探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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5.安楽樹は渋々推理する

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 島はもちろんのこと、例の別荘も管理人の持ち物である。ゆえに、事前になにかを仕掛けることなど容易だ。準備をする時間はたっぷり合ったことだろうし。

「当日、俺達を島へと送っていく役割を買って出て、島へと俺達を送り届けた。この時、俺が島に残ってくれ――なんて言い出したものだから驚いたんじゃないですか? なぜなら、あなたは最初からそのつもりだったのですから」

 3日後に迎えにくる。その言葉に安楽が噛み付いたのは記憶に新しい。あの時、安楽は何の気なしにミステリあるあるを回避しようとしただけだったのであろうが、管理人からすれば、まるでこれからの行動を見透かされているようで気味が悪かったことだろう。

「とにかく、俺達を置いて島を後にしたあなたは、ある程度島から離れると、島の北側へと舵を切った。そして、接岸。島の北側は危険だからと事前に俺達には忠告していたから、船の姿を見られる心配もない。こうして、改めて島に上陸したあなたは、島の北側から森を抜けて別荘のほうへとやってきた」

 嵐の孤島で起きる殺人事件。辺りは絶海であり、島の外に出ることはもちろん、島に上陸することもできない。俗にいうクローズドサークルというミステリにおける環境。まさか、犯人が名前も知らない管理人だったなんて、誰が思うだろう。いいや、少なくとも安楽はたどり着いたのだから、それなりの根拠はあるのだろうが。

「盗聴機で俺達の動きを把握していたあなたは、運良く神楽坂さんが1人になることを知った。そこであなたは、リネン室の勝手口から別荘の中に入り込み、リネン室に彼女を引き摺り込んで殺害したんだ。でも、盗聴している限りでは、どうやら彼女以外の人間はそれぞれ固まって動いているらしい。このままでは、誰も彼女を殺せなかったことになる。しかし、このタイミングを逃してしまえば、次のチャンスはいつになるのか分からない。いいや、そのチャンスが来るとも限らない。だからこそ、あの場でピアノ線を小道具にすることで、ありもしないトリックの存在を俺達に示そうとしたんだ」

 安楽はコーヒーを飲み干すと、カップをテーブルに置きつつ小さく溜め息を漏らす。これだけ延々と喋り続ければ喉も乾くことだろう。

「単純に彼女が悲鳴を上げたのは、リネン室に引き摺り込まれる時と、殺害された時だったということか――」

 おそらく、安楽に頼まれて、偽りの解決劇を演じることになった榎本が、納得するかのように何度か頷く。
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