293 / 506
第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【出題編】
50
しおりを挟む
「さてぇ、ざっとではありますがぁ、これが事件概要となります。首を吊って死んだはずなのに、被害者の首元には何者かによって首を絞められた痕が残っていました。つまり、この事件は何者かが被害者を首吊り自殺に見せかけて殺害したということになりますねぇ」
この番組にてクイズにされてしまっている時点で、そこに犯人がいるのは確実だ。問題は誰が犯人なのか――ということ。死亡推定時刻などから、ある程度犯人が絞り込めるのではないかと思ったが、しかし死亡推定時刻はかなり長めに設定されてしまっている。果たして、これだけの情報で事件を紐解くことができるのか。少しばかり不安になってくる。なぜなら、残された情報は【乙の証言】だけなのだから。
「うーん、九十九さん。難しい顔をしていらっしゃいますねぇ。ご自身の選んだ情報が、それほど必要とする情報ではなかったのでしょうか」
いいや、事件の概要に関しては、その土台をしっかりと確認できた――という点が大きい。足場が不安定なままクイズに取り組むよりも、まずは基礎をしっかりと築いておくべき。そのような意味では、九十九が選んだ情報は実に有意義なものだと言える。
「いいや、これはこれでありだと思うぜ」
藤木が進行をぴたりと止めたことで、ようやく自分に向かって言葉をかけられていたことに気づいた九十九。話を振るのであれば、もう少し分かりやすい振りかたをしてくれればいいものを――。そんなことを考えつつ返した。まるでそれが義務的な手続きであるかのように「はい、それでは続いて伊良部さんが選んだ【乙の証言】になります」と切り替える藤木。
柚木が選んだ情報は、できることならば後回しにすべき証言シリーズの中でも、もっとも後回しにすべき【乙の証言】である。ただ、どの情報に効果的な情報が含まれているかは分からない。むしろ、逆に選択されにくい情報にこそ、重要な情報が隠されているのかもしれない。こればかりは、蓋を開けてみなければ分からないが、ごく普通に考えるのであれば、柚木の選択はミスチョイス。失敗だと思われる。
藤木の口を介して紡がれた【乙の証言】――元より酒好きで有名だった【乙】は、自分の時間が自由になる頃合いを見計らってタクシーを呼び、しばらく行った先にある居酒屋で飲んでいたらしい。そこは地酒を扱う店だったらしく、来店してから潰れる寸前までカウンターで飲んでいた【乙】の姿を、店主が覚えていたとの裏付けが取れているようだ。また、行きと帰りのタクシーの運転手がたまたま同じであり、【乙】を迎えに向かったのはもちろんのこと、しっかりとホテルへと送り届けたことも間違いないとのこと。
この番組にてクイズにされてしまっている時点で、そこに犯人がいるのは確実だ。問題は誰が犯人なのか――ということ。死亡推定時刻などから、ある程度犯人が絞り込めるのではないかと思ったが、しかし死亡推定時刻はかなり長めに設定されてしまっている。果たして、これだけの情報で事件を紐解くことができるのか。少しばかり不安になってくる。なぜなら、残された情報は【乙の証言】だけなのだから。
「うーん、九十九さん。難しい顔をしていらっしゃいますねぇ。ご自身の選んだ情報が、それほど必要とする情報ではなかったのでしょうか」
いいや、事件の概要に関しては、その土台をしっかりと確認できた――という点が大きい。足場が不安定なままクイズに取り組むよりも、まずは基礎をしっかりと築いておくべき。そのような意味では、九十九が選んだ情報は実に有意義なものだと言える。
「いいや、これはこれでありだと思うぜ」
藤木が進行をぴたりと止めたことで、ようやく自分に向かって言葉をかけられていたことに気づいた九十九。話を振るのであれば、もう少し分かりやすい振りかたをしてくれればいいものを――。そんなことを考えつつ返した。まるでそれが義務的な手続きであるかのように「はい、それでは続いて伊良部さんが選んだ【乙の証言】になります」と切り替える藤木。
柚木が選んだ情報は、できることならば後回しにすべき証言シリーズの中でも、もっとも後回しにすべき【乙の証言】である。ただ、どの情報に効果的な情報が含まれているかは分からない。むしろ、逆に選択されにくい情報にこそ、重要な情報が隠されているのかもしれない。こればかりは、蓋を開けてみなければ分からないが、ごく普通に考えるのであれば、柚木の選択はミスチョイス。失敗だと思われる。
藤木の口を介して紡がれた【乙の証言】――元より酒好きで有名だった【乙】は、自分の時間が自由になる頃合いを見計らってタクシーを呼び、しばらく行った先にある居酒屋で飲んでいたらしい。そこは地酒を扱う店だったらしく、来店してから潰れる寸前までカウンターで飲んでいた【乙】の姿を、店主が覚えていたとの裏付けが取れているようだ。また、行きと帰りのタクシーの運転手がたまたま同じであり、【乙】を迎えに向かったのはもちろんのこと、しっかりとホテルへと送り届けたことも間違いないとのこと。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
180
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる