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三章 ペイン
三
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ノーイは自称あまりかしこくないので、一つに注意を奪われるともう一つが抜け落ちる。現役魔王軍だった頃は、生き延びることに必死だったためそれはもう有能であったが――今はそこまで気を張る必要もないため。
「しまったお前が来てたんだった」
「おかえりなさい」
「おかえりなさぁい」
「おかえりなのじゃ」
「いや一人増えてる!?」
しんどいし重いからと全身鎧を脱ぎ捨て、石化の瞳を研究室に持ち帰ったノーイを出迎えたのは三人。大神官(の仕事は最近どうなのと聞いたらにこ……とあの感情の読みにくい微笑みで返された)のシェムハザと伝言係を務めていたサキュバスには覚えがあるのだが、もう一人は珍客である。
「こやつ中々見所があるな! 魔王様が御存命であれば、有能な魔道師として推挙してやったものを……」
「絶対にありえないしやめてあげて」
「おや、私を気遣って……?」
「話がややこしくなるから止めろって話!」
「ノーイ様ぁ、もう持ち場に戻ってもいいですかぁ?」
「いいよありがとな他のヤツにもよろしく言っといて」
「はぁい」
ぱたぱたと飛び去るサキュバスを見送れば、そこにはシェムハザと――上半身は裸、下半身が巨大な蜘蛛の姿をした美少女。彼女の名はペイン、元魔王軍四天王、つまりはノーイの元同僚である。
「しかし、沼のもやるではないか!」
「何を?」
「次代の魔王様を守り育てているなど、我等にも声をかけてくれれば」
「いやそういうつもりは全然ですね」
「我等も次代の魔王様を慈しみ育てたいのじゃ! まぁ、方向性は先代様とは異なるようじゃが……」
「ほら見て、元魔王軍の皆、お前みたいに話聞かないんだよ」
「ペインちゃんは大魔女に焼き殺されたとばかり思っていたのでびっくりしましたね」
「もうそこまで仲良く!? 話聞かないヤツ同士って仲良くなるのも早いの!?」
「我等は我等であるからな! その時の核が焼かれようと我等が一匹でも残っておればこの通りよ!」
仲良くなった魔道師にならば秘密を話しても良かろうとばかりにぺらぺらと喋り続けるペイン。にこにこ笑って話を聞いているシェムハザが、いつ大神官として再び牙を剥くかと怯えているのはノーイ一人である。
「しかし前の我等の死因まで知っておるとは、ますます大神官みたいじゃな! あの場には勇者どもと我等しかいなかったはずじゃが……」
「あーっとペインは何で今ここにいるんだ!? お前はほらあの、前に死んでから出てきてなかったじゃん!?」
「うん? あぁ、このダンジョンの噂を聞いてな。次代の魔王様がいらっしゃるのではないかと思って来たのじゃ! そうしたら案の定、先代様の右腕たるお前が」
「まだオレに仇をなすその称号……!!」
頭を抱えてうずくまるノーイに、にこにこ笑っているシェムハザ。きらきらした目で次代の魔王への期待を語るペイン――ここには、他人の話をきちんと聞ける者はいないのであった。
「しまったお前が来てたんだった」
「おかえりなさい」
「おかえりなさぁい」
「おかえりなのじゃ」
「いや一人増えてる!?」
しんどいし重いからと全身鎧を脱ぎ捨て、石化の瞳を研究室に持ち帰ったノーイを出迎えたのは三人。大神官(の仕事は最近どうなのと聞いたらにこ……とあの感情の読みにくい微笑みで返された)のシェムハザと伝言係を務めていたサキュバスには覚えがあるのだが、もう一人は珍客である。
「こやつ中々見所があるな! 魔王様が御存命であれば、有能な魔道師として推挙してやったものを……」
「絶対にありえないしやめてあげて」
「おや、私を気遣って……?」
「話がややこしくなるから止めろって話!」
「ノーイ様ぁ、もう持ち場に戻ってもいいですかぁ?」
「いいよありがとな他のヤツにもよろしく言っといて」
「はぁい」
ぱたぱたと飛び去るサキュバスを見送れば、そこにはシェムハザと――上半身は裸、下半身が巨大な蜘蛛の姿をした美少女。彼女の名はペイン、元魔王軍四天王、つまりはノーイの元同僚である。
「しかし、沼のもやるではないか!」
「何を?」
「次代の魔王様を守り育てているなど、我等にも声をかけてくれれば」
「いやそういうつもりは全然ですね」
「我等も次代の魔王様を慈しみ育てたいのじゃ! まぁ、方向性は先代様とは異なるようじゃが……」
「ほら見て、元魔王軍の皆、お前みたいに話聞かないんだよ」
「ペインちゃんは大魔女に焼き殺されたとばかり思っていたのでびっくりしましたね」
「もうそこまで仲良く!? 話聞かないヤツ同士って仲良くなるのも早いの!?」
「我等は我等であるからな! その時の核が焼かれようと我等が一匹でも残っておればこの通りよ!」
仲良くなった魔道師にならば秘密を話しても良かろうとばかりにぺらぺらと喋り続けるペイン。にこにこ笑って話を聞いているシェムハザが、いつ大神官として再び牙を剥くかと怯えているのはノーイ一人である。
「しかし前の我等の死因まで知っておるとは、ますます大神官みたいじゃな! あの場には勇者どもと我等しかいなかったはずじゃが……」
「あーっとペインは何で今ここにいるんだ!? お前はほらあの、前に死んでから出てきてなかったじゃん!?」
「うん? あぁ、このダンジョンの噂を聞いてな。次代の魔王様がいらっしゃるのではないかと思って来たのじゃ! そうしたら案の定、先代様の右腕たるお前が」
「まだオレに仇をなすその称号……!!」
頭を抱えてうずくまるノーイに、にこにこ笑っているシェムハザ。きらきらした目で次代の魔王への期待を語るペイン――ここには、他人の話をきちんと聞ける者はいないのであった。
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