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陛下との面談

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 三日間、メリルは王子宮に兄ジョージといた。長兄とメリルのすぐ上の兄はランスロットを手伝っていた。

「ジョージ兄さんは手伝わないの?」

「手伝ってるよ。……モードレッド殿下にかかってる呪いを解くために」

「呪い?」

メリルが訊ねる。

「どうも、元はあんな気が弱い人じゃなかったんだって。だから呪い、というか向精神系の魔術が掛かってるんじゃないかって。……今宮廷魔術師のおっさんが逃げてるからなぁ」

「宮廷魔術師っていたんだ?」

「マーリン師匠だよ」

「……森の奥にはいらっしゃらないの?」

メリルは声を顰める。ベル伯爵領内の森は魔術の森と呼ばれていて、ずっとずっと昔からその中心地には魔術師が住んでいる。その関係でメリル達というはベル伯爵家は全ての直系が森の魔術師から魔術の手ほどきを受けている。

「うちの森の話は」

そういってジョージは口元で指でばってんを作った。

「そうね……」

「ただな、あの腹黒王子、ランスロット殿下は知ってるかもしれない。ランスロット殿下とは協力関係だけど信用はしすぎないように」

ジョージの忠告にメリルは頷いた。

「とりあえずアーサー殿下と正妃の追い落とし、が目的での協力なんで師匠の件は別。正妃の不貞って形にしたいんだけどそれをするとモードレッド王子に影響があるからどうするかなぁ」




 「アーサーと婚約解消ということでいいのだな?」

陛下は鷹揚にいう。アーサーとエリザ、そしてベル伯爵とメリルに陛下は対峙している。

「はい。お受けします」

メリルはしっかりした口調で答える。今日はローウエストのくすんだローズ色の軽めのドレスであった。朝、15分で用意することになり、ジョージが自宅に転移し、ドレスと侍女を連れて戻ってきた結果だった。入浴はメリル自身で済ませていたのでメリル付きのメイドは超特急でメリルを仕上げる。

「お嬢様は今日は清楚な感じで」

メリルの黒くて豊かな髪は緩く1本の三つ編みにし片側に流す。アクセサリーは付けずにメイクもごく薄く仕上げる。用意ができるとジョージが父親であるベル伯爵を連れて来た。

「メリル、今日も愛らしいな」

臆面もなく父親はメリルを褒める。父親は上機嫌だった。上機嫌な父親に連れられ王の私的な応接室に連れて行かれ、陛下からの確認が始まったのだ。

「父上、俺がこの女を婚約破棄したのです」

「それでよいのかの確認だよ。ベル伯爵からの書類が出ているのでな」

「だから俺がこの女を捨てるんですよ。エリザに対しての態度が悪いから」

陛下は椅子の手すりをこつこちと叩いた。

「ならば証拠を」

「エリザがそう言ってるのです」

陛下は鼻で笑う。小さな声で言った言葉は一番近いベル伯爵にしか聞こえていない。

「母が母なら子も子だって事だな」

陛下はアーサー王子にはっきりと言う。

「お前がその女性を信用するのは勝手だが他人を断罪するならばな証拠が必要だ。そうでなければ我々為政者は気に食わないというだけで人を『国外追放』できるからな。なぁ、アーサー、お前はいつそんな権利を持った?我が臣民を我が頭越しに国から追放できる権力があると思ったんだ?」

アーサーが今まで聞いた事のない、『陛下』の声であった。
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