131 / 212
第三章
辺境と精霊
しおりを挟む
『ウジェ殿、貴方が見えてますよね?』
守護者は笑って答えない。陛下が代わりに返事をする。
『見えてるよ。初めて守護者の樹の側に来た時、持たれて立って客を観察してた守護者様を見て『あれ、兄弟のだれか?』って聞いていたからね』
アルは答えが貰えて安心した。
『あれは半端に妖精眼をもってるのだろう。……辺境のものには多いのだよ』
『なぜです?』
アルは訊ねる。
『辺境の領主のうち東西南はどこかで精霊の血が混じったものを領主に立てたからな。ここは5代前にもう一度精霊の血が入ってる。次はフロランでまた血が入るだろう。東も南も時々、精霊の花婿が出るんだよ。そうやって要所要所で血が混じってる』
陛下はこの話を知っていたらしい。
『北には精霊の血は』
アルの疑問に守護者は答える
『入ってないね。北は武辺者の血だな』
レアとセイラ妃、陛下は迎えに来た魔導師団長が転移で連れて帰った。その3日後、エマが帰ってくると守護者の樹の所に陛下がいた。
「陛下?」
「順調かな?」
「割合と。明後日に北か南かの象徴の石を交換します」
陛下は考え込んでいたが守護者となにか話したようで顔をあげてエマに指示をする。
「明後日の正午、北の石を変えて欲しい。守護者様が気にかかっているらしい」
エマはにっこりと笑い頷いた。
「俺も立ち会うから俺が来るまで石の入れ替えは待ってくれ」
「判りました」
なにがあるのかしら、とエマは思った。
「じゃ、頼んだよ」
そういうと陛下は自分で転移して王宮に戻った。
「呆れた……、あの子自分で飛べるんじゃない」
守護者の樹は同意のつもりか風もないのに葉が揺れている。
その後、アルがのんびり樹の所に来た。
「昼寝するんでエマ様は館でお休みになってください。なんなら夜も俺がいますよ」
「そう、……ね。今日はお願いしても?」
「夕飯はフロランが持ってきてくれるらしいですしエマ様は今日は社交の日にしてくださ
い」
エマは礼をいうと自分の足で館に向かった。
『マドレーヌとはどうなんだ?』
守護者が好奇心一杯で訊いてくる。アルは持ってきた自分の椅子を設置する。椅子というのかハンモックを言うのか。体全体を布が支える形の椅子で足元にオッドマンをおき気楽に昼寝の体勢になる。
『どう、とは?』
アルの答えに守護者は深くため息をつく。
『いいな、とか嫁にしたいとか』
『そういうんじゃないです』
アルは守護者にはっきりと返す。
『あの子は王族とかに向きませんよ。俺も聡い方とは言いませんが……あの子はまだ未分化の幼児ですね、そういう部分は』
アルは深くため息をつく。
『それに俺に恋愛の自由なんてないんですから。王家にとって一番いい位置におかれt一番いい相手を宛がわれる、それが俺の役目です。……俺は母上みたいに泣く人を作りたくない。ので、俺に宛がわれる人がいるならその人を愛したいので』
守護者は意地悪くアルに訊ねた。
『それが正妃みたいな人だったらどうする?』
アルはうむむむ、と唸ったっきり守護者を無視して本格的に寝に入った。
守護者は笑って答えない。陛下が代わりに返事をする。
『見えてるよ。初めて守護者の樹の側に来た時、持たれて立って客を観察してた守護者様を見て『あれ、兄弟のだれか?』って聞いていたからね』
アルは答えが貰えて安心した。
『あれは半端に妖精眼をもってるのだろう。……辺境のものには多いのだよ』
『なぜです?』
アルは訊ねる。
『辺境の領主のうち東西南はどこかで精霊の血が混じったものを領主に立てたからな。ここは5代前にもう一度精霊の血が入ってる。次はフロランでまた血が入るだろう。東も南も時々、精霊の花婿が出るんだよ。そうやって要所要所で血が混じってる』
陛下はこの話を知っていたらしい。
『北には精霊の血は』
アルの疑問に守護者は答える
『入ってないね。北は武辺者の血だな』
レアとセイラ妃、陛下は迎えに来た魔導師団長が転移で連れて帰った。その3日後、エマが帰ってくると守護者の樹の所に陛下がいた。
「陛下?」
「順調かな?」
「割合と。明後日に北か南かの象徴の石を交換します」
陛下は考え込んでいたが守護者となにか話したようで顔をあげてエマに指示をする。
「明後日の正午、北の石を変えて欲しい。守護者様が気にかかっているらしい」
エマはにっこりと笑い頷いた。
「俺も立ち会うから俺が来るまで石の入れ替えは待ってくれ」
「判りました」
なにがあるのかしら、とエマは思った。
「じゃ、頼んだよ」
そういうと陛下は自分で転移して王宮に戻った。
「呆れた……、あの子自分で飛べるんじゃない」
守護者の樹は同意のつもりか風もないのに葉が揺れている。
その後、アルがのんびり樹の所に来た。
「昼寝するんでエマ様は館でお休みになってください。なんなら夜も俺がいますよ」
「そう、……ね。今日はお願いしても?」
「夕飯はフロランが持ってきてくれるらしいですしエマ様は今日は社交の日にしてくださ
い」
エマは礼をいうと自分の足で館に向かった。
『マドレーヌとはどうなんだ?』
守護者が好奇心一杯で訊いてくる。アルは持ってきた自分の椅子を設置する。椅子というのかハンモックを言うのか。体全体を布が支える形の椅子で足元にオッドマンをおき気楽に昼寝の体勢になる。
『どう、とは?』
アルの答えに守護者は深くため息をつく。
『いいな、とか嫁にしたいとか』
『そういうんじゃないです』
アルは守護者にはっきりと返す。
『あの子は王族とかに向きませんよ。俺も聡い方とは言いませんが……あの子はまだ未分化の幼児ですね、そういう部分は』
アルは深くため息をつく。
『それに俺に恋愛の自由なんてないんですから。王家にとって一番いい位置におかれt一番いい相手を宛がわれる、それが俺の役目です。……俺は母上みたいに泣く人を作りたくない。ので、俺に宛がわれる人がいるならその人を愛したいので』
守護者は意地悪くアルに訊ねた。
『それが正妃みたいな人だったらどうする?』
アルはうむむむ、と唸ったっきり守護者を無視して本格的に寝に入った。
7
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。

前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる