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第二部~群雄割拠~
『青春アタック』脚本⑳越鳥南枝
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廃校になった学校の保健室
花原を診察するさくら
「服を脱ぎなさい・・・全身見事に打撲しているわよ・・・」
花原「全然へいちゃらですよ・・・」
アライ「それは、アドレナリンが出ているからだ。時間が経つと痛みが来るぜ?」
さくら「そこのタヌキ、オキシドールをとってくれる?消毒するわ・・・」
アライ「タヌキじゃないが、まあ、いいだろう・・・」
花原「明日の試合はできるんですよね?ドクターストップはいやですよ・・・」
さくら「この治療の痛みに耐えられれば。」
花原「・・・タヌキ。そこの将棋盤を持ってきなさい。」
アライ「タヌキじゃねえっていってんだろ、殺すぞ。」
花原「私はタヌキと将棋を打っているので、とっとと済ませてください。」
さくら「たくましいこと・・・」
駒を並べるアライ「悪いが、オレはこの手のゲームは強いぜ?」
花原「・・・御託はいいからかかってきなさい・・・」
保健室から花原の悲鳴が聞こえる。
号泣する花原「ぎゃああああお母さ~ん・・・!」
びっくりして振り返る廊下のクマガイ。
・
夜。
高級そうなバンガローやコテージが並ぶエリアに松明を持って案内するクマガイ。
鍵を渡す理央「どれでも好きなのを使ってください。」
海野「いいんですか・・・?」
不動産屋のように扇子を開く理央「バブルの時にお金持ちがここに別荘を持ってたんですけど、みんな引き上げちゃったんですよ。誰かが使わないと傷んじゃいますし・・・」
山村「ビバークを覚悟していたが・・・ありがたい・・・」
ちおり「わーい!一人ずつ殺されていく系の山荘だ~!」
華白崎「・・・縁起でもない・・・」
花原「あんたのせいで本当に一人消えるところだったんだからね・・・」
ちおり「だいじょぶだった?」
花原「・・・年末の全身火だるまに比べれば大したことはないわ・・・」
ちおり「かっけー!!」
クマガイ(・・・・・・。)
理央「それと天然温泉はそこの河原を降りればすぐ・・・」
花原「・・・え?今なんと?」
理央「温泉・・・」
花原「温泉があるの!?」
理央「はい・・・」
花原「いくぞちおり!!」
ちおり「はい!!もうくさいとは言わせません!」
河原にかけていく二人。
海野「今度は二人が行方不明になることってないよね・・・?」
理央「間違えて川に入って流されない限りは・・・」
・
廃校の旧職員室。暖炉に火が灯っている。
ソファにはさくらと理央と海野が明日の試合の相談をしている。
理央「試合のほうは明日の午前九時で申請しています・・・」
酒を飲むさくら「何から何まですまないねえ理央ちゃん・・・」
理央「いえ・・・」
海野「監督とはどういったご関係なんですか?」
さくら「元チームメイトの娘なのよ・・・
栃木の三畳中って昔は強豪校だったんだから。知らないでしょ?」
海野「はい・・・」
職員室にはホコリをかぶったバレー部の写真がかざってある。
「昭和40年三畳中学女子バレー部全国大会優勝」
理央「もうずいぶん昔に村ごと廃校になっちゃいましたからね・・・」
海野「有葉部長は、なんでまだ山に残ってるんですか?」
理央「大切な・・・故郷ですから。
先生、最後にここでバレーをする機会をくださって感謝しています。」
・
コテージに戻る海野とさくら
さくら「近い将来、少子化でこういうことが各地で起きるんだろうね・・・」
海野「とても親切ないいかたですね・・・」
さくら「それは一面的だね。イチゴ谷のダムの開発工事は何年も前から始まってる。」
海野「・・・え?」
さくら「理央ちゃんは、付近の野生動物と手を組み、政府関係者や工事請負会社を何度も撃退してるんだ・・・あいつらにとっちゃショベルカーを横転させるなんてわけはない・・・
美帆子ちゃんだってわかるでしょう?
