悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第三章

元悪役令嬢 退場

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 「ひどーい」

ミーカが子供のような反応をする。ジョアンは同年代の女性の醜態に頭を抱えていた。ウージェーヌは妻に耳打ちをする。

「あら、副団長様、ごめんなさいね。娘の様子を見てまいりますので席を外させてもらいます」

頭を下げるとその場を去った。ロクサーヌも着いて行こうとしたがネイサンが自分の母親と似たような女性の態度に緊張の色を隠せなかったのでネイサンの為にそこに残った。

「貴女がミシェル妃の妹分でジェラールが貴女に弱いのも知っておりますが、この館の主としてはっきり言いますね」

ウージェーヌは笑顔でミーカに告げる。

「即刻この家から立ち去って欲しい。こちらも色々段取りがあるのでね。……ああ、あの中身入りの壺をもって前神官長の所に行く、というっていう任務を遂行してもらうっていうのもありですが」

エリクが止める。

「一応未婚女性だし。倒されて割られでもしたら責任とれん」

エリクが慌てて制止する。

「強化魔法かけて持って行ってもらえ。まさか使えないなんて言わないだろう。魔法師団の副団長様がな」

ウージェーヌも大人げなかった。ミーカはその『まさか』だったのだ。現在の魔法師団長はミーカの母方の伯父で、あまりにうるさいから自分の横においておくために副団長という地位を与えている。周りはみんな知っているがミーカだけが理解していない。

「な……あ……」

そういうとミーカは何も言わず転移をして逃げた。

「……」

ジェラールとエリクは顔を見合わせ、アルもネイサンもあっけに取られていた。

「父の幼馴染がすみません」

ロクサーヌが棘のある視線で父親をみてから謝る。

「どうにも父上が甘やかすからいつもあんな感じなんです」

ロクサーヌがとげとげしい。アルは笑いをこらえて頬の内側を噛んでいるしフロランは憮然としている。ネイサンとクロードはぽかんとするばかりだった。

「お母様と似てる……」

ネイサンが呟き、とうとうウージェーヌが爆笑した。

「確かにそうだ。感情の爆発のさせ方が似てるな」

ウージェーヌの言葉にネイサンが頷く。

「なぁ」

エリクが発する。

「……ミシェルもちょっと似てないか?」

「というか……お祖母様がああいう感じだった」

ジェラールも何か思い当たって呆然としている。

「ジョアンも母上もああいう事は一度もないぞ」

ウージェーヌが言う。クロードとフロランも頷いている。

「マドレーヌ嬢もああいう事は一度もなかったですよ」

アルの言葉にエディとロゼも頷く。ウージェーヌがパンと手を打った。

「とりあえず仮眠が取れそうな人たちは取ってくれ。俺とエリクとジェラール以外だな。エディさんとロゼさんには客間を用意して。夕飯の時にまた会おう。神官と騎士団の諸君は残ってくれ。食堂に軽食を用意させてあるから腹が減ってる人は食堂に」

その言葉に呼応するようにエディの腹がいい音で鳴り、なんとなく空気も緩んでいった。
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