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第一章
公爵となりたて伯爵 1
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その日の夜のうちにウージェーヌはベルティエ公爵邸にいた。目の前にはベルティエ公爵がいた。二人は強い蒸留酒を口にしている。机の上には濃厚なショコラが置いてある。
「甘いものも嗜まれるんですね」
「ウジェ、腹を割って話さないか」
二人は幼いころからの学友であった。ベルティエ公爵家の嫡男であるジェラールは幼いころから陛下の側近候補として陛下とは幼馴染という仲であった。マドレーヌの父親とは初等部で初めて顔を合わせて妙に気があったので時々お互いの自宅や領地を訪いあったりする仲であった。のだが、抜きんでた美貌の少年に育ったウージェーヌにジェラールの妹、現正妃のアグネスが恋をした。このころには既に陛下の婚約者でアグネスがウージェーヌの尻を追っかけまわしているのはすぐに噂になった。この時、王太子だった陛下は呆れていたが一応アグネスの側に立ってウージェーヌを処罰した。それはウージェーヌの停学でウージェーヌはこれ幸いと領地に引きこもり、学園を中退した。途中まで『私を取り合わないで』と浸っていたアグネスだったが、ウージェーヌに逢えない事で暫く荒れていた。この時期の友人というのが見事にうさん臭く、当時の公爵、ジェラールとアグネスの父親は四苦八苦したようだった。
「ジェリ、理由は?」
「これから俺は外に漏らしてはいけない話をするからだ。……ウジェが俺の知ってるウジェであるなら……」
「ジェリ、……俺が公爵家と王家に思うところがある、と判っての言葉か?」
あまり知られていない事なのだが、ジェラールとアグネスの母親は違う。一つ違いという事にになっているが正確には半年違いで生まれている。ジェラールは前陛下の従妹と公爵の間の子供でアグネスは胡散臭い準男爵の令嬢との子供だった。前公爵が愛人に抱えた女は黒魔術の家系の女性で前公爵はその愛人を領地に隠して子供を産ませた。
子供は3歳まで愛人の元で育て、それからは正妻と自分の子供として貴族録に登録したのだ。愛人と正妃アグネスは切れることなく交流をもっている。
ウジェはこの話を知っている数少ない人間であった。これはジェリに聞いたわけではなく、ウジェの友達の事を前子爵が調べてる時分に魔獣退治で雇った冒険者が準男爵令嬢、愛人を世話していた一家の次男だったらしい。どうにか裏を取り、ウジェの父親はウジェに公爵一家を信用し過ぎるな、とこの話を教えてくれた。
ただしジェラールは妹と近づくとやばいという話をウージェーヌにするためにすべて話した上で、魅了除けの魔石を渡してくれたのだ。
「妹は黒魔術を少し使えるみたいで……魅了の魔法とかも偶に、な」
と言いながらだった。
「で、何の話かな?」
「ウジェは第一王子を知ってるよな?」
「何度か辺境に関しての、というかうちの領地に関しての授業をしたな」
「そうか。王太子の印も知ってる?」
「そりゃ、知ってる。授業でやったし」
ジェラールは深くため息をついた。
「……第一王子なんだが、5年前から臥せってる、という事になってるんだが、ありゃ嘘だ」
ウージェーヌはにやっと笑う。
「出奔されたか?」
「ならまだいい。ある日突然、寝室から消えた。王太子に内定した夜だった」
「ふむ。それこそ出奔じゃないのか?」
「印を持ったまま、寝間着のまま、はだしでか?」
「そんなものは自分が出る場所に隠せばいい、ジェリは真面目に生きてるからそういう悪さはした事なさそうだな。何度か陛下を下町にお連れしたことがあるよ。あの時は誰も側近を連れず、騎士を二人、付き添いできてもらったけどな」
ジェラールは驚いた顔になる。
「視察ではなく、街を見てもらった」
ウージェーヌは真面目な顔で答えた。
「……それは置いておく。正直にいうと第一王子の寝室にかすかな魔術痕があってな。移動の魔術だ。が、国の保管庫にあるどの魔術陣を使ったか判らなかったんだ。使用痕はどの羊皮紙にも無くてな」