生まれ育った故郷を破壊される悲しみと・・・怒りは。」
海野「・・・・・はい。」
さくら「相手が動物だからって侮らないこと。胸を借りるつもりでいたほうがいいわ。」
・
露天風呂でくつろぐちおりと花原
花原「いやーごくらくねー」
ちおり「ねー」
花原「みんなせっかちよね・・・温泉は長湯が基本よねー」
あひるのおもちゃで遊ぶちおり「ねー」
ちおり「花原さん、くまってバレーボールできるの?」
花原「・・・難しいと思うよ。あの手の動物の肩の関節ってそこまで自由度が高くないし。」
ちおり「いのししは?」
花原「まず、後ろ足で立ち上がれないぞ・・・」
ちおり「・・・試合になるの?」
花原「多分、人間軍の圧勝ね。あいつらの脳みそをすべてたしても、この私には及ばないわ。」
その時、クマガイが茂みから現れる。
クマガイ「ふ~汗かいちゃったよ~」
花原「!」
クマガイの背中を流してやる花原「お~ふろできゅっきゅっきゅ・・・」
ちおり「とうきょうしんぶん♪」
クマガイ「ありがと~」
花原(この時間まで練習を・・・?くまめ。あなどれん・・・)
・
白亜高校女子バレー部の寝室。
海野やブーちゃんが寝ている。
夜中に起き上がる乙奈。体操着に着替える。
寝ぼけながら海野「・・・?あれ~乙奈さん、どうしたの・・・?」
乙奈「え~と、そのお手洗いですわ・・・」
海野「そう・・・」再び寝てしまう。
乙奈「ほっ・・・」
廃校の合宿場に入っていく乙奈。
「・・・レシーブの練習をしないと・・・明日の試合でもわたくしが穴に・・・」
すると、すでにちおりと花原が練習をしている。
乙奈「・・・あっちおりちゃん・・・」
ちおり「乙奈さんもやる?」
乙奈「なんで・・・」
ちおり「くまはすごいからね!秘密特訓!」
花原「そのとおり。二人でトスとスパイクの練習をしてたのよ。」
乙奈「花原さんまで・・・」
花原「しかし、乙奈さんもみずくさいわねー」
乙奈「・・・いやなんです。もう・・・チームの穴になって、みなさんの足を引っ張るのは・・・」
花原「乙奈さん・・・」
花原を指差すちおり「・・・この前の試合の穴はこの人だと思うよ。」
花原「悪かったな!」
花原「・・・さあて、じゃあ乙奈さんも混ぜて、深夜の秘密特訓を始めますか!」
ちおり「おー!」
・
翌朝。
校舎をかける有葉「しっあい~しっあい~♫」
クマガイ「うっれしいな~♪」
あくびするアライ「おい、いくらなんでも朝早すぎだよ。誰も起きてねーよ」
オジカ「ふん、元気なやつだ・・・」
シマダ「私たちの初めての試合ですからね!」
合宿場の扉を開ける理央「・・・およ?」
コートにはすでに、ちおり、花原、乙奈がいる。
クマガイ「こんな朝早くから練習を・・・!」
理央「ただの芸人集団と考えるのはよしたほうがいいね。」
何かに気づく理央「・・・?」
理央「・・・立ったまま寝ている!?」
アライ「・・・プロの芸人集団なんじゃねーか?」
・
ツバメが森の木々の間を飛行する。
双眼鏡を下ろす長髪の中年男性。
「・・・ツバメの飛行が低いな・・・」
万石正一・・・
財団法人自然環境センター主幹研究員・・・さすらいの動物博士である・・・!
