悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第三章

かつては悪役令嬢と呼ばれた女

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 「それはあなたじゃない貴女がした事だから。これがあったらあいつらの悪事を解明する手がかりになるかもなんだ。……貴女は辛い目にあったからね。まずはスープからゆっくり体に入れてね」

エリクがマリアンヌに薬を渡す。

「少し、忘れたい事があるならこれを飲むといい。心が軽くなる薬だから」

「ありがとうございます」

「それを飲んだら眠くなるからね。その時はクッションを外して眠るんだよ」

エリクはそう言いおいてフロランと部屋をでた。

 フロランは不機嫌であった。妹が性的な玩具を持っていてそれを四六時中使う事を恋人といちゃついているつもりになっていた事に嫌悪感が強かったからだ。

「やっぱマリアンヌはくそ女だ。淫乱の素質があったからつけこまれたんだ」

「恋愛なんて心を変質させるからね」

エリクは慰めるように言った。

「俺も神殿に入った方がいいかも。こうやって女が嫌になってしまう」

「君のその気持ちは精霊のせいかもね」

フロランは不思議そうだったがエリクは話を変える。

「しかしさすが淫魔だよな。いつも身に着けておいて、っていう贈り物がそれだなんて」

「確かに」

二人は苦笑しつつ客間に戻った。エリクはジョアンがミーカの相手をしているのを確認し、マリアンヌの小物の上に本を重ねて布で包む。

「何か面白いもの見つかった?」

早速ミーカが首を突っ込もうとしてくる。

「何、この棒」

ミーカの手が伸びた時、何か、精霊、がミーカの頭から帽子を取り上げて遠くへ投げた。

「な」

エリクははっきりと言い渡す。

「子供じゃないんだから、こういう証拠品に勝手に触ろうとしないでくれ」

怖い顔だった。ミーカはじわりと涙を浮かべた。

「泣くなよ?ミーカが泣いても口出して守ってくれるミシェルはここにいないぞ?」

エリクはそう言い渡した。いい年して未だにこれかよ、とエリクは胸の内で呟いた。エリクが女性に対して冷たくなったのはミーカのすぐに泣いて他人をコントロールしようとする所に嫌悪感があるからだ。
 ミーカ自体は普段はそうでもないのだがジェラールとエリク相手には未だに子供の時からの癖が抜けていない。ジェラールは涙を浮かべると大抵わがままや傍若無人を通してくれる。ただしミーカ自体は正妃を筆頭とするジェラールの家の女性には蛇蝎の如く嫌われている。もちろんロクサーヌも例外ではない。マリアンヌの部屋から客間に戻ってきてネイサンやアルと話していた時には普通だったがミーカが部屋に入ってきてからは冷たい表情で座っているだけになっていた。
 ジョアンは学生時代に流れていた噂は本当だったのだなと思っていた。ジョアンの時代の『悪役令嬢』は正妃アグネスとミーカだった。どちらも異性絡みで嫌われているとは聞いていたがジョアンとは生息域が違っていたので直接かかわったことはなかった。ただ、ベルティエ公爵令息ジェラールの周りにいる女性だったのでジェラールは大変だなぁとのほほんと思っていたのだ。
 エリクはさっさと荷物をまとめエリクとルカの二人で二重の封印をする。そこにいた下っ端の神殿騎士に頼み、神殿経由で王都に戻ってもらい、前神官長に届けてもらう。詳細は蝶の手紙に認めて前神官長にあてて出した。

「王都までは妖精たちが蝶々を保護するって。……だから追跡は邪魔が入ると思いますよ」

フロランはエリクに告げる。ミーカにも聞こえるように言う。ミーカは蝶々の手紙の後をつけて手紙の中身を知ろうとしていたのだ。

「詳細は魔法師団長に前神官長か俺から報告される。何を君に知らせるかは師団長次第だ。君のしてる事は越権行為だと師団長は嫌うだろうね」

エリクはミーカの目を見てはっきりと言い渡した。
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