巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

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すれ違う狂気

【すれ違う狂気】1

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【1】

 午前中の用事を済ませ、彼女は市役所へとやってきた。母子手帳はすでに交付されていたのだが、補助金関係のことで聞きたいことがあったのだ。

 彼女……堀口愛子は、待合室にて整理票に書かれた番号が電光掲示板に表示されるのを待ち続ける。

 夫の稼ぎがあるといっても、先のことや職場の子ども達のことを考えると仕事は辞められない。本当なら産休に入ってから市役所に来るのがベストなのだが、あまり身重になってからだと動けなくなるかもしれない。だから休んでも今のタイミングで市役所に来ておきたかったのだ。

 たまたま空いている時間帯に来たのか、市役所内は思ったよりも人が少ない。けれども、そのわりには電光掲示板に自分の番号が点灯しなかった。整理券と電光掲示板を睨めっこする愛子の脇を、数名の男女が通り過ぎる。

 スーツを身をまとった女性を先頭にして、その後ろに市役所の職員らしき男、そのさらに後ろに、これまたスーツを身にまとった男が続く。なぜだか、最後尾の男は上着を着ておらず、市役所の職員らしき男の両手を隠すかのように、スーツの上着がかぶせられていた。

 ふと、なんとなしに職員らしき男が首にぶら下げているネームプレートが目に入った。まだ若そうに見える職員の名前は中畑というらしい。ただなんとなく眺めていただけなので多分気のせいなのであろうが、その職員らしき男はいささか怯えているようにも見えた。

 彼を連れて颯爽と歩くスーツ姿の男女が、どこか高圧的な雰囲気を持っていたから、そう見えただけなのかもしれない。そんな少し奇妙な集団を見送ると同時に、ようやく自分の番号が呼ばれ、愛子は届け出の手続きを行った。

 思ったより手続きは早く終わり、その日の用件を全て済ませた愛子は、その足で近くのスーパーへと車を走らせた。せっかく休みをとったのだし、手続きも予想以上に早く終わってしまった。普段は簡単に作れるものしか作っていないから、たまには手間暇かけた夕食を作ってあげてもいいだろう。

 旦那の帰る時間は不規則だが、帰ってきたら好物がテーブルに並んでいるように、今日は主婦に徹しよう。旦那の喜ぶ顔が目に浮かぶ。子どもが産まれたら、また子ども中心の生活になるだろうから、今のうちに旦那のためにやれることはやってあげないと。

 買い物を終えると、日が沈む前に帰宅。愛子の自宅はマンションの一室で、今は旦那と二人暮らし。エントランスのポストを確認し、買い物袋とダイレクトメールらしき郵送物を持ってエレベーターへと乗り込んだ。自宅に帰るとダイニングテーブルに買い物袋と郵送物を置き、リコモンを片手にリビングのテレビを点けた。番組の内容はなんでも良い。静まり返った中で家事をするのも味気ないだけだ。
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