万石「・・・一雨来るか?」
万石のそばで揺れる茂み
万石「・・・ふむ?」
険しい道中でボロボロの大此木と病田
木の棒を杖にする病田「はあはあ・・・ほ・・・本当にこんなところに学校があるんですかあ・・・?」
大此木「うるせー!あんたが俺を呼んだんだろ!」
病田「・・・だ・・・だって・・・こんなところ一人じゃ怖い・・・」
病田の背後にヘビが降りてくる。
病田の首筋に移ってくるヘビ。
病田「・・・!きゃあああヘビ~!!」
病田に近づく万石「さわぐこたーない。ホンドヒバカリだ。」
ヘビを難なくとってやる万石「大人しく、人にもなれるヘビだ。」
病田「ど・・・毒は??」
万石「ナミヘビ科は毒をもっとらん。安心せい。」
病田「あ・・・ありがとうございます・・・」
ホンドヒバカリのしっぽを握って振り回して遊ぶ大此木「へびーへびー」
大此木に鉄拳を制裁する万石「ヘビをいじめんなー!」
ふっとぶ大此木「いぶしっ!」
大此木「な・・・なにすんじゃー!」
ヘビを顔に近づけて慰める万石「お~お~かわいそうに・・・」
その時、万石のこめかみにヘビが噛み付く。
地べたを転がる万石「奇想天外・・・!」
大此木「ぎゃはははは!!」
病田「・・・。」
・
三畳農業高校の校舎
二人を案内してやる万石「ついたぞ。ここが旧三畳中学の校舎だ・・・」
万石「おや・・・?珍しく合宿場の方が騒がしいな・・・」
病田「・・・みんなだ・・・」
大此木「おっさんもついてくんのか?」
万石「雨宿り。」
合宿場の扉を開ける病田。
コートで、白亜高校と三畳高校が向かい合っている。
海野「いよいよ、バトルロイヤル大会、第一試合よ・・・
動物とは言え、今回の相手はれっきとしたバレー部。油断しないようにしよう!」
一同「おー!」
大此木「れっきとしてないバレー部がお邪魔するよ・・・」
海野「大此木くん・・・!きてくれたんだ!!」
大此木「あんたらの顧問にせがまれてな・・・いったいここはどこなんだ?」
病田「道中でステゴサウルスに会いました・・・」
さくら「それは盛ってるでしょ。」
病田「え・・・?」
大此木「あれはブロントサウルスだったのかもな。」
相手コートのベンチに座っている中年男性に気づく花原。
花原「ね・・・ねえ・・・」
海野「ん?」
花原「・・・あの人って、向こうの顧問かな・・・」
海野「さ・・・さあ・・・」
理央「万石先生だ!」
アライ「万さん!」
万石「よう」
――彼は森で名が知れていた・・・ちなみに決して顧問ではない。
花原「・・・謎ね・・・」
マネージャーの山村に耳打ちする大此木「あいつはただの雨宿りだぞ・・・」
腕時計を見るさくら「さあ、そろそろ始めっかい!」
審判の笛がなる。
「ピー・・・・・・」
ホイッスルではなく主審のトビの鳴き声「・・・・イヨロロロ」
海野「あ、あの・・・主審が猛禽類なんですけど、これは公式試合になるんでしょうか・・・」
理央「あのトビはJVAの審判資格を持っているので大丈夫です!」
四羽のカルガモが旗を持って歩いてくる。
ラインズマン、カモタ四兄弟。
「カモだー!!」
動物解説万石正一
「バレーを解説しろー!」
トビ「昨日の協議の結果、ルールはノーハンデ戦。2セット先取のラリーポイント制で行きます。
ただし、動物愛護の精神で試合を行うように。」
大此木「うそだろ・・・相手はほとんど動物じゃねーか・・・」
病田「・・・イソップ童話・・・?」
サーブ権を決めるじゃんけんをするちおりとクマガイ。
クマガイ「うわあああ負けた!」
――クマガイはパーしか出せなかった・・・!
