探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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5.安楽樹は渋々推理する

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「あの事件は……そこに書かれていた通りに行われた? いや、そんな馬鹿な話があるわけがない」

「いいや、その通りさ。さっき、君達が言っていた通り、ただ君達を殺すことだけが目的なら、別荘に置いてある食糧などもほどほどにして、わざと俺達を迎えにこなければ良かったはずなんだ。でも、実際に試してみたくなったのさ。娘の考えた物語が、どこまでの通用するものなのかを――」

 管理人は娘を亡くして、きっとどこかが壊れてしまったのであろう。彼がわざわざ手を下した理由。それが、娘の書いた物語がどこまで通用するのか試したかったなんて、普通の感覚では考えないことだから。

「それで、娘さんの考えた小説では、どんなラストを迎えるんです? 現実のほうが納得できるものになりました?」

 もはや、管理人は人としての何かが欠けてしまっている。そもそも、理由はどうであれ、人を殺すなんて常軌を逸脱している。気がつくと、安楽以外の人間は、自然と彼と距離を取っていた。顔馴染みだという店の店員や、レストランにいた客でさえ。安楽の問いに、管理人は小さく笑みを浮かべた。

「さぁな――少なくとも、君ほど変な探偵はいないと思うよ。素人の意見だけどね」

 管理人がそう言うと、制服姿の警察官が入ってくる。海外の警察というと、日本とは全く違うイメージが強いのだが、しかしギリシャの警察は比較的日本に近い制服だった。蘭達が一目で警察だと視認できるくらいには、日本の警察官とそっくりだった。中には武装兵のような格好をしている人も混じっているから、なんとも言えないのではあるが。

「やぁ、この度はとんでもないことに巻き込まれてしまったみたいだなぁ」

 おそらく、その警察官の中では位がもっとも高そうな男が、実にフレンドリーに管理人へと声をかける。現地の言葉だから、懸命に耳を傾けた。管理人は苦笑いを浮かべながら「巻き込まれた――というより、巻き込んだんだがな」と返す。頭の上に疑問符を浮かべた警察官に「まぁ、詳しいことは島に着いてから話すよ」と加えた。なんだか管理人が日本語以外を喋っていると変な感じだ。

 警察のお偉さんと管理人が外に出て行くと、若い警察官が現地の言葉で話しかけてきた。

「みなさんも例の孤島で過ごされたんですよね? その時のこと、詳しく教えていただけますか?」
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