある。それが終わればレアとアル、ジュストと婚約者の二組でのファーストダンスでアルはその時に自分が紹介されることは完全に頭になく、ただひたすらにファーストダンスに向けて緊張していた。
これはマドレーヌもクロードもフロランも知っていた。祖父も知った上でマリアンヌにある程度厳しくしている。健康なマドレーヌを見ていたら心の奥にあるマドレーヌへの嫉妬がいつ顔を出すかわからないし、孫娘二人をそういう感情で苛まさせたくはないと思っていたのだ。孫娘二人は『母親対策だろうなぁ』と思っている。
「ふーん、みんな聞いてたんだ?」
マドレーヌとクロードは正直に頷く。
「フロラン兄様も?」
クロードが正直にうなずいた。
「……フロラン兄様と仲良くするのはもう無理かな」
マリアンヌはさばさばと一人納得したように頷く。
「仕方ないから折々に手紙でも書いて渡す」
マリアンの手紙はマリアンヌの死後にフロランに渡された。そこにあった一文にフロランは怒りを再燃させる。『この手紙を受け取って会えなかったこと後悔してくれるといいな』という一文だった。フロランは『絶対!後悔なんかしねぇ』と言った。
「マリアンン……」
「マドレーヌにあれこれやらせてたのも、……その話を聞いた八つ当たりもあったと思う。エリク様に母親の事を相談したら正直に命の残りの話をされたの。その時に嫌な事は嫌っていうのはわがままじゃないよって」
マリアンヌはテーブルの上のマドレーヌの手を取った。
「それはマドレーヌにも言える事よ。いつもさらっと流しちゃうのはもうやめて、ちゃんと考えて……好きなことたくさんやってね。秋とか春の気候のいいときには森を一緒に歩きましょ。まだ普通の体調を保ってられるうちは森に季節の果物を摘みに行きたいしね」
マリアンヌは話を聞いてから考えに考えて自分の命の残りを受け入れたのだ。その中で母親を思いやり、過ごしていた。
ロクサーヌの学年の卒業式の日となった。前日からジョアンとメイド長は神殿に連れられて行った。マリアンヌの帰郷はジョアンたちの様子を見てからということになったらしい。
今日はフロランはアルの側近として正装でアルに着き従っている。マドレーヌは制服の騎士服で同じ学年の女子たちの手で長い銀髪を高い位置でポニーテールにしている。これは卒業式の開始の合図で騎士科による行進の時に綺麗に見えるようにという女子の配慮であった。式典の間は騎士科の生徒は遅れてくる来賓の相手や連れてこられた子供の相手など細々とすることがあった。
「足りないものありますか?」
今回はレアとジュストという王族がいるので王族専用の控室があった。マドレーヌは指名されて御用聞きをしている。
「今のところ大丈夫」
レアが言い、マドレーヌは礼をして部屋を出た。ジュストが少しまぶしそうにマドレーヌを見ていた。マドレーヌが出て行ってからジュストが
「婚約早まったかも」
とおどける。レアがさらっと告げる。
「だめよ。アル兄さんが口説いてる人だから」
ジュストは心底驚いた顔でアルを見る。
「兄上。が……?」
「そう」
アルはきまり悪そうにしている。
「その話はおいておいてくれ……」
アルの弱弱しい様子を見てジュストがあからさまに話を変える。
「そういえばネイサンは落第だって?」
「単位とれてないらしいよ。今はアランと一緒にベルティエ公爵家で単位取れるように叩き込まれているそうよ」
「……アラン・アルノーといて大丈夫か、ネイサン」
「勉強の時しか接触なしらしいよ。……なんだかんだってネイサンの最初の友達だから公爵様が甘いと思ってる」
レアがジュストに正直な感想を告げる。
「あの方も甥の不憫さを嘆いてたから」
ジュストが母親から聞いた話を思い出してレアに言った。
「そういえばミシェル妃はいらっしゃるの?」
「来るって。アルノー夫人から贈られたショールを見せびらかす機会だからって」
「ああ、お店出す前にミシェル妃個人のために作ったやつね」
「そう。ドレス自体は以前のものなんだけど、それのリメイクをお願いしたらショールがついいてきたってわけ」
外からノックが聞こえる。
「お時間です。会場に向かってください」
これから学内のホールで陛下からの挨拶がある。それが終わればレアとアル、ジュストと婚約者の二組でのファーストダンスでアルはその時に自分が紹介されることは完全に頭になく、ただひたすらにファーストダンスに向けて緊張していた。
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