悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第三章

人は誰でもやらかす事はある

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 「じゃ、アルはあの子に怒ってない?」

「怒るも何も。戦闘民族ばかりのこの家で情報もしっかり与えられずにいたんだろうし。……人の事言えないしな。俺が当時の側近を信じ込まなかったら出会い頭に魔法をかけられることもなかったわけで」

ロゼの問いにアルは答える。早々にアルは守護者を通じてフロランに手加減してくれと伝えている。マリアンヌ嬢を巻き込むのもいい方法とは思えない。
 守護者が伝えてくるにはフロランはマリアンヌがマドレーヌに子供の頃から頼り切っていたのが気に入らないという兄妹間の確執もあるからと。兄妹の事は知らんとアルは思った。

「ま、どうも兄妹喧嘩の一端っぽい」

アルはふーと息を吐く。

「……退屈だな」

「だね。カードならあるけど」

ロゼがカードを出してきた。

「……今カード始めたらもっと退屈した時にどうすんだよ」

エディはカードが弱いのでカードは避けようとする。



 「兄上」

遠くから見覚えがあるような無いような姿が走ってきた。ネイサンだった。その後ろから速足で騎士服の少女が速足でやってきた。

「お久しぶりです、アルマン殿下」

凛々しい少女はロクサーヌだった。ネイサンは涙を浮かべてアルの手を握っている。

「初めまして。ベルティエ公爵家が嫡子ロクサーヌと申します。以後御見知りおきを」

ロクサーヌはロゼとエディに挨拶する。二人とも少し緊張して立ち上がる。

「冒険者のロゼとエディです」

「初めまして」

二人は席をネイサンとロクサーヌに譲る。二人は木の裏側にお茶を持って周り、座り込み他の3人にみえないのを良い事に軽くいちゃついている。


 「ネイサンは大きくなったなぁ」

「兄上はたくましくなられました」

「ああ、冒険者として生活してたからな」

「なんで急に王子宮から出奔されたのですか?」

アルはそういうことになってるんだな、とロクサーヌに目をやるとロクサーヌは小さく頷いた。

「ま、十代故の悩み、だな」

アルはそういった。そしてロクサーヌに訊ねる。

「ネイサンとは?」

「婚約しましたよ。もう王宮には帰らせません」

ロクサーヌはある程度の事を父親から聞いていたしフロランから自分といるとネイサンの状態が良くなると聞いたのでネイサンの事は自分が一生面倒を見る、と決めていた。
 フロランからネイサンはそのままじゃそこまで長生き出来ないとも言われた。ネイサンが長生き、というか普通の人として生きるには神殿に入るかロクサーヌが側にいるか、しか方法はないと。ロクサーヌは基本的に聖属性の持ち主で身分がもう少し低ければ神殿も召し上げて聖女に、と望んだだろう。ただ公爵家の嫡子なのと現神官長がベルティエ公爵の従弟なので政治的判断も絡みロクサーヌの召し上げはなくなったのだ。
 聖属性は他の適性属性とは別枠で存在し、大抵は水属性持ちが多いらしいがロクサーヌは公爵家の『火』の属性を持っている事も聖女となるのに向かないと判断された一因でもある。
 最初はアルの婚約者候補にあげっれたが幼いロクサーヌは自分が家を継ぐので王太子妃候補は辞めて欲しいと父親に訴えた。娘に甘い父親は王宮に娘を入れるのは、と陛下に断った。もちろん、政治的判断もあった。ベルティエ公爵の娘が二代続けての王太子妃というのには高位貴族たちが反発した。そもそも現在の正妃が箸にも棒にもかからない事も大きな原因であった。

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