理央「だからジャンケンはやめなっていったじゃん!」
クマガイ「今日こそ勝てる気がして・・・!情けないっす・・・!!」
呆れるアライ「バッカじゃねーの・・・」
花原を診察するさくら
「服を脱ぎなさい・・・全身見事に打撲しているわよ・・・」
花原「全然へいちゃらですよ・・・」
アライ「それは、アドレナリンが出ているからだ。時間が経つと痛みが来るぜ?」
さくら「そこのタヌキ、オキシドールをとってくれる?消毒するわ・・・」
アライ「タヌキじゃないが、まあ、いいだろう・・・」
花原「明日の試合はできるんですよね?ドクターストップはいやですよ・・・」
さくら「この治療の痛みに耐えられれば。」
花原「・・・タヌキ。そこの将棋盤を持ってきなさい。」
アライ「タヌキじゃねえっていってんだろ、殺すぞ。」
花原「私はタヌキと将棋を打っているので、とっとと済ませてください。」
さくら「たくましいこと・・・」
駒を並べるアライ「悪いが、オレはこの手のゲームは強いぜ?」
花原「・・・御託はいいからかかってきなさい・・・」
保健室から花原の悲鳴が聞こえる。
号泣する花原「ぎゃああああお母さ~ん・・・!」
びっくりして振り返る廊下のクマガイ。
・
夜。
高級そうなバンガローやコテージが並ぶエリアに松明を持って案内するクマガイ。
鍵を渡す理央「どれでも好きなのを使ってください。」
海野「いいんですか・・・?」
不動産屋のように扇子を開く理央「バブルの時にお金持ちがここに別荘を持ってたんですけど、みんな引き上げちゃったんですよ。誰かが使わないと傷んじゃいますし・・・」
山村「ビバークを覚悟していたが・・・ありがたい・・・」
ちおり「わーい!一人ずつ殺されていく系の山荘だ~!」
華白崎「・・・縁起でもない・・・」
花原「あんたのせいで本当に一人消えるところだったんだからね・・・」
ちおり「だいじょぶだった?」
花原「・・・年末の全身火だるまに比べれば大したことはないわ・・・」
ちおり「かっけー!!」
クマガイ(・・・・・・。)
理央「それと天然温泉はそこの河原を降りればすぐ・・・」
花原「・・・え?今なんと?」
理央「温泉・・・」
花原「温泉があるの!?」
理央「はい・・・」
花原「いくぞちおり!!」
ちおり「はい!!もうくさいとは言わせません!」
河原にかけていく二人。
海野「今度は二人が行方不明になることってないよね・・・?」
理央「間違えて川に入って流されない限りは・・・」
・
廃校の旧職員室。暖炉に火が灯っている。
ソファにはさくらと理央と海野が明日の試合の相談をしている。
理央「試合のほうは明日の午前九時で申請しています・・・」
酒を飲むさくら「何から何まですまないねえ理央ちゃん・・・」
理央「いえ・・・」
海野「監督とはどういったご関係なんですか?」
さくら「元チームメイトの娘なのよ・・・
栃木の三畳中って昔は強豪校だったんだから。知らないでしょ?」
海野「はい・・・」
職員室にはホコリをかぶったバレー部の写真がかざってある。
「昭和40年三畳中学女子バレー部全国大会優勝」
理央「もうずいぶん昔に村ごと廃校になっちゃいましたからね・・・」
海野「有葉部長は、なんでまだ山に残ってるんですか?」
理央「大切な・・・故郷ですから。
先生、最後にここでバレーをする機会をくださって感謝しています。」
・
コテージに戻る海野とさくら
さくら「近い将来、少子化でこういうことが各地で起きるんだろうね・・・」
海野「とても親切ないいかたですね・・・」
さくら「それは一面的だね。イチゴ谷のダムの開発工事は何年も前から始まってる。」
海野「・・・え?」
さくら「理央ちゃんは、付近の野生動物と手を組み、政府関係者や工事請負会社を何度も撃退してるんだ・・・あいつらにとっちゃショベルカーを横転させるなんてわけはない・・・
美帆子ちゃんだってわかるでしょう?
