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第五章
ロクサーヌたちの卒業式 6
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「では、皆、学生として最後のパーティを楽しんでくれ」
陛下の挨拶が終わって音楽が始まった。ジュストと婚約者が流れるようにフロアに出ていった。アルはレアにつつかれて正気に戻りレアの手を取ってフロアに出る。
「マドレーヌじゃなくて残念ね」
レアが小声で言う。アルは慌てる。
「ばっか」
レアはくすくす笑っている。周りは仲のいい兄妹を見てほっこりしつつも『王太子』と陛下から紹介されたアルに近づこうとタイミングを虎視眈々と狙っている。
「兄様、ダンスが終わったら人に囲まれるから覚悟しててね?」
「えー。レア助けろよ」
「補助はする」
兄妹は小声で会話をしている。レアは若草色のドレスを身に着けている。これは母親セイラ妃が『守護者様の色』として選んだ色でアルは深い緑にレアのドレスと色を合わせた刺繍をした上着を身に付けている。この刺繍をネイサンがしたことはレアとアル以外は知らない。
1曲目が終わった。レア達が下がり、ネイサンとロクサーヌがフロアに滑り込む。ジュストと婚約者はそのまま二曲目を踊るようだ。連続で二曲踊るのはあまり歓迎されたことではないないが婚約者同士のダンスは多めに見られている。
ネイサンとロクサーヌのダンスは身体能力が優れているもの同士のダンスなのだが優雅さが欠けている。なんというかキレがよくスピーディで小気味よいのだが色気がない。
「ロクサーヌらしい」
レアが笑っているうちにアルとフロランは令嬢たちに囲まれていた。フロランもアルも困惑している。レアはとりあえず様子を見ていたらら、3曲目になりジュストの婚約者の侯爵令嬢がやってきた。
「レア様、お久しぶりでございます」
「そちらもお元気そうで」
レアはこの令嬢をあまり好きではなかった。何が、と言われると肌が合わないというだけではあった。
「今度、お兄様と我が家にお茶にいらっしゃいませんか?」
「遠慮します。……兄上を誘いたいならジュストを通してくださる?」
レアは反感を隠そうともしなかった。レアは家政科にいるときに同じクラスのこの侯爵令嬢に見下されていた。侯爵令嬢は6年間、中高等部でいじっていた子爵令嬢がレアだとはまだ気が付いていなかった。
「そういえばレア様はどこのクラスに属してたのです?学園でお見掛けしなかったから」
侯爵令嬢の取り巻きの子爵令嬢が訊ねる。レアはこちらが本命かと思った。がこれには正直に答えることにした。
「だって姿変えの魔道具使ってましたもの。……今いないクラスメイトが誰か考えたら私が誰だったかわかるんじゃないでしょうか?……おかげでいろんな方の本性を見せていただきましたわ」
侯爵令嬢の目が吊り上がる。
「……ずいぶんな手を使われますのね」
「ふふ。もう見たものは仕方ないわ。私はそういう評価を下したということ。ジュストとの仲、私は感知しませんがアル兄さまに関しては口も手も出しますわ」
小さな声で悲鳴が聞こえる。それは自分たちが誰に何をしたか気が付いた令嬢の悲鳴だった。
「……あなたこそ大した本性だわ」
侯爵令嬢が悔しげに言う。
「そんな人はたくさんいるわ。……公爵令嬢なのに男爵令嬢としてここに通っていたり。遠縁のつて頼って学園で身分を偽るのは普通の事よ?あなたたちはそんなことがあるって考えてなかったのね」
レアが友達の所に挨拶に行く後姿を令嬢たちはなすすべもなく見ていた。
フロランとアルは完全に困惑していた。フロランは卒業の時には見向きもされなかったのだがアルの側近だと気が付かれた瞬間、そして陞爵したての伯爵令息、そのうえ次男ということで婚約者がいない令嬢の父母や令嬢本人が飴にたかる蟻のようにたかってきていた。アルも同じであった。こちらはもっとひどく、婚約者がいる令嬢も初対面のアルにダンスを申し込みに来ている。
陛下の挨拶が終わって音楽が始まった。ジュストと婚約者が流れるようにフロアに出ていった。アルはレアにつつかれて正気に戻りレアの手を取ってフロアに出る。
「マドレーヌじゃなくて残念ね」
レアが小声で言う。アルは慌てる。
「ばっか」
レアはくすくす笑っている。周りは仲のいい兄妹を見てほっこりしつつも『王太子』と陛下から紹介されたアルに近づこうとタイミングを虎視眈々と狙っている。
「兄様、ダンスが終わったら人に囲まれるから覚悟しててね?」
「えー。レア助けろよ」
「補助はする」
兄妹は小声で会話をしている。レアは若草色のドレスを身に着けている。これは母親セイラ妃が『守護者様の色』として選んだ色でアルは深い緑にレアのドレスと色を合わせた刺繍をした上着を身に付けている。この刺繍をネイサンがしたことはレアとアル以外は知らない。
1曲目が終わった。レア達が下がり、ネイサンとロクサーヌがフロアに滑り込む。ジュストと婚約者はそのまま二曲目を踊るようだ。連続で二曲踊るのはあまり歓迎されたことではないないが婚約者同士のダンスは多めに見られている。
ネイサンとロクサーヌのダンスは身体能力が優れているもの同士のダンスなのだが優雅さが欠けている。なんというかキレがよくスピーディで小気味よいのだが色気がない。
「ロクサーヌらしい」
レアが笑っているうちにアルとフロランは令嬢たちに囲まれていた。フロランもアルも困惑している。レアはとりあえず様子を見ていたらら、3曲目になりジュストの婚約者の侯爵令嬢がやってきた。
「レア様、お久しぶりでございます」
「そちらもお元気そうで」
レアはこの令嬢をあまり好きではなかった。何が、と言われると肌が合わないというだけではあった。
「今度、お兄様と我が家にお茶にいらっしゃいませんか?」
「遠慮します。……兄上を誘いたいならジュストを通してくださる?」
レアは反感を隠そうともしなかった。レアは家政科にいるときに同じクラスのこの侯爵令嬢に見下されていた。侯爵令嬢は6年間、中高等部でいじっていた子爵令嬢がレアだとはまだ気が付いていなかった。
「そういえばレア様はどこのクラスに属してたのです?学園でお見掛けしなかったから」
侯爵令嬢の取り巻きの子爵令嬢が訊ねる。レアはこちらが本命かと思った。がこれには正直に答えることにした。
「だって姿変えの魔道具使ってましたもの。……今いないクラスメイトが誰か考えたら私が誰だったかわかるんじゃないでしょうか?……おかげでいろんな方の本性を見せていただきましたわ」
侯爵令嬢の目が吊り上がる。
「……ずいぶんな手を使われますのね」
「ふふ。もう見たものは仕方ないわ。私はそういう評価を下したということ。ジュストとの仲、私は感知しませんがアル兄さまに関しては口も手も出しますわ」
小さな声で悲鳴が聞こえる。それは自分たちが誰に何をしたか気が付いた令嬢の悲鳴だった。
「……あなたこそ大した本性だわ」
侯爵令嬢が悔しげに言う。
「そんな人はたくさんいるわ。……公爵令嬢なのに男爵令嬢としてここに通っていたり。遠縁のつて頼って学園で身分を偽るのは普通の事よ?あなたたちはそんなことがあるって考えてなかったのね」
レアが友達の所に挨拶に行く後姿を令嬢たちはなすすべもなく見ていた。
フロランとアルは完全に困惑していた。フロランは卒業の時には見向きもされなかったのだがアルの側近だと気が付かれた瞬間、そして陞爵したての伯爵令息、そのうえ次男ということで婚約者がいない令嬢の父母や令嬢本人が飴にたかる蟻のようにたかってきていた。アルも同じであった。こちらはもっとひどく、婚約者がいる令嬢も初対面のアルにダンスを申し込みに来ている。
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