【完結】聞いてないって、そりゃそうです。私も今、聞いたのですから。

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エリザ、ご乱心?

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 「陛下、悪役令嬢は国外追放されるかそのまま娼館に売られるのが筋なんです」

エリザが唐突に声を出した。ここ最近のロマンス小説の流行は『悪役令嬢』『下位貴族令嬢が王族と結ばれる』ものであった。

「私はアーサーと結ばれたんですから私が邪魔だと思ってる女は悪役令嬢って事でしょう?」

陛下はじろりとアーサーを見、メリルとベル伯爵はエリザが何を言っているのか分からなかった。もちろん陛下もわかってはいない。

「アーサー。彼女の言いたい事の翻訳を」

しかしアーサーもエリザの言葉に困惑していた。

「……女性の騎士か文官か呼んでもらえぬか?そのお嬢さんは『丁寧に』扱ってくれ。しばらく

エリザ嬢は美形の騎士に『付き添われ』この部屋を出て行った。

「な、父上……もしかして」

ここでアーサーが爆弾を落とした。

「あのけだものの代わりにエリザを寵愛なさるつもりですか!」

陛下の眼が冷たく光る。ベル伯爵もメリルもその纏う空気を感じ取り硬直しているがアーサー王子は平気である。メリルも伯爵もこの鈍さはある意味凄いと思った。

「あのけだものと離れてくだされば父上は完璧ですからね。……私はエリザをあきら」

アーサーは最後まで言えなかった。陛下の右腕が伸びその拳は思い切りアーサーの頬に当たる。アーサーはかけていた二人掛けのソファの上に伸びてしまっている。

「あの正妃の息子だな」

陛下の顎が動かされ近衛の団長が一礼をすると近衛の騎士でアーサーが運ばれていった。

「治癒はほどほどでいいぞ」

その背中に陛下の声が飛んだ。侍従に合図をすると侍従長がランスロットが部屋に入って来た。

「さて、この場で申しつける。王太子に内定した。これからも身を慎み成すべきことを成せ」

「はっ」

ランスロットが膝をついて陛下の言葉を受ける。ベル伯爵もメリルも気まずかった。こんな場面に居合わせる予定はなかった。

「成すべきことを成せば、結婚の許可を頂けますね?」

「成せばな」

どうしたことかランスロットがメリルに膝まづく。

「メリル嬢、私に求婚の機会を頂けますか?」

ベル伯爵が驚いて思わず大声を出す。

「聞いてないんだが!?」


メリルは思った。聞いてないって、そりゃそうです。私も今、聞いたのですから。メリルがおずおずと訊ねる。

「陛下、発言しても?」

「もちろん」

陛下はにやにやとしている。

「あの、今、なにが起こってるのですか?家族喧嘩を見てたと思ったのですが……」

ランスロットはほれぼれとするような笑みを浮かべた。

「今は私があなたとあなたの父上に求婚の許可を申し出たところです」

「……」

メリルの返事を待たずにランスロットがベル伯爵にせまる。

「私では求婚者としての資格はたりませんか?」

「……まずは陛下のおっしゃる通り成すべきことを」

ランスロットは頷いた。

「わかってます。……ベル伯爵にも協力を求めておりますしね」

メリルは巻き込まれないように大人しくしていたがランスロットはにんまりと笑った・

「メリル嬢にも協力してほしい事があります」


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