生まれ育った故郷を破壊される悲しみと・・・怒りは。」
海野「・・・・・はい。」
さくら「相手が動物だからって侮らないこと。胸を借りるつもりでいたほうがいいわ。」
・
露天風呂でくつろぐちおりと花原
花原「いやーごくらくねー」
ちおり「ねー」
花原「みんなせっかちよね・・・温泉は長湯が基本よねー」
あひるのおもちゃで遊ぶちおり「ねー」
ちおり「花原さん、くまってバレーボールできるの?」
花原「・・・難しいと思うよ。あの手の動物の肩の関節ってそこまで自由度が高くないし。」
ちおり「いのししは?」
花原「まず、後ろ足で立ち上がれないぞ・・・」
ちおり「・・・試合になるの?」
花原「多分、人間軍の圧勝ね。あいつらの脳みそをすべてたしても、この私には及ばないわ。」
その時、クマガイが茂みから現れる。
クマガイ「ふ~汗かいちゃったよ~」
花原「!」
クマガイの背中を流してやる花原「お~ふろできゅっきゅっきゅ・・・」
ちおり「とうきょうしんぶん♪」
クマガイ「ありがと~」
花原(この時間まで練習を・・・?くまめ。あなどれん・・・)
・
白亜高校女子バレー部の寝室。
海野やブーちゃんが寝ている。
夜中に起き上がる乙奈。体操着に着替える。
寝ぼけながら海野「・・・?あれ~乙奈さん、どうしたの・・・?」
乙奈「え~と、そのお手洗いですわ・・・」
海野「そう・・・」再び寝てしまう。
乙奈「ほっ・・・」
廃校の合宿場に入っていく乙奈。
「・・・レシーブの練習をしないと・・・明日の試合でもわたくしが穴に・・・」
すると、すでにちおりと花原が練習をしている。
乙奈「・・・あっちおりちゃん・・・」
ちおり「乙奈さんもやる?」
乙奈「なんで・・・」
ちおり「くまはすごいからね!秘密特訓!」
花原「そのとおり。二人でトスとスパイクの練習をしてたのよ。」
乙奈「花原さんまで・・・」
花原「しかし、乙奈さんもみずくさいわねー」
乙奈「・・・いやなんです。もう・・・チームの穴になって、みなさんの足を引っ張るのは・・・」
花原「乙奈さん・・・」
花原を指差すちおり「・・・この前の試合の穴はこの人だと思うよ。」
花原「悪かったな!」
花原「・・・さあて、じゃあ乙奈さんも混ぜて、深夜の秘密特訓を始めますか!」
ちおり「おー!」
・
翌朝。
校舎をかける有葉「しっあい~しっあい~♫」
クマガイ「うっれしいな~♪」
あくびするアライ「おい、いくらなんでも朝早すぎだよ。誰も起きてねーよ」
オジカ「ふん、元気なやつだ・・・」
シマダ「私たちの初めての試合ですからね!」
合宿場の扉を開ける理央「・・・およ?」
コートにはすでに、ちおり、花原、乙奈がいる。
クマガイ「こんな朝早くから練習を・・・!」
理央「ただの芸人集団と考えるのはよしたほうがいいね。」
何かに気づく理央「・・・?」
理央「・・・立ったまま寝ている!?」
アライ「・・・プロの芸人集団なんじゃねーか?」
・
ツバメが森の木々の間を飛行する。
双眼鏡を下ろす長髪の中年男性。
「・・・ツバメの飛行が低いな・・・」
万石正一・・・
財団法人自然環境センター主幹研究員・・・さすらいの動物博士である・・・!
