ETDの雑用係

とりい とうか

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第一章 ヴォジャノーイ

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「お前を殺して俺も死ぬ!!」
「心中なんて流行らないぞ」
「働きたくない!! 非効率的が過ぎる!!」
「わかったからまずその剣を置け、いつの間にレアアイテムを回収したんだ」

 きっかけは、死体の片付けを煩わしく思ったノーイが上級死魔法を使ったこと。それは死体に魂を宿し直し、仮初めの生を与えて操る魔法であり、ノーイは動き出した死体にダンジョンから出ていくように指示を出していた。
 こうすれば、わざわざ重たい死体を担いで運ぶ労力も減る。そう思って機嫌よく過ごしていたノーイに訪れたのは、主人からの叱責。死魔法と主人の研究の相性は最悪で、故に横着をせず担いで運べと主人は言ったのだ。
 レアアイテムである水晶の剣の切っ先を主人に向け、ふぅふぅと荒い息を繰り返すノーイ。その目は血走っていて、口や鼻からは闇色の靄すら漏れている。主人は、その様子を見て流石にまずいと判断した。

「どの辺りが非効率的だと?」
「全部!!」
「全部じゃわからん、言葉にする努力を惜しむな」
「まず人間って殺すより生かした方が使い道あるからな!? お前のいう研究? だって別に殺す必要なんてないし!!」
「それは聞き捨てならないな、死という極限状態に至った人間からしか得られない実験結果があるんだ」
「そんなら殺さなくても臨死状態? にしたらいいだろ!!」
「臨死?」
「昔サキュバスとかインキュバスとかが言ってた!! 天国を見せてやるとか何とか!! そういうことだろ!?」
「何もそういうことではないが?」

 疲れさせ過ぎたのか狂気的な理論を振りかざすノーイに向かって、主人は心底不思議そうに首を傾げた。そもそも、サキュバスやインキュバスたちのいう天国を見せてやるとは、そういう意味ではない。
 が、主人はそこで一つの天啓を得た。あぁ、確かにそうだ。過ぎた快楽で腹上死する人間はいるし、快楽拷問で瀕死の状態になる人間もいる。或いはこの時、主人も研究に行き詰まって疲れていたのかも知れなかった。

「……いや、そういうことなのか?」
「だろぉ!?」
「ふむ、一考の余地はあるな。しばらく待て、その間は何もしなくていい」
「やったー!!」

 両手を高々と挙げて叫び、そのまま闇色の塊となって倒れ込んだノーイ。主人は、そんなノーイには目もくれずに、新たなダンジョンの構築に思考を振り分けた。
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