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三章 ペイン
一
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「何かこう……サキュバスとかインキュバスとかが人間をぐちゃどろにするみたいな感じにするつもりだろ!! エロトラップダンジョンでやってるみたいに!! エロトラップダンジョンでやってるみたいに!!」
「マッサージに対しての誤解が酷いですね!?」
全身鎧に加えて、八方を守るように積み重ねられた大盾。その中でふぅふぅ息を荒らげながら立て籠っているノーイに、思わず普段の穏和さをかなぐり捨てて叫んでしまったシェムハザであった。
事の起こりはいつものように、ダンジョンの主が研究で不在の間、ノーイとシェムハザが無駄話をしていた最中。ノーイは初級魔法で死にかけた冒険者を蘇生したり治療したりしている、という話からの派生。
人体を回復、治療できる魔法は限られている。ノーイがしているのは人間の仕組みを利用した治療であり、魔法による治療とは異なっている。人体を直接癒せる魔法は、聖魔法か神魔法しかない。その中でも、蘇生が可能なものは神魔法のみだ。
否、蘇生という言葉の定義を広めれば――魂魔法や死魔法も、蘇生が可能だとはいえるのだが。蘇生された本人の意思がどれだけ残っているかを蘇生の定義に組み込むなら、除外されて然るべきだろう。
「あのですね、マッサージというのは……」
「がるるるる……」
「うわぁ、手負いの獣みたいな威嚇……」
「オレはあんな風にはならないからな!!」
「いつになく大きい声……過去に何かあったんですか……?」
あったかどうかと問われたならば、あったとしか答えられないが、それはノーイにとって屈辱の記憶なので進んで開示することはない。まだ人間に変化できるようになって間もない頃、淫魔の王にからかわれて弄ばれた思い出は封印指定だ。
そんなことがあって、ノーイは特定の見た目を持つ淫魔たちと、体を揉まれる行為に対して強い警戒心を抱いている。特定の見た目を具体的にいうと、己よりも身長が高く、細身で、長い黒髪。残念ながらシェムハザは、その二つに合致していた。
「こんにちはぁ、あれ? ノーイ様はぁ?」
「あの中です」
「うわっ、何あれぇ?」
そんな膠着状態な二人の間に現れたのは、先刻話題に出たばかりのサキュバス。このダンジョンでは中層から高層にかけて存在し、冒険者たちを罠にかけたり食べたり(意味深)している。
彼女等はモンスターの中でも人間に近い容姿を持ち、また知能もそれなりに高いことからダンジョンの主人に重用されていた。例えば、伝言係だとか。
「ノーイ様ぁ、主様から伝言ですよぅ」
「何?」
「低層四番通路の罠が障害物のせいで起動できなくなってるから至急どうにかしろ、ですってぇ」
「……今行く」
「そのままの姿でぇ!?」
がしゃこん、がしゃこん、と音を立てながら進む大盾要塞もといノーイ。そこまで警戒しなくても、と思うシェムハザと口を半開きにしたままのサキュバスを置き去りにそれは、がしゃこん、がしゃこん、と降りていった。
「マッサージに対しての誤解が酷いですね!?」
全身鎧に加えて、八方を守るように積み重ねられた大盾。その中でふぅふぅ息を荒らげながら立て籠っているノーイに、思わず普段の穏和さをかなぐり捨てて叫んでしまったシェムハザであった。
事の起こりはいつものように、ダンジョンの主が研究で不在の間、ノーイとシェムハザが無駄話をしていた最中。ノーイは初級魔法で死にかけた冒険者を蘇生したり治療したりしている、という話からの派生。
人体を回復、治療できる魔法は限られている。ノーイがしているのは人間の仕組みを利用した治療であり、魔法による治療とは異なっている。人体を直接癒せる魔法は、聖魔法か神魔法しかない。その中でも、蘇生が可能なものは神魔法のみだ。
否、蘇生という言葉の定義を広めれば――魂魔法や死魔法も、蘇生が可能だとはいえるのだが。蘇生された本人の意思がどれだけ残っているかを蘇生の定義に組み込むなら、除外されて然るべきだろう。
「あのですね、マッサージというのは……」
「がるるるる……」
「うわぁ、手負いの獣みたいな威嚇……」
「オレはあんな風にはならないからな!!」
「いつになく大きい声……過去に何かあったんですか……?」
あったかどうかと問われたならば、あったとしか答えられないが、それはノーイにとって屈辱の記憶なので進んで開示することはない。まだ人間に変化できるようになって間もない頃、淫魔の王にからかわれて弄ばれた思い出は封印指定だ。
そんなことがあって、ノーイは特定の見た目を持つ淫魔たちと、体を揉まれる行為に対して強い警戒心を抱いている。特定の見た目を具体的にいうと、己よりも身長が高く、細身で、長い黒髪。残念ながらシェムハザは、その二つに合致していた。
「こんにちはぁ、あれ? ノーイ様はぁ?」
「あの中です」
「うわっ、何あれぇ?」
そんな膠着状態な二人の間に現れたのは、先刻話題に出たばかりのサキュバス。このダンジョンでは中層から高層にかけて存在し、冒険者たちを罠にかけたり食べたり(意味深)している。
彼女等はモンスターの中でも人間に近い容姿を持ち、また知能もそれなりに高いことからダンジョンの主人に重用されていた。例えば、伝言係だとか。
「ノーイ様ぁ、主様から伝言ですよぅ」
「何?」
「低層四番通路の罠が障害物のせいで起動できなくなってるから至急どうにかしろ、ですってぇ」
「……今行く」
「そのままの姿でぇ!?」
がしゃこん、がしゃこん、と音を立てながら進む大盾要塞もといノーイ。そこまで警戒しなくても、と思うシェムハザと口を半開きにしたままのサキュバスを置き去りにそれは、がしゃこん、がしゃこん、と降りていった。
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