「……羊皮紙焼いたか?しかし魔法陣の紙焼くと酷い匂いがするからな」
「判らないけど……、今回、マドレーヌ嬢につかわれた魔術陣がその時のものじゃないか、
と」
「甘いものも嗜まれるんですね」
「ウジェ、腹を割って話さないか」
二人は幼いころからの学友であった。ベルティエ公爵家の嫡男であるジェラールは幼いころから陛下の側近候補として陛下とは幼馴染という仲であった。マドレーヌの父親とは初等部で初めて顔を合わせて妙に気があったので時々お互いの自宅や領地を訪いあったりする仲であった。のだが、抜きんでた美貌の少年に育ったウージェーヌにジェラールの妹、現正妃のアグネスが恋をした。このころには既に陛下の婚約者でアグネスがウージェーヌの尻を追っかけまわしているのはすぐに噂になった。この時、王太子だった陛下は呆れていたが一応アグネスの側に立ってウージェーヌを処罰した。それはウージェーヌの停学でウージェーヌはこれ幸いと領地に引きこもり、学園を中退した。途中まで『私を取り合わないで』と浸っていたアグネスだったが、ウージェーヌに逢えない事で暫く荒れていた。この時期の友人というのが見事にうさん臭く、当時の公爵、ジェラールとアグネスの父親は四苦八苦したようだった。
「ジェリ、理由は?」
「これから俺は外に漏らしてはいけない話をするからだ。……ウジェが俺の知ってるウジェであるなら……」
「ジェリ、……俺が公爵家と王家に思うところがある、と判っての言葉か?」
あまり知られていない事なのだが、ジェラールとアグネスの母親は違う。一つ違いという事にになっているが正確には半年違いで生まれている。ジェラールは前陛下の従妹と公爵の間の子供でアグネスは胡散臭い準男爵の令嬢との子供だった。前公爵が愛人に抱えた女は黒魔術の家系の女性で前公爵はその愛人を領地に隠して子供を産ませた。
子供は3歳まで愛人の元で育て、それからは正妻と自分の子供として貴族録に登録したのだ。愛人と正妃アグネスは切れることなく交流をもっている。
ウジェはこの話を知っている数少ない人間であった。これはジェリに聞いたわけではなく、ウジェの友達の事を前子爵が調べてる時分に魔獣退治で雇った冒険者が準男爵令嬢、愛人を世話していた一家の次男だったらしい。どうにか裏を取り、ウジェの父親はウジェに公爵一家を信用し過ぎるな、とこの話を教えてくれた。
ただしジェラールは妹と近づくとやばいという話をウージェーヌにするためにすべて話した上で、魅了除けの魔石を渡してくれたのだ。
「妹は黒魔術を少し使えるみたいで……魅了の魔法とかも偶に、な」
と言いながらだった。
「で、何の話かな?」
「ウジェは第一王子を知ってるよな?」
「何度か辺境に関しての、というかうちの領地に関しての授業をしたな」
「そうか。王太子の印も知ってる?」
「そりゃ、知ってる。授業でやったし」
ジェラールは深くため息をついた。
「……第一王子なんだが、5年前から臥せってる、という事になってるんだが、ありゃ嘘だ」
ウージェーヌはにやっと笑う。
「出奔されたか?」
「ならまだいい。ある日突然、寝室から消えた。王太子に内定した夜だった」
「ふむ。それこそ出奔じゃないのか?」
「印を持ったまま、寝間着のまま、はだしでか?」
「そんなものは自分が出る場所に隠せばいい、ジェリは真面目に生きてるからそういう悪さはした事なさそうだな。何度か陛下を下町にお連れしたことがあるよ。あの時は誰も側近を連れず、騎士を二人、付き添いできてもらったけどな」
ジェラールは驚いた顔になる。
「視察ではなく、街を見てもらった」
ウージェーヌは真面目な顔で答えた。
「……それは置いておく。正直にいうと第一王子の寝室にかすかな魔術痕があってな。移動の魔術だ。が、国の保管庫にあるどの魔術陣を使ったか判らなかったんだ。使用痕はどの羊皮紙にも無くてな」
「……羊皮紙焼いたか?しかし魔法陣の紙焼くと酷い匂いがするからな」
「判らないけど……、今回、マドレーヌ嬢につかわれた魔術陣がその時のものじゃないか、
と」
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