万石「・・・一雨来るか?」
万石のそばで揺れる茂み
万石「・・・ふむ?」
険しい道中でボロボロの大此木と病田
木の棒を杖にする病田「はあはあ・・・ほ・・・本当にこんなところに学校があるんですかあ・・・?」
大此木「うるせー!あんたが俺を呼んだんだろ!」
病田「・・・だ・・・だって・・・こんなところ一人じゃ怖い・・・」
病田の背後にヘビが降りてくる。
病田の首筋に移ってくるヘビ。
病田「・・・!きゃあああヘビ~!!」
病田に近づく万石「さわぐこたーない。ホンドヒバカリだ。」
ヘビを難なくとってやる万石「大人しく、人にもなれるヘビだ。」
病田「ど・・・毒は??」
万石「ナミヘビ科は毒をもっとらん。安心せい。」
病田「あ・・・ありがとうございます・・・」
ホンドヒバカリのしっぽを握って振り回して遊ぶ大此木「へびーへびー」
大此木に鉄拳を制裁する万石「ヘビをいじめんなー!」
ふっとぶ大此木「いぶしっ!」
大此木「な・・・なにすんじゃー!」
ヘビを顔に近づけて慰める万石「お~お~かわいそうに・・・」
その時、万石のこめかみにヘビが噛み付く。
地べたを転がる万石「奇想天外・・・!」
大此木「ぎゃはははは!!」
病田「・・・。」
・
三畳農業高校の校舎
二人を案内してやる万石「ついたぞ。ここが旧三畳中学の校舎だ・・・」
万石「おや・・・?珍しく合宿場の方が騒がしいな・・・」
病田「・・・みんなだ・・・」
大此木「おっさんもついてくんのか?」
万石「雨宿り。」
合宿場の扉を開ける病田。
コートで、白亜高校と三畳高校が向かい合っている。
海野「いよいよ、バトルロイヤル大会、第一試合よ・・・
動物とは言え、今回の相手はれっきとしたバレー部。油断しないようにしよう!」
一同「おー!」
大此木「れっきとしてないバレー部がお邪魔するよ・・・」
海野「大此木くん・・・!きてくれたんだ!!」
大此木「あんたらの顧問にせがまれてな・・・いったいここはどこなんだ?」
病田「道中でステゴサウルスに会いました・・・」
さくら「それは盛ってるでしょ。」
病田「え・・・?」
大此木「あれはブロントサウルスだったのかもな。」
相手コートのベンチに座っている中年男性に気づく花原。
花原「ね・・・ねえ・・・」
海野「ん?」
花原「・・・あの人って、向こうの顧問かな・・・」
海野「さ・・・さあ・・・」
理央「万石先生だ!」
アライ「万さん!」
万石「よう」
――彼は森で名が知れていた・・・ちなみに決して顧問ではない。
花原「・・・謎ね・・・」
マネージャーの山村に耳打ちする大此木「あいつはただの雨宿りだぞ・・・」
腕時計を見るさくら「さあ、そろそろ始めっかい!」
審判の笛がなる。
「ピー・・・・・・」
ホイッスルではなく主審のトビの鳴き声「・・・・イヨロロロ」
海野「あ、あの・・・主審が猛禽類なんですけど、これは公式試合になるんでしょうか・・・」
理央「あのトビはJVAの審判資格を持っているので大丈夫です!」
四羽のカルガモが旗を持って歩いてくる。
ラインズマン、カモタ四兄弟。
「カモだー!!」
動物解説万石正一
「バレーを解説しろー!」
トビ「昨日の協議の結果、ルールはノーハンデ戦。2セット先取のラリーポイント制で行きます。
ただし、動物愛護の精神で試合を行うように。」
大此木「うそだろ・・・相手はほとんど動物じゃねーか・・・」
病田「・・・イソップ童話・・・?」
サーブ権を決めるじゃんけんをするちおりとクマガイ。
クマガイ「うわあああ負けた!」
――クマガイはパーしか出せなかった・・・!
理央「だからジャンケンはやめなっていったじゃん!」
クマガイ「今日こそ勝てる気がして・・・!情けないっす・・・!!」
呆れるアライ「バッカじゃねーの・・・」
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