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三章 ペイン
五
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何はともあれ、割り込み仕事は終わった。全階層を覗き見できる水晶板を覗き込めば、ダンジョンの主人の実験も佳境らしく、冒険者が可哀想なことになっていた。可哀想だなぁと思うなどした。いや、本当に可哀想なのはその後始末をする自分では……と思い直したノーイはすんとした顔になる。
「しっかし、人間の体って不便……」
「どうかしたんですか? 神魔法要ります?」
「オレのこと消そうとしないで!? や、何かたくさん動くと身体中がぎしぎし? 錆びてる? みたいになって……しばらくしたら治るから放置してるけど……」
「筋肉痛では?」
「きんにくつう?」
またしても、口を開けたノーイのそこに放り込まれたのは金色の飴。ぱくん、と口を閉じてもごもごと舌を動かしたノーイの表情がわかりやすく明るくなる。果物の甘味とは比較にならない、どろりとした暴力的な甘さ。教会で密かに作られている、水飴と砂糖を煮詰めて固めた聖飴だ(なお、別に聖属性が付与されている訳ではない。単純に、大量に仕入れることが難しい材料とひたすら面倒臭い製法による稀少価値を一言で表してこう名付けられただけである)。
「あっまい……すき……うま……」
「肉体の内部が急激な負荷などを受けて損傷し、それが治る過程において痛みを発するとここの主人が」
「お前オレよりも主を師と仰いでいるのでは?」
「……ふふ」
「え、なに、なんでわらった? そのえがおこわいな?」
「いえ、嫉妬してもらえたのが嬉しくて……」
「していませんが?」
思わず敬語である。欠片も嫉妬していない、というのにシェムハザは頬を赤く染めて照れ臭そうに頭を掻いていた。
「まぁ、理由としては治癒の代償でしょうか」
「うぇえ……じゃあ治るまでこのままってこと?」
「一応、治癒速度を上げる方法はありますが」
「どんなの?」
「それがマッサージ……」
「がるるるる!」
「あぁまた手負いの獣に!」
今度はきちんと獣の姿に化けての威嚇であった。真っ黒な牙を剥き出しにした真っ黒な狼は、たしたしと前足で地団駄を踏む。その瞳だけは爛々と、緑色に輝いていた。
「しっかし、人間の体って不便……」
「どうかしたんですか? 神魔法要ります?」
「オレのこと消そうとしないで!? や、何かたくさん動くと身体中がぎしぎし? 錆びてる? みたいになって……しばらくしたら治るから放置してるけど……」
「筋肉痛では?」
「きんにくつう?」
またしても、口を開けたノーイのそこに放り込まれたのは金色の飴。ぱくん、と口を閉じてもごもごと舌を動かしたノーイの表情がわかりやすく明るくなる。果物の甘味とは比較にならない、どろりとした暴力的な甘さ。教会で密かに作られている、水飴と砂糖を煮詰めて固めた聖飴だ(なお、別に聖属性が付与されている訳ではない。単純に、大量に仕入れることが難しい材料とひたすら面倒臭い製法による稀少価値を一言で表してこう名付けられただけである)。
「あっまい……すき……うま……」
「肉体の内部が急激な負荷などを受けて損傷し、それが治る過程において痛みを発するとここの主人が」
「お前オレよりも主を師と仰いでいるのでは?」
「……ふふ」
「え、なに、なんでわらった? そのえがおこわいな?」
「いえ、嫉妬してもらえたのが嬉しくて……」
「していませんが?」
思わず敬語である。欠片も嫉妬していない、というのにシェムハザは頬を赤く染めて照れ臭そうに頭を掻いていた。
「まぁ、理由としては治癒の代償でしょうか」
「うぇえ……じゃあ治るまでこのままってこと?」
「一応、治癒速度を上げる方法はありますが」
「どんなの?」
「それがマッサージ……」
「がるるるる!」
「あぁまた手負いの獣に!」
今度はきちんと獣の姿に化けての威嚇であった。真っ黒な牙を剥き出しにした真っ黒な狼は、たしたしと前足で地団駄を踏む。その瞳だけは爛々と、緑色に輝いていた。
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